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clair fleur  作者: 白鈴 すい
第四章~短編~
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第五十三話 お迎えに行こう!②

④遠野晴久の場合


「こ、こんにちは」

「ハルにい!」

「大和くん、美海ちゃん。今日の夕飯はハンバーグですよ」

「やったぁ! ハルにいのハンバーグ大好き! やまとくんもだよね?」


 大和は、嬉しそうにこくこくと頷く。


「まほうつかいさんが、やまとくんとみうちゃんのご飯つくってくれるの?」


 美海の友達が、美海に声をかける。

 彼女の名前は、入江香澄。

 美海と一番仲のいい友達だ。

 颯が来た時に美海に話しかけたのも彼女である。

 晴久も虹太と同様に、ハロウィンのイメージが定着しているようだ。


「そうだよ!」

「もしかして、おべんとうも……?」


 小学生なので普段は給食だが、夏休みなどの学校が休みの時は弁当を持ってクラブに通うのだ。

 その弁当は心や颯のものと同じく、大和と美海の分も晴久が手作りしていた。


「うん! ハルにいは、料理がとってもじょうずなんだよ!」

「いっつもおいしそうだよね! れーとーしょくひんとか一つも入ってなくてさ! たまにかわいいキャラ弁の日もあるし……いいなぁ、みうちゃん。私もまほうつかいさんの料理食べてみたい」


 学童クラブに通っている子たちは、親が共働きの子ばかりだ。

 香澄もそうなので、あまり凝った弁当を作ってもらったことはなかった。


「……じゃあ今度、うちに遊びに来ませんか?」

「え……?」


 しゅんとしてしまった香澄に、晴久は優しく声をかける。


「ご飯は難しいかもしれませんが、おやつなら出せますし」

「で、でも……」

「うちであそんだことって、まだ一回もないよね! かすみちゃん、あそびにおいでよ! 一緒にハルにいのおやつ食べよ! ハルにいは、おかし作りも得意なんだよ! 本当にまほうが使えるみたいに、ぜーんぶおいしいの!」

「そ、それは褒めすぎですよ美海ちゃん……。恥ずかしいです……」


 美海に褒められ照れた様子の晴久を、香澄はじっと見つめる。

 そんな香澄の視線に気付いたのか、晴久は彼女に話しかける。


「あなたは、かすみちゃんっていうんですか?」

「う、うん。入江香澄っていうの……」

「入江香澄ちゃんですね。僕の名前は遠野晴久です。魔法使いさんでもいいけど、よかったら名前も覚えてくださいね」


 そう言うと晴久は、香澄に対して柔らかな笑顔を向ける。


「遊びに来る時は、ちゃんとおうちの人に言ってから来ないとダメですよ? お母さんが心配しますから」

「……う、うん! 今度絶対にあそびに行きます!」

「やったぁ! 楽しみ!」


 はしゃぐ美海をよそに、香澄は少し頬を赤らめながら晴久を見ている。


(かすみちゃん、もしかしてはるひさおにいちゃんのこと……?)


 三人のやり取りを見ていた大和は、人が恋に落ちる瞬間を目撃してしまうのだった。

 遠野晴久がお迎えに行ったら――――初恋の予感!?






⑤春原理玖の場合


 今日は理玖が迎えの当番だ。

 学童クラブまで迎えに行くと、室内に美海と大和の姿が見当たらない。

 どうやら今日は、庭で遊んでいるらしい。


「よかったら庭まで行って、二人に声でもかけてあげてください」


 職員に促され、理玖は庭に向かう。

 そこには、花壇の前にしゃがみ込み何かを話している子ども達と職員がいた。

 その中には、大和と美海もいるようだ。


「さいきん、かだんがさみしいよね……」

「うん。春みたいにたくさんお花がさいてないもんね……」

「じゃあ、来年の今頃にはお花が咲くように何か育ててみようか!」


 職員の一言で、子ども達はそれこそ花の咲いたような笑顔を浮かべる。


「さんせー!」

「先生! なんの花そだてるの?」

「かだんがさみしくないように、きれいなやつがいいよね!」


 子ども達の盛り上がりをよそに、職員は気まずそうな表情を浮かべる。


「う~ん……。先生、あんまりお花には詳しくないんだよねぇ。今度調べておくね」

「「「えー!」」」


 子ども達は、不満そうな声をあげた。

 彼女たちは今、花の話がしたいのだ。

 ここで大和が、理玖の存在に気付く。

 彼は理玖のところまで行くと、服の裾を掴み花壇を指差す。

 こっちに来てほしいという意思表示のようだ。

 大和が理玖を連れて花壇の前に着くと、皆が理玖の姿を認識した。


「あ、りくにい! りくにいならお花の話たくさんできるよ! お花のことならなんでも知ってるし、うちの庭のお花もりくにいが世話してるんだ!」


 美海の言葉をきっかけに、少女たちの視線が理玖に集まった。


「ほんとに!? きれいなおにいちゃん!」

「冬でもさくお花のこと教えて!」

「綺麗なお兄ちゃんって……」


 理玖は不服そうだったが、キラキラと輝く少女たちの表情に気圧されたようだ。

 ぽつりぽつりと話しはじめる。


「……こういう場所で育てるなら、パンジーなんていいんじゃないの。色もたくさんあるし、ガーデニング初心者でも育てやすいくらい丈夫だし。今年はちょっと遅いけど、来年の十月くらいに苗を買ってきて植えつければ、冬の間も花を楽しむことができるよ」

「パンジーって春のお花だと思ってた!」

「私も! 冬にいろんな色のパンジーがさいたらきれいだろうね!」

「先生、メモできた!?」

「バッチリだよ!」


 職員も、理玖の話を聞いていたらしい。

 ペンを片手に、メモをとっている。


「すみません。他にも、育てるためのコツがあったら教えてもらえますか?」

「……水をあげる時は、気温の低い早朝や夕方は避けた方がいい。土が凍ってしまうから」

「なるほど!」

「……他にも、育ちやすい土とか肥料のこととか色々あるけど、予算の問題もあるだろうから後は自分で調べてください」

「ありがとうございます! みんな、後でちゃんと調べておくね! 来年の今頃には、綺麗なパンジーの花を咲かせられるように頑張ろう!」

「「「おー!!」」」


 どうやら、話は纏まったようだ。


「……行こう」


 大和と美海を促し、理玖はその場を離れようとする。


「きれいなおにいちゃん、教えてくれてありがとう!」

「私たちちゃんとお世話するから、パンジーの花がさいたら見にきてね!」

「……わかった。頑張ってね。……行こう」

「うん! みんな、ばいばーい!」

「みうちゃん、やまとくん、ばいばい!」

「また明日ねー!」


 理玖は、今度こそ二人を連れて庭を後にした。

 少女たちが、花に興味を示してくれたからだろうか。

 帰り道の理玖の表情は、いつもより少しだけ嬉しそうに、大和と美海の目には映ったのだった。

 春原理玖がお迎えに行ったら――――植物博士!+綺麗なお兄さん☆

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