第12話 “キャンプ”襲撃 5
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ナイト種に率いられた様々な動物の姿をしたフォモール・ポーン種の大群が迫ってくる。
狩猟団のSF部隊の奥に立つ自機に突撃銃を構えさせたエリステラは、前衛に群れるポーン種達、その奥に悠然として立つ、剣鉈を手にする狼獣人型のナイト種を目掛けて狙撃した。
しかし、その弾丸は、まるで狼頭のナイト種を庇うように割り込んだジャッカル型のポーン種に阻まれ、ナイト種にまで届かない。
目標の代わりに弾丸を受け止めたジャッカル型がくず折れ倒れた。
弾丸を放ったエリステラを狙い、前衛から様々な姿のポーン種数匹が殺到する。
エリステラの右斜め前に立つレナ機が、右手に構える短機関銃から扇状に弾丸を放ち、エリステラへの接近を阻んだ。
こちらの攻撃を受け、または避けてポーン種達の先頭がほんの少し後退する。
そうした光景が何度か繰り返された。
「……ダメ、ですか。ダン隊長、ポーン種のカバーに阻まれて、ナイト種までの射線が通りません! ポーン種を少しずつでも排除しなければ、どうしようも!」
何度目かの攻撃の後、エリステラはダンへ報告する。
部隊の最前衛に立ち、ダンの駆る隊長機は、フォモールの群れの頭に自機の左手の散弾銃から散弾を放ち、右手の短機関銃からばら撒いた弾丸で牽制しつつ、通信機へ返事を返す。
『分かっている! あの狼頭のナイト種、ヤツがフォモールの群れを統率してやがる! だが、考えようによっちゃ好機だぜ! ヤツに直撃する攻撃でなら,ポーンが一体必ず倒れるんだ!』
ダンはわざとおどけたようにそう言い、フォモールへ更に攻撃を加えた。
その左側、一歩後ろに控えるジェスタは、ダン機を避け、大回りで飛び込んできた犬型のポーンを左手に構えた片刃の高周波振動騎剣で半身におろし、それに続く肉食獣型のポーン達を右手の突撃銃をバーストモードで射撃、これを撃破してぼやいた。
『ジョン君は何処行っちゃったのかしら? こういう時に逃げる子じゃないわよね、あの子。あの機体の新装備、あれ今なら凄く使えそうなのに!』
口ではぼやきつつも、ジェスタ機からのフォモールへの攻撃が止むことはない。
『今、此処にいねえ奴のことは言うな! 親父っさん、ベル、ソイツの発射準備はそろそろどうだよ』
『おう、完了した! 合図くれりゃあ、何時でも撃てるぜ! おい、ベルそっちゃあどうだ?』
『こっちも終わったぜ、やっぱ、人数いると違うな! 親父のSF搬送車が整備班の連中を乗っけて来てくれて、助かったぜ』
技師親子から、ほぼ同時に作業完了の返事を受け、ダンはSF搬送車の攻撃対象を示した。
『親父っさん達はビショップ種の牽制を頼む! 墮とせなくて構わない、頭上を取られるのはマズい! それだけ阻止してくれ!』
エリステラは回線越しにダンへ提案する。
「ダン隊長、わたしがあれを使います! みなさんはわたしが取りに戻る間の戦線維持をお願いします! ダスティンおじ様、あれは出せますか?」
『おうよ、お嬢の得物は別物扱いだぜ! もちろん、使えらあ!』
「だ、そうです。援護をお願いしますね!」
ダスティンの返事に、エリステラは機体を振り向かせ、後方の搬送車へダッシュさせた。
『仕方ねえ、レナ、ジェスタ!』
『分かっているわ! ジェス姉!』
『ワタシ左側ね、レナあなたはそっち』
急に背中を見せたエリステラ機を狙い、上空からビショップ種が液化爆薬のブレスを吹き付けた。
エリステラは機体をサイドステップさせてブレスをかわし、ランドローラーで短い距離を走らせる。
その間にエリステラを狙ったビショップ種は、レナの放った弾丸により墮とされていた。
搬送車に取り付き、急ぎエリステラは特別製の長距離狙撃銃“雷霆”を手に取る。
その場でフォモールの群れへと振り返り、左腰部のハードポイントに長銃本体後部ストックから伸びる懸架用アームのコネクタを接続、自機の左脇に抱えたその銃の、二つ折りにされていてもなお長大な展開時全長約12mの銃身を展開させた。
折り畳まれていた銃身が中央部から前方へ180°回転し延伸、前部銃身の接続部が後退し固定され、折り畳み時は上に向いていた前部銃身下側から杭状の二脚銃架が自動展開し、地面に固定された。
「みなさんお待たせしました! 撃ちますよ!」
宣言と共に、エリステラ機の右半身を前に腰撃ちに構えた射撃姿勢で、長銃の砲口部マズルブレーキからV字の炎を吹かせ、その名の如き轟音とともに、戦車砲弾を思わせる大口径の弾丸が放たれた。
ダン機の脇を抜け、空を走った大型の弾丸は音速を超過して飛び、狼頭のナイト種に着弾したかに見えた。
着弾の瞬間、またしても傍にいた山猫型のポーンがナイトのカバーに入る。
しかし、“サンダーボルト”から放たれた弾丸はその名の通り、雷のように山猫型の頭から尻までを貫通、そのまま背後のナイト種に襲いかかった。
狼頭のナイト種はそこで初めて、それまでの余裕を無くして回避行動を起こし、これまでの戦闘で初めて動きらしい動きを見せた。
エリステラは自機の右手で自動装填化のされていない“サンダーボルト”のコッキングレバーを引き次弾を装填、流れるように連射した。
この銃の危険性を思い知らされた狼頭は、配下のポーン種を数頭纏めて盾に入らせる。
「みなさん、ナイト種はわたしが引き受けます! 他の種の掃討を!」
エリステラ機の轟音を轟かせる連続射撃に、ナイト種のカバーに入ったポーン種がまとめて吹き飛ばされていく。
一転して攻勢に回る狩猟団SF部隊、しかし、ポーン種の数が数えられる程に減少したその時、狼頭のナイト種が行動を開始した。
先ず狙われたのは右翼側のレナ機だ。
それまでは味方のお陰で目立ってはいなかったが、それまでもレナは挫いた左手首のせいで動作に微妙にもたつく場面があり、ポーンの少なくなった今、そこを狙われたのだ。
狼頭は隊の機体を盾にエリステラ機の射線を遮り始めた。
「レナ!?」
エリステラが叫ぶ。
体高7mの狼頭が獣の素早さで走り込み、低い姿勢から叩きつけてくる剣鉈を、レナは辛うじて短機関銃の銃身で受け止めた。
しかし、次の刹那、レナ機は狼頭の剛力で胸部を蹴られ、短機関銃の破片を撒き散らし弾き飛ばされた。
それを見たエリステラは砲身を折り畳みつつ、レナ機へ向かい機体を走らせた。
搭乗者に何かあったのか、レナ機は起き上がらない。
狼頭は剣鉈を振り上げレナ機へ留めを刺そうとする。
そこへ横合いからの3発の弾丸が狼頭の行動を遮った。
『ヤらせねえよ、くそ狼が!』
普段の口調を忘れ、ジェスタが叫ぶ。
彼の機体の突撃銃の銃口から硝煙が昇っていた。
オカマじゃないっすよ?




