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第34話 難民キャンプのSF技師1

“まだまだ”


“我配下、先駆”


“おうさままだ”


“我、不出”


“きえない?”


“我、不滅”


“おうさまけさない?”


“けさないおうさま?”


“王、浄化”


“おうさまおそうじ”


“おそうじおうさま”


“我、奮起”


“でばん?”


“我、出陣”





 一夜明けて朝、コリブ湖のせいか靄に煙る難民キャンプのバラックの建ち並ぶ集落端、その一角にジョンとアンディはやって来ている。

 この集落で唯一のSF整備場がある為だった。

 彼らはトゥアハ・ディ・ダナーン主教国に入り直し、任務の完了報告をする前に、ジョンはセイヴァーの損傷した胸部装甲の修繕、アンディの方は昨夜使った無反動砲(リコイルレスキャノン)の返却の為に、この看板も無い、廃材らしき材料で組まれた入り口をパネルカーテンで閉じた巨大なガレージへと。

 SFの外部スピーカーを使い、アンディがその建物に話しかけた。


『ドク、昨夜借りた武器を返しに来たぜ! あと、客を一人連れて来た!』


 アンディの声が掛かってから数分後、ガリガリに痩せた体型でドレッドヘアの日に焼けた黒い肌をした五、六〇代の男性が一人、ガレージの奥から出て来て、外に並んだ二体のSFに叫んだ。


「うるせえぞ、ガキ共! 普通に声掛けやがれ」


 ジョンとアンディはその場でそれぞれの乗機に片膝を突いた駐機姿勢を取らせて、頭部ユニットを前方に倒しバックパックを下方にスライド、コクピットハッチを開放し二人は地面に降り立ち男性の前に姿を表して見せる。

 アンディはブレイザーのバックパックに砲身を折り畳んで懸架している砲尾に回転式弾倉(シリンダー)の付いた無反動砲(リコイルレスキャノン)を指差し、男に親しそうに話し掛ける。


「よお、ドク。あの得物(アイツ)を返しに来たぜ。それからこの坊主がジョンだ。連れて来た客だな」


 アンディに指差指されて男性に紹介され、ジョンは名乗った。


「初めまして、ジョン=ドゥといいます。えっとあなたは?」


「躾のなっている坊主だな。俺の事はドクと呼べ、そこのお節介野郎(ブズィバディ)みてえにな。で、アンディ、どうだった回転式弾倉型(リボルバー)無反動砲リコイルレスキャノンの使い勝手はよ?」


 アンディは笑ってドクに答える。


「この威力の砲としちゃ、格別だぜ! 装弾数に制限はあっても回転式弾倉(シリンダー)に装填されてりゃあ、次弾装填に時間が掛からねえし。砲身のダメージ考えたら連射は出来ねえけど、回転式弾倉のお陰で今までの砲みたく次弾装填込みで馬鹿みてえに間隔空けて撃つ必要もねえからな」


 ドクはうんうんと頷いて傭兵の男からの報告を聴き、その顔には満足気な笑みが浮かぶ。

 アンディは使用した砲の疑問点をSF技師に訊ねた。


「だがよ、ドク、あれはネミディア系のSFじゃ却って使い辛いんじゃね? 俺のブレイザーはクェーサル系のSFで機体重量が有るし重心も低めで、スピードが無い分パワーが大きい、だから発射時の反動にも耐えられる。無反動砲って呼ばれていようが反動低減効果があるだけで、発射時の反動は結構あるぜ。最新機は知らねえが、代々軽量でスピード特化のネミディア系SF、テスタメントやエレメントじゃ、コイツは使い辛いだろ?」


 アンディの疑問の吐露にドクは心得顔で頷き、傭兵の男へと口を開いた。


「ああ、そりゃそうだ。ソイツはお前のみてえなクェーサル系SF向けの武装だからな。だが、ネミディア系でも使えはするんだぜ。専用のショックアブソーバーも作って有るから、ソイツを噛ませばだが。しかし、使い勝手に問題はねえんだなアンディよ?」


「それに関しちゃ、なんも問題ないぜ! このまま使わせて貰いてえくらいだな、ドク」


「んじゃよ、アンディ。そのままソイツの実地試験員(モニター)をやってくれ。弾薬代は別に貰うが、ソイツの代金はいらんので使用時の感想をたまに、そればかり使う事はないだろうしな、月一程度で報告しろ!」


「いや、言ってみるもんだな!」


 ホクホクした顔でアンディは満足気な笑みをしている。

 ジョンは苦笑してドクに訊ねる。


「ドクさん、良かったの?」


「うん、構わん。どうせ趣味の武装だしな。使わせて使用感が聞けるならこっちにも無駄じゃないからな」


「狩猟団のダスティン親方みたいだね。趣味でSFの武装作るとか」


 ドクの返答に少年は思わず漏らした。その言葉を聞きドクは目を見張りジョンを睨むように見詰めた。


「……所で、ジョンといったな。お前は何をしに来た?」


 少年はSF技師の強い視線に気圧されながらも、平然とした様子を繕い、ドクに答えた。


「この場へはSFの装甲の修理をお願いに。トゥアハ・ディ・ダナーン主教国へはオルソン=エルヴィスというSF技師を探しに来ました。でも、その人、教国では神敵とかに指定されていて、探しようが無いんです。困りますよね? オルソンさん」


 ドクは、オルソン=エルヴィスは目を見開いて少年を見詰め、ジョンに問い掛ける。


「誰のことだ? 俺はドクだ。オルソンでは無い。しかし、解った。装甲の修理だな。今日は預かるが構わないか?」


 目が泳いでいたが、ドクはとぼけて少年に機体を預かる旨を提案する。少年は微笑みを浮かべ、ドクに答えた。


「お願いします。こちらも代金は後で良いですか?」


「構わん」


 ジョンはセイヴァーを彼のガレージに預け、アンディのブレイザーの肩に乗せて貰いその場を後にした。

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