第四十五話 虹太と晴久のハロウィン任務②
ハロウィン当日になった。
屋敷の庭には、屋外スピーカーを使い、虹太が選んだ音楽が流されている。
晴久は魔法使い、虹太は黒猫の仮装をし、屋敷の扉の前で子ども達を待ち構えていた。
やって来た子ども達も、思い思いの仮装をしていてとても可愛らしい。
「みんなー、よく来たね☆」
「あ、ねこだ!」
「みなさん、いらっしゃい」
「魔法使いもいる!」
やはりイベントということもあり、三十人ほどの子ども達の雰囲気はどこかふわふわしている。
「じゃあみんな、声を合わせて言うよー! せーの!」
「「「「「トリックオアトリート!!」」」」」
学童クラブの職員に促され、子ども達はハロウィンのお決まりのセリフを言う。
虹太と晴久はアイコンタクトを取ってから、困ったような表情を作った。
「実は、みんなのために用意してたお菓子が、俺たちの友達に食べられちゃったんだ!」
「「「「「えー!!」」」」」
「その友達は、そのまま逃げてしまって……」
「だからみんな、捕まえるの手伝ってくれないかな? その友達を捕まえれば、ちゃんとお菓子も戻ってくるよ☆」
「みなさんの力を借りたいんです。お願い、できますか……?」
「「「「「うん!!」」」」」
子ども達は、大きく頷いた。
「よかった~! 逃げた友達っていうのは、こういうカボチャなんだ!」
虹太はそう言うと、ちょうど子どもが両手で持てるくらいの大きさで作られた、ジャックオーランタンを一つ見せる。
晴久が手作りしたものだ。
二人が子ども達のために企画したイベントとは、この“ジャックオーランタン探しゲーム”だった。
「この庭のどこかにいるので、見つけたらここまで連れてきてあげてください」
「じゃあみんな、よろしくね~☆」
「「「「「おー!!」」」」」
虹太の言葉を合図に、子ども達は庭中に散らばっていった。
「あ、あった!」
「おれも見つけた!」
「こんなにはやく見つけるなんて、すごいですね」
(みなさん、楽しんでくれてるみたいでよかったです……)
晴久は、ジャックオーランタンを見つけた子ども達が戻ってくる場所で待つ役目だ。
年上の子も楽しめるか不安に思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。
宝探しの要領なので、皆とても楽しんでいるように見える。
「ぜんぜん見つからないよー……」
「こっちの方にあるかもよ! 一緒に探そう☆」
対して虹太は、見つけられない子をさりげなく誘導し、見つけやすくする役目を負っていた。
屋敷の庭に詳しい大和や美海も、見つからない子の手助けをしている。
そのおかげか、二十分も経つと全ての子ども達はジャックオーランタンを探し出し、晴久の元に集まることができたのだった。
「みんな、見つけてくれてありがとう~!」
「じゃあ、蓋を開けてみてください」
晴久の言葉をきっかけに、子ども達はジャックオーランタンの蓋を開ける。
「すっごーい!」
「おかしが入ってる!」
虹太と晴久は、中身をくり抜いたカボチャにお菓子を入れていた。
「みんな、無事にお菓子が戻ってきてよかったね☆」
「よかったらみなさん、お菓子と一緒にその子たちも貰ってあげてくれませんか? これから他の場所にもお菓子を貰いに行くなら、入れ物として役に立つと思いますよ」
「え、いいの!?」
「ほしいほしい!」
ジャックオーランタンには、丁寧に持ち手までついている。
二人ははじめから、入れ物ごと子ども達にプレゼントするつもりだったのだ。
そのために、カボチャは乾燥させてある。
半永久的に、腐らない器になっているのだ。
「じゃあみんな、素敵なプレゼントをくれた魔法使いさんと黒猫さんに、お礼を言いましょうねー! せーの!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
職員の言葉をきっかけに、子ども達は虹太と晴久にお礼を言う。
「こっちこそ、とっても楽しかったよ! ありがとう~☆」
「ハロウィン、楽しんでくださいね」
「おにいちゃんたち、ありがとう!」
「カボチャ、大事にするね!」
子ども達はにこにこの笑顔のまま、次の場所へと移動していったのだった。
「いやー、楽しかったね!」
「き、緊張しました……」
子ども達の姿が見えなくなると、二人は正反対の感想を漏らした。
「え、ハルくん緊張してたの? 全然そんな風には見えなかったけどなぁ~」
「ずっと、心臓がドキドキしてました……! ぼ、僕、普通に話せてましたか……?」
「うん! バッチリだったよ☆」
「そ、それならよかったです……」
晴久は、ほっとしたようにため息を吐いた。
「……ねぇねぇ、ハルくんは楽しかった? それとも、緊張しただけで楽しくなかった?」
虹太からの唐突な質問に、晴久は一瞬言葉に詰まってしまう。
そんな彼の脳裏に浮かんだのは、先程までの子ども達の笑顔だった。
「……楽しかったです。すごく」
そう言って彼が浮かべた笑顔は、子ども達に負けないくらい輝いていた。
「……そっか! ならよかった!」
晴久の言葉に、虹太も笑顔を返す。
「さーってと! 今日の仕事も終わったし、夜のハロウィンパーティーの準備でもしよっか♪」
「そうですね。今日は、カボチャをメインにした料理を作ろうと思ってるんです」
「わ~、楽しみ! ハルくんが作った料理なら、絶対に美味しいもんね☆ 俺は他のみんなに、用意した仮装グッズ配りに行こーっと!」
「ほ、本当に全員に仮装してもらうんですか……?」
「もちろんだよ! ハルくんと一緒に、みんなに似合いそうなやつ選んだんだからさ!」
「理玖さんや柊平さんは、嫌がりそうな気もしますが……」
「二人には特にかっこいいの選んだから大丈夫でしょ! 嫌だって言われたら、鶴の一声をお願いすればいいもんね~♪」
「……そうですね。透花さんにお願いされたら、二人とも断らないでしょうし……」
「でしょ!? じゃあ早速、屋敷の中に戻ろー!」
虹太は晴久に向けてウインクを一つすると、歩き出した。
「あ、はい……」
虹太の後を、晴久も追う。
二人の間を、涼やかな風が吹き抜ける。
その風からは、冬の香りがした――――――――――。




