第五十二話 お迎えに行こう!①
「「「「「「学童クラブへの迎え?」」」」」」
「うん」
それは、とある日の夕食のことだった。
ダイニングには、珍しく隊員全員と透花、そして大和と美海の十一人が揃っている。
「最近日が落ちるのがはやいから、保護者にはできるだけ迎えに来てほしいって連絡があったんだよ」
「だけど僕たち、毎日は行けないから……」
「そこで、みんなで交替しながら行ったらどうかなって思って。私から、蒼一朗さんと心くんに提案させてもらったんだ。みんな、やってもらえる?」
透花は、柔らかな笑みを浮かべる。
「……かしこまりました」
「りょーかい! 任せてよ☆」
「ぼ、僕がお役に立てるなら是非……!」
「透花さんのお願いなら、仕方ないよね」
「勿論です! 人助けは、とても素晴らしいことですし!」
「……わかった」
透花の呼びかけに、皆はよい返事をしてくれた。
「じゃあ決まり! 大和くん、美海ちゃん、明日からはみんなが交替で迎えに行くから待っていてね」
いつもは二人の暗い帰り道も、明日からは違う。
そう考えるだけで大和と美海は楽しくなり、自然と笑顔を浮かべたのだった――――――――――。
①椎名虹太の場合
「大和くん、美海ちゃん、お待たせ! 迎えに来たよ~☆」
「こうたにい!」
「あ、くろねこさんだ!」
「ほんとだ! くろねこさん!」
「みんな、こんにちは~♪」
ハロウィンの件で虹太のことを覚えていた子たちが、元気に声をかけてくる。
「そういえばおれ、この前この兄ちゃんががっきやさんでピアノひいてるの見たんだ! めちゃくちゃすごかった!」
「えー、私もきいてみたい!」
「お兄ちゃん、ひいてひいて!」
子ども達は虹太の手を引き、ピアノがある場所まで案内しようとする。
「今日はお迎えに来ただけだから、少しだけだよ? 先生、入ってもいいですかー?」
「はい! どうぞ~!」
さすがの虹太も、無断で入ることはしないようだ。
学童クラブの職員に許可を取ると、靴を脱いで中に入っていく。
「よーし! じゃあ弾いていくね! みんながよく知ってる曲ばっかりだと思うよ~☆」
そう言うと、最近小学生の間で大流行しているアニメソングを奏ではじめた。
メドレー形式で二曲目、三曲目と進むにつれて、聴衆はどんどん増えていき、五曲目がはじまる頃には全ての子ども達が虹太の演奏に聴き入っていた。
全部で、七曲ほど弾いただろうか。
虹太が鍵盤から指を離すと、溢れんばかりの拍手がクラブ内に響き渡る。
「おにいちゃん、すっごーい!」
「めちゃくちゃかっこよかった!」
「ご清聴、ありがとうございました~!」
子ども達の笑顔に釣られ、虹太もいつも以上にいい笑顔を見せたのだった。
椎名虹太がお迎えに行ったら――――即興リサイタル、大成功!
②緒方颯の場合
「大和くん、美海ちゃん、待った!? 帰ろう!」
「はやてにい!」
「はやてにいって、いつもみうちゃんのかみの毛やってくれる人?」
美海の友達が、美海に声をかける。
「うん! そうだよ! 今日のお団子も、はやてにいがやってくれたんだ!」
「お団子がみつあみになっててすごい!」
「みう、はやてにいのこと大好き!」
「………………………………」
いつも颯に髪を切ってもらっている大和も、こくこくと頷いた。
「嬉しいな! 俺も、大和くんと美海ちゃんのこと大好きだよ! ……?」
爽やかに言い切った颯だったが、とある方向から視線を感じたのでそちらを向く。
そこには、隼輔を鋭い眼で睨みつける隼輔の姿があった。
「……みう! お前、そんなにこいつのこと好きなのか!?」
隼輔が、大股でこちらにやって来る。
「うん! 大好き! やさしいし、いつもあそんでくれるし、かみの毛やってくれるし! あ、今日着てるこの服も、はやてにいといっしょに選んだやつなんだよ!」
「ぐ……」
美海は純粋な笑顔で、隼輔の心を抉っていく。
「しゅんすけくん、どうしたの? どこか痛いの?」
黙り込んでしまった隼輔に、美海は優しく声をかけた。
「お前とおれは、今日からライバルだ! ぜっっったいに負けないからな!」
隼輔は颯を指差しながらそう言い放つと、走り去ってしまう。
「……? しゅんすけくん、急にどうしたんだろう?」
「そうだね? ライバルって言ってたけど、なんのことかな?」
鈍い二人には、隼輔の真意は伝わらなかったようだ。
(しゅんすけくん、がんばって……!)
そんな二人の姿を見ながら、大和は隼輔に心の中でエールを送った。
緒方颯がお迎えに行ったら――――ライバル宣言されちゃった!
③久保寺柊平の場合
「すまない、仕事が長引いて少し遅くなってしまったな」
「しゅうにい! ぜんぜん待ってないよ! すぐに準備してくるね!」
「ああ」
大和と美海は帰る準備をするため、玄関から離れていく。
柊平がその場で二人を待っていると、他の児童の母親がやって来た。
どうやら彼女も、子どもの迎えのようだ。
「あら、はじめましてよね。こんにちは。ここのクラブ、こんなに若いお父さんがいたのね~」
「・・・はじめまして。いえ、私は父親ではなく、同僚の姉弟を迎えに来ただけです」
「まぁ、そうだったの。どおりで若いはずだわ~」
「はぁ……」
「ちなみに、どの子のお迎え?」
「柏木大和と、椎名美海です」
「大和くんと美海ちゃんね。うちの子はね……」
二人が世間話をしていると、帰る準備を終えた大和と美海がやって来た。
「大和くん、美海ちゃん、さようなら!」
「さようならー!」
美海は元気に職員に挨拶をし、大和も声が出ない分大きく手を振る。
「……それでは、失礼します」
柊平は話していた母親と職員に会釈をすると、大和と美海を連れて出ていった。
少し遅れて、別の母親がクラブに入ってくる。
「今、すごく若いお父さんとすれ違ったんだけど……」
「あぁ、お父さんじゃないわよ。同僚の姉弟の迎えって言ってたもの」
「いいなぁ。話したの?」
「えぇ。お迎えのタイミングが一緒だったから、少しね。だって彼……」
「「とっても素敵だものね!!」」
母親たちは、まるで少女のように楽しそうに話しはじめた。
お互いの子ども達がやってくるまで、柊平に関する話は続いたのだった。
久保寺柊平がお迎えに行ったら――――ママたちのアイドル☆




