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第35話 難民キャンプのSF技師2

遅れましたが更新しました。

編集ミスして30話、31話が同じ内容となっていたので一話分減っています。

勝手ながら次回から隔日更新にさせて頂きます。

次回更新月曜日20時30分頃更新予定です。

「アンディさんて、知ってたの? ドクさんの事」


 ジョンは難民キャンプの中央広場兼市場に置かれた粗末なベンチに腰掛けている。

 傍の屋台で買ったクラブハウスサンドにかぶりつき、口の中の物を飲み込んでから、隣りに座る傭兵の男に話しかけた。

 アンディはジョンがサンドイッチを買った屋台の近くに着ていたワゴンで買ったフィッシュ&チップスを摘まんでいる。


「……不味(まず)、こりゃ失敗したな。お前と同じサンドイッチにしときゃ良かったぜ。あ、ドクの事な。知ってたぜ、俺がお前に付いて来たのも、あのおっさんが教国の連中に捕まらない様にする為だ」


「……あむ、なら、先に僕に教えてくれても、良かったんじゃない?」


 ベチャベチャの白身魚のフライを摘まんで持ち上げ、悲しげな顔をしているアンディに、自分のサンドイッチを食べながらジョンは問う。

 油塗れの指を振り、アンディはジョンに向き直った。


「まあ、知り合ったばかりだったしな。ここに来てどうすんのか見ていたんだわ。神殿騎士団(連中)はドクを神敵とか呼んでるが、実際の所、あのおっさんはなんにもしちゃいねえ。まあ、調べたい事があるから大神殿を掘らせろとか頼み込んだらしいがよ。勿論、そんな許可は降りなかったみたいだが。そのくせドクは、神敵とかにされている。こんな事実があっちゃ、大神殿(アソコ)にゃなんか有るって言ってる様なもんだと思わんか? お前も」


 アンディは銀色の携帯用小型水筒(スキットル)を胸元から取り出し、蓋を開けると中の液体を喉に流し込んだ。

 強いアルコールの匂いが漂い、ジョンは駄目な大人を見るジト目でアンディを見詰め、彼を(たしな)めた。


「……アンディさん、僕はこれから教国まで乗せて貰わなくちゃなんだけど?」


「そっちには、急いで戻らんでも大丈夫だろ、それより、そろそろドクのガレージに戻るぞ。ジョン、お前のセイヴァー、あのおっさんに何か細工されてるかも知れん」


「ちょっ、それ大変じゃんか!? ガレージまで直ぐ戻るよ!!」


 アンディののほほんとした物言いに、少年は慌てて広場を駆けて行き、ほろ酔いの傭兵の男はジョンの後をゆっくり追い掛けて行く。

 サンドイッチを咥えたまま、広場を突っ切って走る少年の姿に、道の端に座り込む老若男女の複数の視線が向けられていた。

 難民キャンプの中央広場から大通りを駆け抜けて、ジョンはガレージまで走った。

 そのしばらく後、少年を追いアンディのブレイザーが大通りを進み、ジョンに追い抜くと少年の前に機体の手を降ろした。


「乗って行くかい、少年?」


「もちろん!」


 外部スピーカーから響くアンディの声に叫び返し、ジョンは伸ばされたブレイザーの腕を駆け上がり、機体の肩に飛び乗った。





 何処とも知れぬ室内、そこに設えられた執務机に座る青年が机越しに立つ女に問い掛ける。


07(ゼロセブン)の再調整は終了したか?」


「はい、07(あの娘)の調整は滞りなく」


「そうか、では08(ゼロエイト)について、だが。トゥアハ・ディ・ダナーンが奴の管理域である以上、今すぐ手を出す訳にはいかん」


「はい、あの方への接触は難しいですわ。通常、あの場に籠もりきりで、表には姿を顕されませんから」


 女の言葉に青年はただ頷く。


「我には“眼”が在る、故に奴を見失う事はまず無い。しばらくは、このまま泳がす良いな?」


「承りましたわ。我が君(ミロード)


 女は堂に入ったカーテシーをしてみせ、そこへ少女が室内へヅカヅカと踏み込んで来た。


「何故、(わたくし)が、あの子の元に行ってはならぬのですか!? 説明を求めます!」


 目の前の女から、室内に踏み込んだ少女No.07(ジェーン・ドゥ)へと鷹揚に視線を移し、少女へ諭す様に声を掛けた。


「騒々しいぞ、07。彼の地には手出し無用。我の“眼”の前に見通せぬものなど在らぬ。今は静観あるのみ。手出し出来る頃合いを待つのだ。解ったか?」


「ぅぅぅぅ、失礼しますわっ!!」


 入って来た勢いをそのまま、ジェーンは青年の前を退いて部屋から退出した。

 青年は女に鋭い視線を送り、口を開いた。


07(あの娘)は、本当に滞りなく再調整出来ているのだろうな?」


「……御前に虚偽は申しませんわ。確かに再調整は行いました。07の08への執着心を見誤っていた様です。しかし、 あれ以上の調整は……」


 苦い物を噛んだ様な表情で女は青年に答える。


「言わずとも良い。今すぐ壊す訳にもいかぬ。我が指示に従う限りは捨て置け」


 女は済まなそうに頭を下げ、改めて青年にカーテシーを捧げると青年の執務室から退出して行った。


「手出し無用だ。彼の地に眠るモノを不用意に刺激する事もあるまい」


 青年は室内に一人呟くと忽然と室内から消失し、時を同じくして07と呼ばれる少女と、彼女の専用SFが格納庫から姿を消していた。

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