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第22話 教国到着、大樹林を越えて

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 エントを出発して、次の衛星都市から10日、ジョンとアンディは大陸北西部一帯に広がる大樹林“ケルヌンノス・ヘルシニア”を抜け、ネミディア連邦中央平原に足を踏み入れた。


「うわぁ、スッゴイね! キラキラしてる」


 視界の先には石造りの巨大な都市と、ガラスやコンクリートで建造された摩天楼を聳える近代的な巨大都市が少し離れて、並んでいる。

 二つの都市のさらに奥には、手前の都市二つがすっぽり収まるサイズの巨大湖が見えた。水面の揺らめきが陽光を反射して宝石の様に煌めいている。

 その光景に目を奪われているジョンにアンディから通信が入る。


『感動中に悪いがね、ジョンよ」


「何、アンディさん?」


 邪魔をされた形のジョンは、全く気にせずアンディに言葉の先を促す。


「大樹林をでたばっかで、近そうには見えるがな。ダーナ教国にしろ、連邦首都にしろ、こっから後三日は掛かるからな。ここらにもフォモールは出るんだぜ、警戒は怠るなよな」


「へえ、じゃああの二つの都市も奥の湖もすっごいでかいんだね! あの湖って何ていう名前なの?」


 はしゃいだ声音の少年に、傭兵の男(アンディ)は口元に笑みを浮かべ、目を細めて答えた。


『ありゃ、コリブ湖だ。トゥアハ・ディ・ダナーン主母神教の伝説の湖だぞ。覚えとけ記憶喪失君(ジョン少年)よ」


「ありがとう、アンディさん! コリブ湖だよね、覚えとくよ」


 ジョンはアンディに素直に礼を言い、セイヴァーを走らせていく。

アンディは面映ゆい心地で、ブレイザーを駆った。





“王、来臨”


“おうさま”


“我、出番”


“でばん?”


“でばん?”


“遊興、我”


“あそぶ、おうさま”


“王、遊興”


“おうさま”


“にせもの”


“我、滅殺”


“おうさま”


“ほんもの”


“我、傾倒”


“おうさま”


“おうさま”


“おうさまあそぼ”





 今、ジョンの視線の先には、石造りの巨大な都市がある。十字に円を組み合わせた形をした巨大なケルト十字を大鐘楼に戴き、その足下に古代の人の手により教義の祖たる主母神殿を中心にした区画整理され、造成された巨大な都市型の遺跡。

 その周囲を囲む石造りの背の高い都市防壁には南、西、北の方角にそれぞれ街道へ繋がる三つの門が築かれている。正確には東側にも門は築かれているが、そちらはコリブ湖の港へと繋がり、開かれたままとなっていた。

 ジョンがアンディに聞いた所によれば、通常は全ての門が開かれたままとなっている筈だが、今は連邦首都に通じる南側の門を除き、街道への門は閉ざされていた。

 トゥアハ・ディ・ダナーン主教国に近づいて行く途上で、ジョンには気が付いた事が一つあった。都市防壁の外側、特に北側を中心に難民キャンプのような、かなり大規模な簡素な集落が作られていることが少年の目には見て取れたのだ。

 後、半日で辿り着くという丘の上にジョンは機体を止め、後から来たアンディの機体が倣い停止する。

 

「アンディさん、あのキャンプ村みたいなのって何?」


 問えば答えが返ると思っているのか、ジョンはアンディに訊ねる。


『まったく、訊けば答えると思ってんじゃねえよ、ジョン。ありゃ、難民キャンプだ。もう4、5年前か、ネミディアの北部州の幾つかが、学者連中が起きないと言っていた、北からの大規模侵攻でフォモールの大群の手に落ちてな。そこから逃れて来た国内難民が集まってるって話だ。俺が前に来た時は都市防壁の門は南側以外も開いていたんだがな』


 アンディも口では渋るが、面倒見が好く結局は少年の問いに答えている。


「フォモールって、大規模な群れは作らないって聞いたよ。衛星都市のキャンプ襲撃の時も結構な数がいたみたいだけど、連邦の州を乗っ取るってどんな数なのさ?」


『記録上は、結構な数字なんじゃねえか、一万匹とかな? 機密とやらで、観測実数は公表されてねえ。そうそう、向こうの首都の方じゃ、その事件を口実にフィル・ボルグに回帰すべしって政治運動が広まりだしてるらしいぜ。ネミディアの南方州じゃ、フィル・ボルグのちょっかいが多いから、どこの州もそんな馬鹿言う奴らはいないがね。休憩終了、そろそろ行こうぜ、ジョン』


「はい、行こう!」


 アンディはジョンを促しSFで先行した。ジョンは元気に返事して付いて行く。

 都市外壁の南都市外門に回り、ジョンとアンディは教国巡礼の為の長蛇の列の一員となった。

 入国審査検問に時間が掛かっているのか、少年達の列ぶ列は遅々として進まない。じっと待つジョン達の列の後ろが何やら騒がしくなった。どうやら何かトラブルが起きたらしい。ジョンはそちらに向かおうとして、アンディに止められた。


「なんで止めるのさ、アンディさん?」


『なんで、じゃねぇよ。また、この長い列に並び直す気かよ、お前は。ダーナ教国には神殿騎士団(テンプルオーダー)が有るんだ。面倒(トラブル)事処理(シューティング)はそいつ等に任せとけ、ジョン。ほら、もう直ぐ検問だぜ』


 アンディは入国審査検問所をSFで指差し、ジョンに示す。

 門の左右にそれぞれ、頭部面覆いと機体各部にケルト十字を意匠された神殿騎士団専用SF“CELTICROS(セルティクロス)”が立ち、その間に隊長仕様機の頭部が大きな“CELTICROS(セルティクロス)FIANA(フィアナ)”立っており、その三機の機体の間に設けられた検問所をパスした車両やSFがダーナ教国の門の内側へ消えていく。


「あのSF、何か、真ん中の隊長仕様と左側より、右端の一般機の人の方が強そうだね?」


『ああ、そういう事もあるだろうな。確か、隊長機に乗れるのは教団内部でも上層部の血族が優先されるらしい。今の神殿騎士団の副団長は教国で初の一般階層の出身で、団長からも一目置かれているって噂だ。そろそろ、俺らの番だ。降りる準備しとけジョン』


「はーい」


 やがて、彼らの入国審査の順番がやって来た。二人はSFから降り、幾つかあるブースで分かれ、受付役の係官の前に立った。受付の奥にも、データ処理の係官が何人か居るようだ。


「我がトゥアハ・ディ・ダナーン主教国に何の為、入国を希望されますか? お名前と併せて身分証の提示の上、お話し下さい」


 係官の質問にジョンは一歩前に出て、胸元から認識票(ドッグタグ)を提示し、答える。


「ジョン=ドゥです。此方にはSF技師のオルソン=エルヴィスさんに会いにやって来ました。僕のSFの修理を頼みたいので」


 認識票をスキャンしながら、ジョンの名を聞いた係官は少年の名を問い返した。


「ジョ、ジョン=ドゥですか? こちらは本名なのですか? こちら、身分証はお返しします。ありがとうございます。あ、本名ですね!」


 読み取ったデータを確認し、係官は笑顔でジョンに認識票を返した。


「よく聞き返されますから、気にしないで下さい」


 ジョンは苦笑し、係官へ答える。


「少々、お待ち下さい」


 そう言い残し、係官はオルソン=エルヴィスの名前を検索し始めた。結果が出たのか、ジョンの前に戻ってくる。


「ドゥさん、お待たせしました。オルソン=エルヴィスという人物ですが、申し訳ないですが、教国にSF技師で同じ名の方は存在していないようです。それでも入国なさいますか?」

6/3改稿

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