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clair fleur  作者: 白鈴 すい
第二章~紹介編~
42/70

第四十一話(透花編)あ、セーブポイントあった。

 別の休日、透花は湊人と一緒に彼の部屋でゲームをしていた。

 彼が得意とするような、戦略性が高いものではない。

 出てきた敵をひたすら銃で撃ち生き残るという、サバイバルホラーゲームだ。

 コントローラーではなく銃の模型を使う、最近人気のタイトルなのだ。


「……また死んじゃった」

「湊人くん! 一人にしないでー! 一人になると集中攻撃されて……」


 二人の目の前には、“GAME OVER”の文字が映し出される。

 さっきから、ずっとこの調子だ。

 協力プレイでクリアを目指しているのだが、湊人はどうやらこの手のゲームは得意ではないらしい。


「……クリアできる気がしないよ」

「……正直、私も。少し休憩してから、またやろうか」

「そうだね」

「飲み物でも持ってくるよ。何がいい?」

「じゃあ、コーヒーをお願いしようかな。砂糖とミルクは……」

「わかっているよ。いつも通り、ブラックだよね。淹れてくるから、ちょっと待っていて」


 透花は湊人の返事を聞くと、立ち上がった。

 そして部屋を出ると、コーヒーを淹れるためにキッチンへと下りていくのだった。






 しばらくすると、透花がコーヒーを淹れたカップを持って戻ってきた。


「お待たせー」

「湊人さん、お邪魔します!」


 後ろには、颯を連れて。


「キッチンで会ってこのゲームの話をしたら、ぜひやってみたいって。だから、助っ人として来てもらっちゃった」

「うまくできるかわからないですけど! このゲーム、最近学校でも話題になってるんですよ! だから俺、一度やってみたいと思ってて!」

「僕は少し休憩するから、透花さんと颯くんでやっていいよ。どこにアイテムがあるかとか、どっちの方向に進めばいいかとかの指示出しくらいはするから」

「はい! 透花さん、よろしくお願いします!」

「うん。こちらこそよろしくねー」


 二人は銃を握ると、画面に視線を向けた。






「……颯くん、すごくうまいね」

「そうですか?」

「うん。あ、左にある箱を壊すと回復アイテムが手に入るよ」

「了解です!」


 湊人が言う通り、颯の腕前は大したものだった。

 軽やかに敵を避け、次々に仕留めていく。

 その動きには、一切無駄がない。


「……透花さん危ない!」

「ありがとうー、颯くん」

「いえいえ! 俺が前を守るので、透花さんは後ろをお願いします!」

「任せて!」


 透花との息もぴったりのようだ。

 二人は湊人の案内を聞きながら敵を倒し、どんどん先へ進んでいった。






「……そろそろ、疲れてきたね」

「……実は俺もです」


 二時間後、二人はいまだに銃を撃ち続けていた。

 ゲームのクリアには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「次のセーブポイントまで行ったら終わりにしようか。別に、今日中にクリアしなくてもいいしね」

「そうですね! ……って、すみません湊人さん! 俺がずっとやってたせいで、全然プレイできなかったですよね……」

「私も夢中になっちゃって、途中で交代するの忘れていた……。ごめんね、湊人くん」


 二人は申し訳なさそうに言う。


「気にしなくて大丈夫だよ。二人に攻略のヒントを伝えることで、僕もちゃんと参加できたしね。それに、やっぱり僕には実践は向いてないみたいだし。自分でプレイするより、指示出しの方が楽しかったくらいだよ」

「そうですか……?」

「それならいいのだけれど……」

「それに、とてもじゃないけど僕には君たちみたいなプレイは無理だ。次にプレイする時も、二人の力を借りてもいいかな? 僕だけの力じゃ、到底クリアできそうにないからね」

「はい! 喜んで!」

「もちろん! あ、セーブポイントあった」


 こうして三人は、この日のゲームを終了したのだった。






「それにしても颯くん、素晴らしい身のこなしだったね。君があんなにゲームがうまいとは思ってなかったから、驚いたよ」


 ゲームを終えた後、湊人が颯に話しかける。


「俺もびっくりですよ! なんかこう、銃が手にしっくりくるっていうか! 普通のゲームはそんなにうまくないんですけどね!」


 颯のその言葉を聞き、透花は一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた。

 しかし本当に一瞬だったので誰にも見られることはなく、湊人と颯の目に入った透花はいつもの笑顔だった。


「うん、颯くん、本当にすごかったよ。……それにしても、随分ゲームしたよね。もう夕飯の時間じゃない?」

「そうですね! 体は動かしてないのに、お腹空いたな……」

「今日の夕飯はなんだろうね?」

「今日は秋の味覚尽くしだってハルくんが言っていたよ。秋刀魚の塩焼きに、松茸ご飯だって!」

「豪華ですね!」

「おいしそうだね。じゃあ、そろそろダイニングに行こうか」


 三人は、湊人の部屋を出てダイニングへと向かう。

 部屋を出る瞬間、透花は振り返って先程まで自分と颯が握っていた銃の模型を見た。

 その瞳は、やはりどこか悲しげなものだった――――――――――。

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