第四十一話(透花編)あ、セーブポイントあった。
別の休日、透花は湊人と一緒に彼の部屋でゲームをしていた。
彼が得意とするような、戦略性が高いものではない。
出てきた敵をひたすら銃で撃ち生き残るという、サバイバルホラーゲームだ。
コントローラーではなく銃の模型を使う、最近人気のタイトルなのだ。
「……また死んじゃった」
「湊人くん! 一人にしないでー! 一人になると集中攻撃されて……」
二人の目の前には、“GAME OVER”の文字が映し出される。
さっきから、ずっとこの調子だ。
協力プレイでクリアを目指しているのだが、湊人はどうやらこの手のゲームは得意ではないらしい。
「……クリアできる気がしないよ」
「……正直、私も。少し休憩してから、またやろうか」
「そうだね」
「飲み物でも持ってくるよ。何がいい?」
「じゃあ、コーヒーをお願いしようかな。砂糖とミルクは……」
「わかっているよ。いつも通り、ブラックだよね。淹れてくるから、ちょっと待っていて」
透花は湊人の返事を聞くと、立ち上がった。
そして部屋を出ると、コーヒーを淹れるためにキッチンへと下りていくのだった。
しばらくすると、透花がコーヒーを淹れたカップを持って戻ってきた。
「お待たせー」
「湊人さん、お邪魔します!」
後ろには、颯を連れて。
「キッチンで会ってこのゲームの話をしたら、ぜひやってみたいって。だから、助っ人として来てもらっちゃった」
「うまくできるかわからないですけど! このゲーム、最近学校でも話題になってるんですよ! だから俺、一度やってみたいと思ってて!」
「僕は少し休憩するから、透花さんと颯くんでやっていいよ。どこにアイテムがあるかとか、どっちの方向に進めばいいかとかの指示出しくらいはするから」
「はい! 透花さん、よろしくお願いします!」
「うん。こちらこそよろしくねー」
二人は銃を握ると、画面に視線を向けた。
「……颯くん、すごくうまいね」
「そうですか?」
「うん。あ、左にある箱を壊すと回復アイテムが手に入るよ」
「了解です!」
湊人が言う通り、颯の腕前は大したものだった。
軽やかに敵を避け、次々に仕留めていく。
その動きには、一切無駄がない。
「……透花さん危ない!」
「ありがとうー、颯くん」
「いえいえ! 俺が前を守るので、透花さんは後ろをお願いします!」
「任せて!」
透花との息もぴったりのようだ。
二人は湊人の案内を聞きながら敵を倒し、どんどん先へ進んでいった。
「……そろそろ、疲れてきたね」
「……実は俺もです」
二時間後、二人はいまだに銃を撃ち続けていた。
ゲームのクリアには、まだまだ時間がかかりそうだ。
「次のセーブポイントまで行ったら終わりにしようか。別に、今日中にクリアしなくてもいいしね」
「そうですね! ……って、すみません湊人さん! 俺がずっとやってたせいで、全然プレイできなかったですよね……」
「私も夢中になっちゃって、途中で交代するの忘れていた……。ごめんね、湊人くん」
二人は申し訳なさそうに言う。
「気にしなくて大丈夫だよ。二人に攻略のヒントを伝えることで、僕もちゃんと参加できたしね。それに、やっぱり僕には実践は向いてないみたいだし。自分でプレイするより、指示出しの方が楽しかったくらいだよ」
「そうですか……?」
「それならいいのだけれど……」
「それに、とてもじゃないけど僕には君たちみたいなプレイは無理だ。次にプレイする時も、二人の力を借りてもいいかな? 僕だけの力じゃ、到底クリアできそうにないからね」
「はい! 喜んで!」
「もちろん! あ、セーブポイントあった」
こうして三人は、この日のゲームを終了したのだった。
「それにしても颯くん、素晴らしい身のこなしだったね。君があんなにゲームがうまいとは思ってなかったから、驚いたよ」
ゲームを終えた後、湊人が颯に話しかける。
「俺もびっくりですよ! なんかこう、銃が手にしっくりくるっていうか! 普通のゲームはそんなにうまくないんですけどね!」
颯のその言葉を聞き、透花は一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた。
しかし本当に一瞬だったので誰にも見られることはなく、湊人と颯の目に入った透花はいつもの笑顔だった。
「うん、颯くん、本当にすごかったよ。……それにしても、随分ゲームしたよね。もう夕飯の時間じゃない?」
「そうですね! 体は動かしてないのに、お腹空いたな……」
「今日の夕飯はなんだろうね?」
「今日は秋の味覚尽くしだってハルくんが言っていたよ。秋刀魚の塩焼きに、松茸ご飯だって!」
「豪華ですね!」
「おいしそうだね。じゃあ、そろそろダイニングに行こうか」
三人は、湊人の部屋を出てダイニングへと向かう。
部屋を出る瞬間、透花は振り返って先程まで自分と颯が握っていた銃の模型を見た。
その瞳は、やはりどこか悲しげなものだった――――――――――。




