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第20話 大陸樹幹街道4 穏やかな旅路

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 明くる日、ジョンは目覚めて早々にエントを出発し、トゥアハ・ディ・ダナーン教国へ向け、大陸樹幹街道をさらに東へと進んでいく。

 隊規で金銭は渡せないがこんなものならばと、エント森林警備から、出掛けにジョンは数日分の携帯食料と飲料水を持たされていた。

 エントで別れるものかと少年は思っていたが、アンディはこのまま、ダーナ教国までついて来るという。


少年(ジョン)に付いて行った方が金になりそうだからな。教国まで行くさ』


 アンディは詰め所の格納庫を出るセイヴァーに通信でそう告げ、彼の操るSF、ブレイザーで言葉通りに付いて来ている。

 舗装された街道を走る車両の列を縫い、ジョンのセイヴァーとアンディのブレイザーが進んで行く。

 そうして昼頃、整然として脇を行く車列を横目に、機体を進ませながらジョンはアンディに話し掛けた。


「ちょっと質問ですが、良いですか?」


『何だよ、言ってみな? あと、その言葉遣いは止めてくれ、もっと砕けた口調で良い』


 アンディに請われ少年は言い直した。


「分かったよ、こんな口調で良いの?」


「おう、それで良い。で、質問てのは何だ、ジョン?』


 満足したように頷き、アンディはジョンに質問の先を促す。


「アンディさんは何なの? SF乗りは分かってるけどさ」


『俺? 俺はお前と同じ雑務傭兵(バイプレーヤー)だな。ガードナーっていやあ使用SFはテスタメントだろ。お前のセイヴァーは正規隊員の機体じゃねえし』


 頭にクエスチョンマークを浮かべ、ジョンはアンディに聞き返す。


雑務(バイ)傭兵(プレイヤー)って、何なの、アンディさん?」


『いやジョン、お前、何故んなことも知らねえんだ? まあ、名前の通りさ、狩猟団に正規所属しねえで、SFに乗っての戦闘以外の仕事もこなす傭兵(脇役)だよ。協会もあるぜ、狩猟団のそれに付随した互助会みたいなもんだがな』


「あれ、僕はどうなっているんだろう? 一度、狩猟団に連絡取ってみないと」


 今更それに気付き、ジョンは漠然と狩猟団に連絡を入れる事を思う。


『登録情報なら調べられるぞ。都市の端末でならだが』


 悩み出した様子を見、アンディはジョンに助言した。


「……うん、一度、連絡取ってみるよ。そんな登録した覚えがまず無いし」


『覚えが無いって、どういうこったそりゃ。まあ、それで良いんじゃねえか。セイヴァー(そいつ)の通信機を使やあ良いだろ』


 アンディは投げ遣りに少年に同意し、ジョンは彼に言われて始めて、セイヴァーの通信機でも連絡が取れることを思い出した。


「そうか、この通信機で良かったんだっけ。早速、連絡してみるよ!」


 ジョンは弾んだ声でアンディに告げ、さっさと狩猟団へ連絡を取った。





 ガードナー私設狩猟団SF部隊、今月4度目になる樹林都市周辺のポーン種掃討任務、今日も恙無く作戦を終了しようとしていた。


「あと二体! レナは手前のポーン種を追い込んで、ジェスタさんはレナと協力して撃破を、奥の逃げる一体はわたしが撃ち抜きます! 行動開始!」


『はいはい、らじゃ!』


『分かったわ!』


 ジェスタ、レナから返事が戻り、三機のテスタメントがランドローラーで疾走を開始した。エリステラは目標へ射線の通る場所に移動し、彼女専用の長距離狙撃銃(ロングレンジライフル)雷霆(サンダーボルト)“の銃身を展開し伏せ撃ちの体勢で、最適な射撃タイミングを測る。

 目標( フォモール・ポーン)は木々の間を縫い、既に遠方にまで逃げている。


「……いい子、……そう、うん、……今!! あ、ぇ、通信ですか?」


 エリステラが最大望遠で照準し引金を引こうとした、その瞬間、彼方のジョンからエリステラへ通信が入った。

 マズルブレーキがV字の炎を吹き、弾丸が飛んでいく。

 

『エリステラさん、ちょっと訊きたいことが有ったんだけど、……あれ、今、通信は拙かった?』


「あわ、じょ、ジョンさん!? 少しお待ちくださいね」


 エリステラは急いで、着弾を確認、ポーン種の死骸が煙りを上げるのを視認し、深呼吸を一度して、真剣な顔でジョンとの通信に戻った。


「お待たせしました。なんですか、ジョンさん?」


 急いで取り繕った事を感じさせない声音でエリステラはジョンに声を掛けた。


『あ、ええと僕の所属、どうなってるのかを教えて欲しいんだ』


 エリステラは何故か少しがっかりしながら、ジョンに真面目に答える。


「ジョンさんの所属ですか? 客分(ゲスト)扱いで狩猟団(わたし達)の所属になっていますよ。お祖父様がその様に手配されました。ジョンさん認識票(ドッグタグ)持ってますよね?」


 エリステラの質問にジョンから即答が返る。


『うん、いつも首から下げてるよ』


団本拠(ハウス)に着いて最初に、ジョンさんからその認識票をお預かりしましたが、憶えていますか? あの時にですね。未刻印だったお名前とガードナー私設狩猟団所属である事の打刻と、タグ内蔵のチップに同内容のデータの入力をさせていただきました」


 エリステラの返答に、通信機の向こうでジョンは頷いているようだった。


『ああ、うん、思い出したよ。僕が沈んでいた頃だね』


「はい、その認識票は、ジョンさんの身分証明証でもあるので身分証の提示を求められたらそれを見せてください」


『分かったよ、他に何か、注意点てあるかな?』


 ジョンの問いに、言い辛そうにエリステラは答えた。


「タグには、お財布の機能もありますが、先に謝りますね、ジョンさんは今、狩猟団に多額の借金をした状態になっています。わたしのせいです。ごめんなさい。返済に関しては特に催促はしませんし、利息も無いのですが、全てわたしの失言のせいなのです。本当に、本当にすみません」


 ジョンは通信機越しに笑い声を上げた。


『あはは、僕はどういう名目で借金したの? あ、エリステラさん、別に謝らなくて良いよ。団の人達は、あんなに良くしてくれてたし、僕は借金しててもおかしくないし』


 エリステラは申し訳なさで目に涙を溜め、笑い飛ばすジョンに救われた思いがした。


「あのですね、ジョンさんの機体の整備費用とその時に使用した部品の代金になります」


『ああ、そういうことか。なら、仕方ないよ借金になっても』


 あっさり頷くジョンにエリステラは決意を込め、言った。


「あの、わたしのせいなので、わたしも負担させていただきますからね!」


『ありがたいけど、良いの? 別に僕は気にしてないよ』


「良いのです。わたしのせいですから!」


 ジョンは頑固に繰り返すエリステラにしょうがないなと言う声音で、返事をした。


『じゃあ、後で負担分を決めようか? エリス、君、引かないからね。じゃあね、また会おう』


 ジョンはそう言って通信を終えた。

 ジョンから初めて、愛称で呼ばれてエリステラの頬はそれからしばらく、緩みっぱなしになった。

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