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第10話 “キャンプ”襲撃 3

ブクマしてくださった方ありがとうございますm(__)m

 走行中のSF搬送車(キャリア)、その車体が跳ね、レナの身体はリフトから弾き出された。


(やばっ、死ぬ!)


 刹那、少女の頭に死という言葉がちらついた。

 次の瞬間、レナの身体は頭からパイロットシートへと叩きつけられていた。

 衝撃にレナの意識は一瞬飛び、無理な姿勢で押し込まれた身体の痛みで目が覚めた。

 不幸中の幸いか、コクピット内に乗り込む寸前だったのが良かったようだ。

 通信機からエリステラの悲痛な声がした。


『レナ! ベルティンさん、レナが!』


 レナは狭いコクピットの中で体勢を入れ替え、コンソールに手を伸ばした。

 自身の生来の小柄さに生まれて初めて感謝しながら、レナはエリステラへ通信を返した。


「だい、じょう、ぶよ、エリス。なんとか、乗り込めたわ!」


 搭乗時に左手首を捻っていたのか、コントロールグリップを握るとレナの痛みが走る。

 それをおくびにも出さず、少女は笑顔をエリステラへ見せた。


『レナ! 良かった……』


『問題ねぇか、レナ? 済まねえ!』


「心配しないで、大丈夫よベル兄ぃ。それより、エリス!」


『はい! ベルティンさん、整備台(ハンガー)を!』


『流石に、二機載せたままの整備台(ハンガー)展開は走行中には無理だ! このまま、停止させるぜ! お嬢、レナ、どっちでも良い、ホフマンの旦那からはビショップだってのは聞いているが、レーダーに反応はあるか?』

 

 ベルティンに言われ、レナはレーダーを確認するが、彼女が左手首に走る痛みにもたついている内に、エリステラが先にベルティンへ自機のレーダーが捉えたデータを送っていた。


『少しずつ近付いてきていますが、今、このSF搬送車の位置までは、まだ間があります。今の内ですね!』


 エリステラの声を受け、ベルティンは搬送車をその場で急停止させた。


『了解だ! 整備台ハンガー展開すんぞ! レナ、お嬢、展開完了したら行ってくれ!』


 搬送車の荷台が後部へスライドし、回転式懸架整備台(ハンガーベッド)が展開を始めた。

 二台重なっていた懸架整備台(ハンガーベッド)がそれぞれ車体に向かって前後にスライドしつつ、時計回りに90°回転し、搭載された二機のSFが並行に起き上がり、整備台ハンガーの展開が完了した。

 ハンガーから解放された二機のSFが武装架(ウェポンラック)から、突撃銃(アサルトライフル)短機関銃(サブマシンガン)をそれぞれ選択し、発進していく。

 緑色に塗装されたガードナー私設狩猟団の主力SF“TESTAMENT(テスタメント)”は、ネミディア連邦軍の現在の制式機から数えて二世代前の制式採用機であり、追従性に優れ、将来を見越しての拡張性に富んだ設計をされており、現行機に勝るとも劣らない名機だ。

 細身の機体であり、装甲面には曲面が多用され、頭部両側面から伸びるアンテナが長い耳の様に見え、御伽噺の森妖精の騎士を思わせる姿をしている。

 二人の少女達を懐に納め、突撃銃(アサルトライフル)短機関銃(サブマシンガン)でそれぞれに武装した二体の妖精騎士が踵の脚部機動装輪(ランドローラー)を展開し疾走を開始した。





 エリステラは壁面モニタに映る、迫り来る鋼鉄の巨鳥フォモール・ビショップを照準に納めると、自機の突撃銃(アサルトライフル)を単射モードで射撃した。

 狙い過たず銃口から吐き出された弾丸が、手前の巨鳥を貫通、その後ろを飛ぶ後続の巨鳥達にも被害を加える。

 撃たれた巨鳥達は体内の液化爆薬に引火され、空中で爆発している。

 バースト射撃の方が確実だが、このフォモール達の物量を考えると、予備弾倉があっても無駄弾は撃てない。

 エリステラは搬送車を挟んで向こう側のレナの機体の動作が、何時もより精細を欠いていることが気になっていた。


「レナ、先ほど、本当は何かあったのではないですか? あなたの機体、動作が何時もより精細を欠いています。無理はダメですよ」


 エリステラに指摘され、フォモールへの攻撃を続けながら、レナはばつの悪そうに認めた。


『ああ、ばれたわね。左手首を捻ったみたい。でも、ここは無理も無謀もやらなきゃ死ぬだけよね! エリスごめん、心配してくれてありがとね。無理でもあたし出来るだけやるわ!』


 レナはエリステラに宣言し、改めて敵へ向き直った。


『お嬢、レナ、前を! 避難渋滞が起きてやがるぜ』


 ベルティンの焦り気味の声に攻撃の合間に、少女達は背後を確認する。

 所々に乗り捨てられた車両が、渋滞の発生源になっている。

 外部スピーカーを作動させ、エリステラが叫んだ。


『わたし達で食い止めます! 皆さん、出来るならば車両は捨てて、逃げてください!』


 叫ぶなりエリステラは避難する市民達に機体の背中を見せ、フォモール・ビショップへ立ち向かう。

 レナもそれに倣い、エリステラと機体を並べた。

 ベルティンはその後ろにSF搬送車を横付けした。

 そこへダンからの通信が入った。


『お嬢、レナ、無事か!?』


『お嬢も、あたしも、ベル兄も無事よ、隊長。そっちはどう?』


 レナはダンに返答し、そのまま聞き返した。


『団のガレージは郊外だからな、遠回りして迂回してくるビショップ種(ヤツ)もいるが、こちらには中心市街程の被害はない。今、そちらに向かっている。合流するそちらの現在座標をくれ』


 エリステラは通信に座標を添付しダンへ送る。


「ダン隊長、こちらの座標を添付しました。現在、避難する市民達が渋滞を起こしてまして、わたし達はその後方に展開しています。それから、レナは無事と言いましたが、彼女、左手首を捻ったそうです。大きな怪我ではないと言ってますけれどね」


『エリス! 余計なこと言わない!』


『ああ、了解した。そちらに急ごう』


 ダンとの通信を終了し、エリステラ達は気合いを入れ直した。

 通信の間も、フォモールの攻勢は止んでいない。


「レナ、みなさんが来るまで持ちこたえましょう!」


『エリス、いっそのことあたし達で全滅させちゃいましょ!』


搬送車(コイツ)も、整備台ハンガー上げればバリケード代わりにはなんだろ!』


 ベルティンは言うが早いか、ハンガーを展開させた。 

 エリステラとレナはその左右に展開し、フォモールへ攻撃を続けた。


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