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第17話 大陸樹幹街道1 出会い、傭兵アンディ

遅れてしまい申し訳ないですm(_ _)m


ジョン君機の機体色変更しました。

資料提供、表現提案者、霧丸さんです


よろしければ感想・ご意見・罵倒などありましたらお書き込みください。

 樹林都市の西に位置する団本拠ハウスの敷地内を、一人の小さな少年が走っている。

 誰かを捜すようにキョロキョロと辺りを見回しながら、ちょこまかと走って行く。

 自室の窓越しにそれを見つけた少女は、先程まで机に広げていた手紙をサイドテーブルのレターホルダーに差し、部屋を出て行った。

 少年の行く先へ、団本拠の内部を通って先回りする。

 少女は上手い具合に走って来る少年を待つ事ができた。

 

「アクセルさん、どうしました?」


 駆けて来た少年へ、首を傾げてエリステラは声を掛けた。


「はあ、はあ、エリスねぇ、ジョンにぃ見なかった?」


 息を整えながら、アクセルは年上の少女へ問い掛けた。


「ジョンさんですか? あの方なら、今は居りませんよ」


 エリステラは首を横に振り、落ち着いた声で返す。

 アクセルはぽかんとした顔で、エリステラを見上げた。


「なんで、ジョンにぃ、なんでいないの?」


「ジョンさんは、なんでもダスティンおじ様の伝手に、機体の修理をしてもらいに行ったそうです。あの方、お金を持っていない筈ですが、どうするつもりなのでしょうね?」


 エリステラは顎に手を当て、困り顔でアクセルにぼやいた。


「それジョンにぃ、タイヘンじゃないの、エリスねぇ?」


「そうです! ジョンさんは大変なのです! そういえばアクセルさんはどうして、ジョンさんを?」


 少女に問われ、アクセルは下を向き言い辛そうに答えた。


「かあちゃんに言われたんだ……。とうちゃんが死んだのはジョンにぃのせいなんかじゃないって、にいちゃんが自分のせいって言っても、とうちゃんがそうなったのは、とうちゃん自身がそうなるように動いたからだって」


 少年は顔を上げ、エリステラを見上げた。


「おれ、かあちゃんに言ったんだ。じゃあ、とうちゃんが死んだのはとうちゃんのせいなのかって、そしたらかあちゃん、それも違うって、結果がどうなっても、原因が別の誰かにあっても、そこでたたかうことを決めたのはとうちゃん自身で、誰かを守って守り抜いたのもとうちゃんなんだから、やり通したとうちゃんを他人のせいにしてバカにしちゃだめだって、直接、ジョンにぃがとうちゃんをどうにかしたわけじゃないでしょうって」


 少年の目に涙が溜まる。


「そうなんだよな、ジョンにぃがとうちゃんを殺した相手じゃないんだよな。なのにおれ、ジョンにぃを目の敵にしてたんだ。だからおれジョンにぃに謝ろうって思って」


 エリステラはアクセルの頭に手をやり、ゆっくりと撫でた。


「そうですね、あの時、ダン隊長はわたし達を助けてくださったのです。

 あのSFを呼び寄せたのは、ジョンさんかもしれません。ですが、わたしはその機体に追い詰められていましたし、レナは気絶していました。ジェスタさんはそんなレナをかばって動けませんでした。

 隊長の死が誰かのせいだと言うなら、ジョンさんより、ずっと近くにいたわたし達にこそあるでしょう。

 ですが、隊長に助けられたから、わたしは今のアクセルさんとお話しが出来ています。

 誰があなたに隊長の死の原因がジョンさんにあると言ったのかは知りませんが、確かにあなたのお父様はわたし達を助けてくださったのです」


 エリステラはまた困り顔なり、腕を組んで唸る。


「ですが、困りましたね、実は今、ジョンさんと連絡がとれないのです。

 ダスティンおじ様が言うには、通信帯域などは変更していないので、何か通信阻害される場所に入ってしまっているのではないか、とそういうお話しでした。

 こちらに戻ってくる事は、ジョンさんからわたし宛てにくださったお手紙に書かれていましたけれど」


「そっかじゃあ、おれ今日は帰るよ。ごめんなさい、エリスねぇ」


 アクセルはわかりやすく肩を落としその場を後にした。

 エリステラは少年の背中へ声を投げかけた。


「ジョンさんと連絡出来るようになったら、アクセルさんにお教えしますね!」





 揺らぐ青焔が如き色に塗り替えられた片腕のSFが、広大な大樹林“ケルヌンノス・ヘルシニア”を貫く大陸樹幹街道を東へと走る。

 新しく機体色を一新した“セイヴァー”だ。

 今、その機体は折り畳み式(フォールディング)騎剣ソード以外に武装をしていなかった。

 途中、余り良い思い出の無い場所へと差し掛かったが、彼の機体の周りを行く車列は、そこに都市が有ったことを忘れたように整然と走っていく。

 周囲の流れに任せ、脚部機動装輪(ランドローラー)を展開したセイヴァーは通常走行速度で、更地となった都市を横目に通り過ぎた。


(まるで、何も無かったみたいだ……)


 ジョンが感傷に浸りそうになったその時、車列の先が急に止まり渋滞を起こした。

 ジョンは車列の間をすり抜けて、渋滞の先へ機体を進ませる。

 渋滞の先には一台の大型車両が横転し車体の底を見せ、いくつか車線を塞ぎ転がっていた。

 ジョンは外部スピーカーから声を掛けた。


「運転手さん、無事ですか!?」


 運転手からの返答は無い、ジョンが声を掛けると、少しして数機のSFが集まってきた。少年は集まってきたSFにも声を掛ける。


「そこのSFの人達、手伝ってください!」


 ジョンはセイヴァーを大型車両の傍へと動かした。


『どうした片腕の、事故か!』


 機体を移動した所で、後方からずんぐりした体型のSFがジョンへ声を掛けてきた。


「そうです、渋滞の原因を確認に来たら、この車両が横転していました! 車体を起こそうと思うので手伝ってください!」


『わかった、手を貸すぜ!』


 威勢良く返事を返す見知らぬ機体へ少年は感謝を返した。


「すみません、ありがとう、こちらは見ての通り片腕で力加減がし辛い、あなたは運転席側をお願いします!」


『ああ、早く起こしてやらんとな。後部は任せる! 俺が合図したら始めてくれ!』


「はい!」


 ジョンは車体後方の貨物に手を掛け、前方からの合図を待った。


『ゆっくり起こせよ。良いか、始めるぞ! 三,二,一起こせ!』


 軍用機である2機のSFの全身のアクチュエータがその能力を発揮させ、横転した大型車両の巨体をゆっくりと起こしていく、数分を掛け、運転席内へ衝撃を与えないように慎重に作業は完了した。

 車体内部への損傷は少なかったようで、爆発を起こすなどの二次被害は避けられた。起こした車両をそのまま押して路肩へと移動させる。

 

「大丈夫ですか! できたら返事をしてください!」


  ジョンは路肩で機体から降り、密閉型の運転席へ何度か声を掛け乗っている筈の運転手の反応を見た。しかし、返答が無い。

 手伝ってくれたSFのパイロットも機体から降り、こちらへ近寄って来て、気さくに挨拶して来る。

 二十代後半から三十代前半くらいの年齢の男性だ。


「よう、俺はアンディ=オウルだ。そいつの運転手の様子はどうだい?」


「僕はジョン、ジョン=ドゥです。協力ありがとうございます。さっきから声を掛けてるんですが、運転手さんからの返事が無いんです。ドアこじ開けようと思うので、証人になってください」


 ジョンは言うが早いか、太もものナイフシースから抜いた特殊硬化処理の施された大振りの高周波振動(ヴァイブロ)ナイフを運転席のドアへ斬りつけた。

 高周波振動の刃が耳障りな音を立て、金属製のドアが切り裂かれ開口部が開かれた。

 少年が内部を覗くと、一人の大柄な男性が額から血を流し、コンソールへと倒れ込んでいた。

 運転席へと入り込み、ジョンは男性の手首を取り、脈拍を確認する。……意識は無いが脈拍はそう乱れていない。

 腰のポーチからガーゼを取り出し消毒液を含ませ、男性の顔の血を拭いとり、男性の身体をシートへ預けさせた。

 外へ出た少年はまだそこに居たアンディへ大声で話し掛ける。


「怪我人一人です! えっと、アンディさん! こういう時の救急の連絡先ってどこになりますか?」


「は、大胆な坊主だな、この距離なら以前はキャンプの森林警備(フォレストガード)詰め所(ボックス)だったんだが……。こないだ街ごと更地になってるからなあ、この先にある次の衛星都市、“エント”の詰め所に連絡するしか無いな」


 アンディに教えられた詰め所へ通信しようと踵を返した少年の肩をアンディは掴んで止めた。


「まあ待て、通信入れるにゃ、坊主、お前さんの名が悪い。ジョン=ドゥじゃな」


「そっか! 身元不明遺体(ジョン・ドゥ)!」


 そこに思い至って、ジョンはハッとした。

 アンディはジョンの肩をポンポンと叩き、親指を立てた(サムズアップした)


「乗り掛かった船だ、俺が通信しておく。お前さんは運転手の容態が悪くならないよう付いてろ」


「ありがとう、アンディさん」


 自らの機体に戻るアンディを信頼し、ジョンは大型車両の運転席へ駆け戻った。

 コクピットからカメラ越しに映ったジョンを見て、アンディは呟いた。


「焼きが回ったかね、俺も。ま、いいさ。……“エント”森林警備(フォレストガード)詰め所(ボックス)か……」


 少年と交わした言葉を律儀に守るアンディを誰かが見たならば、お人好しとしか見えないだろう。



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