表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/238

第21話 狩猟団の新人

お読みいただきありがとうございますm(_ _)m

ブクマしていただきありがとうございますm(_ _)m

「ふんふふ~ん、ふふふ~ん、ふん……!」


 任務を終え帰投したガードナー私設狩猟団のSF部隊、それぞれの機体を整備台ハンガーに固定し、隊長役の少女は何時にも増して、ニコニコと笑顔を浮かべ浮かれた様子で、調子外れの鼻歌を上機嫌に歌いながら自室へと戻って行く。

 他の二人は後方からその様子を眺めて話し合う。


「分かり易いわね、あの娘(エリステラ)。アナタもそう思わない、レナ?」


 ジェスタは傍らの少女に、そう問い掛けた。


「うん、エリス、本当に嬉しそう。アイツ(ジョン)はエリスをあんなに喜ばせてる。ジェス姉、あたし謝ってみるよアイツに。今度、会った時には必ず!」


 レナは拳を握り、決意を込め宣言する。そこへ背後から、クリップボードを片手にダスティンが通り掛かった。作業用手袋を着けた片手を挙げ、ダスティンは挨拶して来る。


「おう、戻ったかお前ら! ん、お嬢はどこだ?」


 ジェスタはダスティンの挙げた掌に、自分の手を打ち合わせて返した。


「戻ったのはついさっきね。お嬢なら上機嫌で、もう部屋に戻ったわよ。何か用かしら?」


 ジェスタの言葉に頷いて、ダスティンは答える。


「ああ、お嬢の機体の改修案についてな。まだまだ設計図も上がっちゃいないが、いくつか確認事項があってだ。いつも言っているが、お前らも機体になんか有ったら、整備班の誰でも良いから言っとけよ?」


 ダスティンはジェスタとレナの機体を指差し、ニカッと笑みを浮かべた。レナが何も発しないのを見て、訝しげな表情をした。


「なんだレナ、どうした? さっきから黙ってよ?」


「……親方、聞いてた?」


 地の底から響くような声でレナはジト目でダスティンに問い掛ける。ダスティンは首を捻ってレナに答えた。


「……ん? なんの事だ?」


「あは、レナってば、ジョン君と会うとぎくしゃくしちゃうから、謝るって宣言してたのよ。そこへ親方が通り掛かったから、ね」


「ジェス姉!」


「何だ、そんな事かよ。ま、頑張れ」


 レナはジェスタにむくれ、ダスティンは呆れた声を漏らして激励した。ベルティンや他の整備班の技師達も仕事が一段落したのか、集まってくる。そうして狩猟団の面々が会話をしている所へ、見知らぬ青年が現れた。


「ご歓談中、失礼致します」


 身長180cmを越える角刈り頭の青年は堅い声で、その場の面々に声を掛けた。

 代表してダスティンは一歩前に出、見知らぬ青年を誰何する。


「誰だ? 俺はダスティン=オコナー、この狩猟団の技師長だ。お前は?」


 青年は姿勢を正し敬礼してダスティンに答えた。


「は、自分はレビン=レスター一等兵であります! この度、補充パイロットとしてこちら、ガードナー私設狩猟団SF部隊に着任致しました」


 ジェスタはウィンクしてレビンに挨拶する。


「ハイ、ワタシはジェスタ=ハロウィンよ。ヨロシク」


「レナ、レナ=カヤハワ」


 素っ気ない声でレナは自身の名のみを告げる。


「この二人ともう一人が、お前と同じパイロットだ。そいつがSF部隊の隊長でもあるな」


 ダスティンはジェスタとレナを指しレビンに教える。その二人を改めて見て、レビンは愕然としてダスティンに問い返した。


「こ、こちらのお二人が、ですか!? そちらの男性の方は兎も角、こちらの小さな女の子は、じょ、冗談ですよね?」


 その声を聞き咎め、レナは新人に反感を抱いた。


「む、言ってくれるわね、デカいの! でも、お生憎様、あんたは補充人員だけど、あたしが正パイロットなのは変わんないのよ!」


 ビシッとレビンを指差してレナは言い、自らの黒髪を指で梳き流した。青年はレナを指差してダスティンに問う。


「このちんちくりんが、本当に正パイロットなのですか? 信じられません」


 ダスティンはレビンの様を見て、首を横に振り、彼の問いに答えた。


「なってねえ、なってねえよ、新人! その質問の答えはイエスだ。レナの言った通り、その娘は正パイロットで、お前は補充人員でしかないんだぜ。お前用の機体は無いしな」


 ダスティンに続いて、ジェスタも口を挟む。


「ダメよ君、十八歳くらいでしょ。その歳で一等兵はすごいわ。でも、一般的にすごいだけよね、それって? 機体搭乗時間だけでもキミ、レナには届かないと思うわ。基本的には、長く搭乗している方が操縦には熟練されるのよ。何事にも例外は在るけどね。キミは例外そんなのじゃないわね」


「何故、分かりました。自分は良く年齢を間違われるのですが? いえ、そうではない、自分は軍で教練を受けたのです。この娘が何時間乗っていると言ううのですか?」


 ジェスタはダスティンと仲良く顔を突き合わせ、何やら計算を始めた。途中からレナも加わった。


「……乗り始めたのお嬢と一緒よね?」「ああ、大体、十年は前か?」「最初は30分くらい、で良いのレナ?」「それくらいかな? 本当に乗ってただけ」「シミュレーターで本格的に操縦させて貰ったんが6年前か?」「あ、そう、そうだよ、一日2時間だったかな?」「三年前から実戦投入されてる?」「ざっと簡単に計算したら、3000時間は乗ってるの、あたし!?」


 レナは自分で計算結果に愕然としている。概算値だが、ジェスタはレビンに計算結果を教えた。


「えー、レビンくん、……この子、SFに3000時間は乗ってる」


 その結果を信じられず、レビンは叫んだ。


「う、嘘言うな! そんなちんちくりんが3000時間なんて乗ってる筈無いだろ! 嘘ですよね?」


 レビンを除く、狩猟団の整備班を含む全員が、無情にも首を横に振った。

 レナは顎が外れた様子のレビンに追い討ちするように言う。


「あ、でも、お嬢の方があたしより搭乗時間長いよ! シミュレーターだけでも、あたしの2倍は乗ってたもの。あたし、小間使い(メイド)のお仕事を小間使い頭のメリッサお婆ちゃんに習ったりでそんなに時間は採れなかったからね。お嬢、5000時間は乗ってるんじゃない?」


 何かが擦れ軋む音を立てる様に、ゆっくりとレナへ顔を向けるレビン。


「その……お嬢とは、……どなたですか?」


 問われた少女に代わり、割り込んだ笑顔のジェスタが青年の問いに答えた。


「お嬢はお嬢よ。キミ、団本拠(ハウス)で擦れ違わなかったの? エリステラ・ミランダ=ガードナー、団長アーヴィング・エルド=ガードナーの令孫よ。ふわふわの長い金髪の可愛い娘ね」


「いえ、わかりません。特に女性とは擦れ違わなかったので」


 レビンの返事に、オネエ口調の美青年(ジェスタ)は眉根を寄せて青年の肩を叩いた。


「なんだか堅いわね、キミ。私設狩猟団(ウチ)は軍隊じゃないのよ? もっと、砕けた話し方は出来ないかしら? アーヴィング翁にも言われてない?」


「いえ、団長閣下とは、まだお会いしておりません。高名なガードナー私設狩猟団の専用SF、“TESTAMENT(テスタメント)”を一目、この目にしたかったのです!」


 能天気なレビンの言に、綺麗な顔に笑顔を浮かべたまま、ジェスタは青年の胸倉を掴み、彼のみに聞こえるドスの利いた声で脅す様に言った。


「……てめえ、本当に補充人員か? ()ずするべき、代表への挨拶もせず、機密区画に入って来るたぁ、良い度胸だなぁ、おい? このままここで死ぬかよ、あ?」


 表情を消したジェスタは片手で胸からソレを抜き、青年からは見えない様に硬い感触を脇腹に押し付けた。レビンはすっかり顔色を青褪めさせ、涙目で必死に命乞いをし始めた。


「おおおお、お俺、補充人員っす! ぅぅぅぅぅぅ嘘じゃないっすよ! ここ、こ、此処に推薦状と任命書があ、有りますぅぅ」


 涙目で取り出した二本のスティック状の記録媒体をジェスタに見せる。ジェスタはソレをレビンにさらに抉り込む様に押し当て、耳元に囁く。


「駄目だな、そんなもん見せられたって、読み取れないだろがよ。持って行く場所が違うじゃあないか。何すりゃ良いか、判ったかい?」


 顔面蒼白のレビンは人形の様にガクガクと何度も頷き、その様を見て、ジェスタは青年の身体を押し離した。レビンはそのまま逃げるように駆け出し、格納庫から走り去って行った。

 レナやダスティンはジェスタをジト目で見て、口々に言う。


「……今の、ヒドくないかな、ジェス姉」


「ありゃ、どうかと思うぜ、俺もよ?」


 それにジェスタは涼しい顔で、さっきまでレビンに押し当てていた金属製のペンを指先でくるくると回した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ