第39話 憂国志士団襲撃1 強奪
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それに気が付いたのは誰だったのか、大陸樹幹街道を進むガードナー私設狩猟団と彼らの護衛する樹林都市所有の物資輸送車が連邦首都と教国へと至る分岐点に差し掛かろうとした時、突然、彼等のはるか前方の車両群が街道脇から現れたSF、DSFの混成した一団に進路を塞がれ街道は酷い渋滞となった。
十機からなるそのSFとDSFの集団に銃口を突きつけられ、その先頭に立つSF、ネミディア連邦軍前世代正式採用機“ELEMENT”から、街道に押し留められた車両の群れに、外部スピーカーを通して物資の徴発が高圧的な口調で宣言された。彼らの機体後方には大型のトレーラーがあり、後部コンテナから顔を隠した兵隊が何人も飛び出していた。
『我等は憂国志士団!! ひとえに祖国ネミディアの現状を憂うものである。我等の憂国活動の為、これより物資の徴発を行う!! 敵対的行動は貴様等自身の首を絞めるものと心得よ!!』
リーダーらしき者の宣言の後、SF一機に対しDSF三機を一組として三手に分散した憂国志士団はそれぞれに、強制的徴発を開始した。
渋滞の後方、ガードナー私設狩猟団SF部隊は渋滞が発生するやいなや、物資搬輸送車の前方に三機のSFを展開させた。
何を言っているかまでは聞こえなかったが、エリステラは自機に抱えさせたエリステラ機専用長距離狙撃銃“サンダーボルト”のスコープカメラ越しにそれを見ていた。
「困りましたね。お爺様は言ってましたけれど、まさか本当にこんなことが起こるなんて」
テスタメントのコクピット内で、エリステラがあまり困っていない様子でのんびりこぼすと、彼女の右斜め前に立つSFに搭乗するレナから少女に通信が入った。
『エリスどうするの? ていうか、どうなってるの?』
「どうやら、この任務の主目標が現れたようです。SFとDSFの混成部隊がこの渋滞の前方から順に物資の強奪を働いているものと思われます。レナ、ジェスタさん、速やかに戦闘準備をお願いします」
隊長の指示を受け、レナとジェスタは腰の脇と後ろの接続端子に懸架していた。武装をSFのマニュピレータで保持させる。
『お嬢、サンダーボルトで撃ったらSFはともかく、DSFの連中は死んじゃうわよ? いつもみたいに、フォモール相手じゃないのよ』
ジェスタは自身のSFに何時もの突撃銃を右手に、片刃の高周波振動騎剣を左手に保持、軽く動きを確認すると、エリステラに忠告した。
「わかっています、ジェスタさん。先程、サンダーボルトのスコープカメラを使う前に、わたし達の周囲の車両の皆様に撃つためではありませんと、そうお断りしましたでしょう。今、この銃に弾倉は装填していませんよ」
『まあ、初めてをあんなので済ませる必要はないわ。お嬢も、レナもね。もちろん、アナタ達の生命を優先で、危なくなったら、躊躇はしないのよ?』
『ん、なるべくならコクピットは狙わないよ。あたしも今日は射撃モードが選べる突撃銃にしとく。聞いてたベル兄、準備お願い』
『あいよ! さっさと来い、レナ。ウェポンラックの五番な』
ベルティンの乗るSF搬送車の荷台の回転式懸架整備台脇のウェポンラックから一丁の突撃銃の銃把が飛び出している。
レナ機が手にした銃を交換した配置に戻った。それを見送りエリステラはサンダーボルトに弾倉を装填し構え直した。
「やっぱり撃つことにします。ちょっと、あの人達の行動は目に余りますから」
少女は言い終えると同時に、自機の左脇に抱えたその銃の、二つ折りにされていてもなお長大な展開時全長約12mの銃身を展開させる。
折り畳まれていた銃身が中央部から前方へ180°回転し延伸、前部銃身の接続部が後退し固定され、折り畳み時は上に向いていた前部銃身下側から杭状の二脚銃架が自動展開し、地面に固定された。
彼女の見ていたスコープカメラの捉えた映像には、車両から引きずり出された親を庇った子供がチンピラに撃たれる姿が映っていた。
「馬鹿な的ですね? フォモールの方がまだ避けますよ?」
照準したリーダー機らしきSFを、エリステラは射撃した。
マズルブレーキがV字の炎を吹き、音速を超過した弾丸がエレメントを目指して飛んだ。
着弾結果を確認せずエリステラは自機にサンダーボルトのコッキングレバーを操作させ、次弾を装填し続けざまに射撃。
狙撃対象を替えつつ、エリステラはサンダーボルトの弾倉が空になるまでそれを三度繰り返した。
彼方で頭部と腹部に超音速の弾丸を受け止めたSFが三機、着弾の衝撃に吹き飛ばされ倒れている。
DSFも何体か、吹き飛ばされたSFの下敷きになっている。
残るSF一機がDSFを連れ、ガードナーのSF部隊を目指し、群がって来る。
前方の渋滞中の車両の護衛SF達にも憂国志士団とやらの部隊に立ち向かう者がおり、乱戦の様相を呈している。
『ハア、……何、アイツらお嬢を怒らせる様なことしたの? レナ、迎え撃つわよ。準備良いかしら?』
ガードナーSF部隊の前衛に立つジェスタはコクピットの中に溜め息をこぼし、隣に立つレナに声を掛けた。
『いつでもダイジョブよ、ジェス姉!!』
レナは自機の右手に高周波振動騎剣を、左手に突撃銃を装備し、騎剣を振り上げジェスタに返した。
「わたし、怒ってるんです! 二人とも、いきますよ!」
サンダーボルトの弾倉を交換したエリステラは銃身を折り畳むとランドローラーを展開し、前衛二人を追い越してテスタメントを走らせる。
ジェスタとレナもランドローラーを展開するとエリステラを追い掛け走った。
『ちょっと、お嬢!? ポジションは守りなさいな』
『エリス、おちつきなよ』
ジェスタとレナは口々にエリステラに声を掛け彼女の機体を追い越すと、元のポジションに戻した。
ガードナー私設狩猟団SF部隊の面々は、前方の乱戦に飛び込んでゆく。
エリステラのみ乱戦の現場の手前で機体を停止、サンダーボルトの銃身を再度展開し仲間の二人に指示を送った。
「あの奥のトレーラーを撃っておきます。レナ、ジェスタさん、わたしまで彼らを通さない様、カバーをお願いします。一発撃ったら合流するので」
『あいあい、先いくね?』
『お嬢、落ち着いて撃ちなさいな』
その場にエリステラを残し、突っ込んだレナとジェスタは戦闘を開始した。
狩猟団のSFのを追い越してサンダーボルトの銃口から撃ち出された弾丸が逃げ出そうとしていた憂国志士団のトレーラーの後部タイヤを撃ち抜いた。
 




