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第37話 難民キャンプのSF技師4

6/25改稿

「ちょっと待って、ドクさん」


 ジョンは片手で静かにドクを制し、視線を移すと共にもう片手で傭兵の少年を指し示し、ドクに問い掛けた。


「名前知らないけど、この彼が居る所で話して良い内容なの?」


 ドクはジョンには誘導されるまま少年に顔を向け、まだ其処に少年が居た事に初めて気が付いた様な顔をした。


「っ、そうだな。ミック、悪いがお前を巻き込む訳にゃあいかん。済まんが席を外してくれ。聞かれるだけでもマズい話をこれからコイツにするんでな」


「わかったよ、ドク。おい、怪我させる様な真似はすんなよ?」


 ドクからミックと呼ばれた少年傭兵は、ジョンとドクの顔を見回して一人頷くと、そうジョンに釘を差し、ガレージの外に歩いて行った。

 ミックが外に出るまで見送ると、ドクはジョンに向き直り、改めて話し始めた。


「ドクってのは通り名だ。

 本名はオルソン=エルヴィスという。

 もう坊主にゃあ、予想は付いていたんだろうがな。お前の探していたSF技師、その張本人さ。

 奴から聞いているか知らんが二十年前、ダスティンと俺は軍のSF技師をしていた。師匠が亡くなったって知らせを受けるまでな」


 ジョンは頷くとドクに返した。


「ダスティン親方から聞きました。何でも、SF技師の間に伝わる与太話にオルソンさんが囚われたとか言ってましたが」


 ドク、オルソンは少年の言葉に顔を歪める。


「与太話たあ、ひでえなダスティンの野郎。

 ……師匠が亡くなった後、俺とダスティン、二人の弟子の内、俺の方が先に師匠の家に立ち寄ってな。そこで見つけちまったのさ。師匠にしてみれば俺でもダスティンでもどっちでも良かったみてえだが、弟子の俺等二人なら解る、そんな隠し方で仕舞われていた一冊の手帳をな」


「手帳、ですか?」


「そうだ、永続保存処理のされた革手帳だ。其処に書かれていた師匠の遺言に従って、俺は教国に居を移した」


 ドクは遠い眼をして自身の記憶を思い返している様にジョンには見えていた。


「移り住んで始めの数年は、教国内での地盤造りに終始してな。俺に出来るのは整備だけだが、師匠に教えられた技術のお陰で神殿騎士団にも、教団内にもそれなりに知り合いが増えていった。時間が出来りゃあ、ダーナ大神殿にも何度となく足を運んでな。怪しまれない様に少しずつ大神殿の調査を進めたのさ」


「アンディさんはドクさんが大神殿を掘らせて貰おうとして断られた挙げ句、神敵指定されたって言っていたけど」


 先程、昼時に傭兵の男から聞いた話をジョンはドクに話す。


「アイツにそんな話していたか? 憶えはないぞ……。いや、俺がオルソンだってのは伝えているから、話していてもおかしくはない……か? まあ、話しを続けるぞ。確かに大神殿敷地内の掘削調査は許して貰えなかった。だが、何故か神殿内の調査自体は許されていたんだ。その時点では、俺は教団に神敵指定なんてされちゃあいなかったよ」


「じゃあ、何故?」


 ジョンは聞いていた話と原因が別にあると本人に言われ、ドクに言葉を促し、ドクは頷くと口を開く。


「大神殿の調査を許された俺は、師匠の手帳に書かれていた項目を一つ一つを試していった。

 始めの内は、当たり前だが、どれだけ調査してもとんと結果は出なかった。それが五、六年前の事さ、この難民キャンプの原因となったフォモールの侵攻が開始した前後の事だ。

 大神殿のある場所に地下へ通じる扉が表れたのさ。

 その日も俺は、何時もの様に空き時間を見繕い、大神殿の調査を始めたんだが、俺にはそれが最初は扉には見えなかったよ。そこにそれが表れた事は、大神殿に数年間も通い詰めていたから俺にも直ぐに解ったがね。それに対して色々と試してな。結果、師匠の手帳にあった項目の一つ目は、その扉を開く為のものだと解ったんだ」


「良く憶えてるね? あと、なんか冒険物のお話みたいだ」


 話を聞いていた少年は失礼な感想を漏らし、ドクは気の抜けた声で続ける。


「いいから聞けよ。……音もなく開いたその扉の先に、きっと数㎞はあったと思うが長い階段が伸びていた。その長い下り階段を降りていき、その先に見たこともない大空洞に辿り着いた。俺が足を踏み入れた瞬間に灯った明らかに自然光でない灯りに照らされ、もう一つの秘された神殿が地底湖に浮かんでいた。あれは驚いた、デカかったよ、地上の大神殿をそのままスケールアップして水に浮かべたような建物でな。

 教国と同じで、神殿の周囲は居住区の様になっていて、水路が張り巡らされ、何時でも移り住めそうだった。上の街にある第二街壁はなかったが。

 自動で動く様々な乗り物が用意されていてな、師匠の手帳に書かれていた項目の殆どはその乗り物を操作するための機械の使い方だった。結局、俺は秘神殿奥の玄室には入れなかったが、師匠は遺言でその玄室の奥にあるモノの破壊を望んでいた。だが、俺はそこで神殿騎士団に捕まっちまってな。その時の持ち物は没収された上、そして教団からは見事に神敵と指定されたのさ」


「ドクさんは何故この難民キャンプに逃げられたの? 無理だよね普通はさ?」


 ジョンは彼の話しの不信な点をドクに問い掛けた。ドクはガレージの一方に視線を送り答える。


「あそこの“お節介野郎(ブズィバディ)”さ、神殿騎士団に捕まって、大神殿かどっかの牢屋に入れられていた俺は、どういう訳か都市外に移送される事になってな。しかし、都市外を護送車に乗せられての移動中に何かに襲われ、そこで俺はそいつに救われたんだ」


 ジョンは何か引っ掛かるものを感じながら、そういう事もあるかと納得する。ドクは少年の様子に構わず言葉を続ける。


「坊主の機体を完全修復する代わりの探し物は、地下の秘神殿の玄室に眠るソレだ。出来るなら破壊を含めてな」


「話を聞いていた限りだと、SF関係無いんじゃない?」


 ジョンの疑問にドクは首を横に振り、少年の疑問を否定した。


「玄室の扉を開く為には、SFが要るんだ。それも通常の機体じゃなく、アーリータイプの、その元となったSFがな。

 秘神殿にはSFが余裕を持って行動できるスペースがあってな、玄室の扉は分厚い隔壁で封印されていた。それを開く為の認証はお前のSF、セイヴァーとかいう機体の隠蔽化装置(ブラックボックス)が反応するはずだ。

 あの地下の大空洞には、天井に幾つかの穴が開いていてな、SF用の昇降機(リフト)らしき機械が天井の穴と秘神殿の間に浮かぶ地底湖に繋がっていた。この地上から大空洞に入ることの出来るだろう入り口の隠されている大体の場所の検討は付いているから、後で教えよう」

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