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「蚕」「駆ける」「浮標」

 桑の実はなんだか虫に似てる。蚕さんの食べ物なんだっけな。甘酸っぱくてつぶつぶで、まぁおいしいんだけど。そんなことを考えるとちょっとだけさ。

「_また? 好きだねー」

 私が楽しく桑の実を摘まんで食している最中なのに。よいしょ、と言いながら横に腰をおろされた。なぜかここまで駆けてきたようで、額にうすく汗が浮かんでいる。

「…別に。嫌いじゃないだけです」

 好き、とか、嫌い、とかそんなの。はっきりなんて出来ない。好きなんかじゃない。だけれど嫌いじゃないの。

「そっか。『それ』は好きとは違うんだ」

 なんて言えばいいのかわからない。木漏れ日につつまれて、私は泣きたくなる。きっと夏のせいだ。全部。全部。心のどきどきも、よくわからない気恥ずかしさも、きっと夏のせい。

 私がずっと無言でいるのを、心配そうに見ているあなたのこと、私は好きなんかじゃない。なのに。

「…嫌いじゃないんです」

「え?」

 嫌いではない桑の実を、嫌いではないあなたの口へ。私の唇から。

お題をくれた木漏れ日好きの友人へ。浮標は見逃してくださいな。夏は海の良さと緑の良さがありますよね。

 お題は随時募集中です。期待に添えるかは分かりませんがどうぞお気軽に~。

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