肆:母の夏
私の赤ちゃんは、産んだあと食べられました。
いえ、産んだあと、引き離され、あと一カ月で食べられるのです。
私は、何も出来ませんでした。
私は、自分が、あなたたち以上に自分が好きで、あなたたちを見捨てしまったのです。
真っ直ぐな瞳を見つめる筈の目が、抱っこするはずの腕が、掌を握る手が、一緒に歩く筈の足が、全てあなたたちより恋しかったのです。
ごめんなさい。
こんなお母さんでごめんなさい。
あなたたちの人生をめちゃくちゃにしたのは私たち、両親です。
恨んで、憎んでいるでしょうね。
できることなら時間を戻して、四人全員で、生きたいです。
今まで生きてくれてありがとう。
私はあなたたちと父を失い、後悔して、あなたたちの事を後悔しています。
今まで生きてくれてごめんなさい。
私にはもう何も出来ません。
母親失格です。
昔も今も、一カ月後も、自分のことしか、考えていません。
ごめんなさい、けど生きてくれてありがとう。
こんな私をお母さんにしてくれてありがとう。
そして、さようなら。
私たちの子供たち。
愛していました。
今もです。
これからも、ずっと、これからずっと、愛しています。
私のために、食べられてくれて、ありがとう。