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缶詰めの夏  作者:
8/16

肆:母の夏

 


 私の赤ちゃんは、産んだあと食べられました。



 いえ、産んだあと、引き離され、あと一カ月で食べられるのです。


 私は、何も出来ませんでした。

 私は、自分が、あなたたち以上に自分が好きで、あなたたちを見捨てしまったのです。


 真っ直ぐな瞳を見つめる筈の目が、抱っこするはずの腕が、掌を握る手が、一緒に歩く筈の足が、全てあなたたちより恋しかったのです。


 ごめんなさい。

 こんなお母さんでごめんなさい。 


 あなたたちの人生をめちゃくちゃにしたのは私たち、両親です。

 恨んで、憎んでいるでしょうね。

 できることなら時間を戻して、四人全員で、生きたいです。


 今まで生きてくれてありがとう。

 私はあなたたちと父を失い、後悔して、あなたたちの事を後悔しています。


 今まで生きてくれてごめんなさい。

 私にはもう何も出来ません。

 母親失格です。

 昔も今も、一カ月後も、自分のことしか、考えていません。


 ごめんなさい、けど生きてくれてありがとう。

 こんな私をお母さんにしてくれてありがとう。


 そして、さようなら。

 私たちの子供たち。


 愛していました。

 今もです。

 これからも、ずっと、これからずっと、愛しています。


 私のために、食べられてくれて、ありがとう。

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