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缶詰めの夏  作者:
16/16

エピローグ 夏は終わる

 


 こんにちは。

 今日はお天気もよくて、洗濯物がよく乾きますね。


 ......あれ。


 あなた、見ない顔です。

 もしかして、外の人ですか。

 ええ。

 村の人じゃないんですか。


 ............へぇ、よくここまでこれましたね。

 わたくしの家の前にきた、外の人はあなたしか見たことないですよ。

 おめでとうございます。


 ようこそ、僕らの村へ。

 僕らの星の下へ。

 僕らの天国へ。

 僕らだけの世界で。

 歓迎します。

 もっとも、ここには、あなたを歓迎する人はわたくし以外にはいませんけどね。


 皆さんはあなたの敵。

 と、でも言えばいいのでしょうか。

 いえ、まぁ、知っていると思いますがね。


 もしよかったらわたくしの家でお茶しませんか。

 外では、危険でしょう。

 それに、暑いですし。

 暑くて、バターのように溶けてしまいますよ?。

 それはそれでまたありかもしれませんがね。

 あら、軽口ですよ。

 なぜ顔をしかめるのですか、おかしい人ですね。


 で。


 するんですか。

 しないんですか。

 はっきりしてください、わたくしの命、信頼関係を壊すおつもりですか。

 はっきりしてください。

 わたくしは、曖昧な解答は嫌いなのです。

 わたくしは、肯定するのか拒絶するかを聞いているだけです。

 首を傾げてないではっきりしてください。

 わたくしは首を傾げる行為がムカつくのです。


 ......へぇ、そうですか。

 するんですね。

 なかなか度胸あるんですね。


 まぁ、いいです。

 おあがってください。

 狭い、ですが。

 かといって、鶏小屋よりかは広いと思いますよ。

 あなたの知っている鶏小屋の大きさは存じませんがね。


 ここの、部屋でいいですか?。

 あいにく、話せるような場所がここにしかなくて。

 すいません。

 さっき打ち水したから涼しいはずですから。


 ......そうですか、気にしませんか。

 変わったお方なんですね。

 ああ、窓はあいていますが、外からは見えませんよ。

 わたくしの部屋を覗こうとする愚か者には天罰がくだる、は冗談で、死角になっていますから平気です。

 それに、確か、今は投票する日なので、あんまりここら辺には人は来ないですよ。

 運がいいんですね。

 もっとも、ここまでくるからには苦労されたんでしょうがね。


 あ、そうそう。


 冷たいお茶とあったかいお茶、どちらがよろしいですか?。

 わたくしとしては、冷たいお茶のほうがありがたいのでございますが。

 あなたもわたくしに聞きたいことがあるんでしょ、わたくしもあなたに聞きたいことがあるんですよ。

 だから、冷たいお茶の方がいいんですがね。

 あなたもお速くお聞きになりたいのでしょ?。


 では、少々お待ちください。

 すぐお待ちしますから。

 それまでゆっくりと、くつろいでください。

 ただ、楽にしてはいけませんよ。

 あなたは、気づかれたら死ぬんですから、食べられしまいますから気をつけて下さいね。

 脅しとかではないですから、怯えていないで堂々してください。

 皆様は怖がりですから、自分より強い人は襲いませんよ。

 といってもわたくしの家ですから、大丈夫かと思いますがね。


 お持ちしました。

 まだ死んでいなくて、良かったのですね。

 お掃除が大変ですから、生きていて良かったです。

 この前は大変でしたからね。

 と、言っても、この部屋ではないですから安心してください。

 幽霊とか信じなければ見えませんから。

 人間も信じなければ見えませんからね。

 安心して下さい。

 あなたのことなんか、これから同じになるか、ならないかの目でしか見てませんよ。

 ......冗談です、簡単に信じる方なんですね。


 さて。

 何をお聞きになりたいのでしょうか。


 え? その前に、わたくしの年齢ですか。

 確か......十四歳です、千一番目の子供らしいですよ。

 ああ、××番目の子供というのは、外の世界でいう主席番号みたいなものですね。

 この村の人は全て持ってますよ。

 あなたは数字を持ってますか?。

 ............。

 ............。

 難しい話をなさるのですね、よくわかりません。

 わたしくにはわかりません。

 わたしく、あいにく、外の世界の話はよくわからないのです。


 で、なんですか聞きたいことは。

 わたしくの年齢など、好奇心でしょう?。

 本心を速く言ったほうがよろしいと思いますよ、はっきり言って危ない状況なのです。

 確かに今は投票する日ですが、代理品を探しにくるかもしれませんね。

 村の人じゃない人なんて、ありがたい食料ですからね。


 あ、言っておきますがわたしくは食べたことはありませんよ。

 あれ、まずそうではないですか。

 わたしく、身体が弱いので、食べさせて貰えないようにしていたんです。

 わたしく、あなたが死んでも食べませんよ。

 本当ですから。

 いや、まぁ、一度だけ食べた気もしますがね。

 忘れました。

 忘れました。

 忘れようとしています。

 忘れたほうが、バカに近づけますからね。

 この村で、バカになれたら、食べられずに、生きられるんです。

 もっと、バカになりますから。

 このことに気がつかないと、バカは食べられます。

 わたしくはバカですから。


 ......。

 え? わたくしに聞きたいことですか。

 ああ、忘れてました。

 忘れてました。

 わざ、わざ。

 ではありませんよ。

 本当ですから。

 で、なんですか。


 ............。

 ......。

 真実、ですか。

 この村の、ですか。

 それとも、この村の前の前、ですか。

 それとも、どちらも、ですか。

 全て、ですか。

 強欲、なんですね。

 ......この話は、暴食になるんです。

 ちょっと、ここまで来た、わからないまま、来た、と思いますが、話しても平気、ですか。

 あなた、見ないと思いますよ。

 わからないまま、終わると思いますよ。

 それでもいいのなら、お話します。

 それでも良かったなら、お話します。

 わたくしはバカですから。

 何でも話しますよ。


 まず、そうですね。

 この村が出来る前のお話をしましょうか。


 缶詰め、って知ってますか。

 閉じ込めて、長時間、腐らないように、食べ物なんですが、もちろん知ってますよね。

 それを作っている工場がありました。

 人肉の、ですがね。


 最初は商売と、食料不足だったらしいですよ。

 ただ。

 それが、だんだんと、単なる食欲のためになっていったのです。

 美味しい、という、ことに気づいた人が数人いたそうです。

 そして、最終的には食欲のためという人しか残りませんでした。

 他の人は食べられたそうです。

 革命、でもおこしたんでしょうかね、わたくしはバカだからわかりませんが。


 で、工場が作られた何十年後に工場は潰れました。

 警察が動いたんです。

 そこには数人の大人と約何百人の子供も何個も缶詰めがありました。

 工場で働いた人は捕まり、処刑されました。

 まだ生きている人もいました。


 工場で食べられるそうになった子供たちは施設に保護されました。

 どの子供たちも、周りから見たら、不気味でしたがなかったそうです。

 可愛いのですが、死んでいますからね、心が。

 あいにく、工場では歪んだ教育をされていたので、勉強やら相手の言葉はわかったそうですよ。

 なんで教育したが、わかりませんがね。


 ほとんどの子供たちは施設から、逃げました。

 怖かったでしょう? 、そんな目で見られたら。

 慈愛に同情に恐怖。

 食べ物にしか見られなかった自分にそんな目で見られたら怖いですからね、違和感にも感じるでしょう。


 ここは自分の場所はここではないってね。


 あなたもそう思いませんか?。

 思いませんよね。

 わかりませんが。


 そして。

 逃げました子供たちはどこに行ったと思いますか?。


 野垂れ死んだ子供もいます。

 自殺した子供もいます。

 社会人になった子供もいます。

 親の所に帰った子供もいます。

 新しい親に引き取って貰った子供もいます。

 食べられた子供もいます。

 事故死した子供もいます。

 子供まま大人になり、人を殺す職業に就いた子供もいます。

 犯された子供もいます。

 犯す子供もいます。

 死んだ子供はたくさんいます。

 感染した子供もいます。

 感染をばらまいた子供もいます。

 復讐した子供もいます。

 子を作った子供もいます。


 まぁ、幸せに生きている子供たちもいますがね。

 あと、また、工場を作り直した子供もいます。


 その工場は、だんだんと大きな規模になりました。

 子供たちが集まってきたのです。


 そして、多数の誘拐事件、いえ、監禁といったほうがいいですがね?。

 また、起きたんですよ。


 どうして工場をまたですか。

 さぁ? わたくしにはわかりません。

 理由なんて、その人たちにしかわかりませんよ。


 そして、工場は、まだあります。


 あなたもここにくる途中見たでしょ?。

 大きな鉄の建物、煙がたっている所です。


 意外と気づかれないものですね、まぁいろんなお偉い方々に助けて貰っているだけかもしれませんが。


 ......大丈夫ですか?。

 まだ、続けますか?。

 ここから、あんまり、したくない、話ですが。


 そうですか。

 聞きますか。

 なら、続けますね。


 ここの村の風習を知っていますか?。

 ええ、ルールみたいなものです。

 いらない子は工場に行こう。

 女は七人子供を生んだら、工場に行こう。

 男は役立たずになったら、工場に行こう。

 死にたくなったら工場に行こう。

 死んだら缶詰めになろう。

 二カ月に一度、投票するんです。


 誰を工場に送るか、話し合って、投票するんです。

 頭がいい人はすぐに食べられます。

 頭が普通の人はすぐに食べられます。

 頭が悪い人は食べられません。

 質が悪いですからね。


 小学校の頃には、解剖を見せられました。

 これも投票で、同級生が缶詰めになる所をずっと見てました。


 そもそも、この村の作られた意味はわかりますか?。

 ええ。

 子供たちを、作るためです。

 缶詰めを、作るためです。


 工場にも閉じ込めている子供たちを見たら、自分とかされてしまうらしいですよ。

 よく、知りませんがね。


 さて。

 まだ、聞きたいこと、ありますか?。


 わたくしに、こんなこと言わせて何をするつもりですか。

 わたくし。

 あなたがしようとしていること、知りたいです。


 教えてもらえませんか。


 ......みんなに、このことを伝える?。


 この村のことですか。

 工場のことですか。

 わたくしのことですか。


 それは無理だと、思いますよ。

 実はここ、出入りが甘いのではなく、入り口が甘いだけです。

 もう、あなたがこの村に来ていることはみんな知っていると思いますよ。


 なぜ、言わなかったと思いますか?。

 わたくしは、あなたを逃がすことが出来ます。

 けどわたくしは処刑され、あなたは真実を知ったことにより死ぬと思いますよ。


 けど、もう一つ、策があります。

 あなたがこの村に住むことです。

 わたくしと住むことです。


 わたくしは、あなたをまもれます。

 わたくしはあなたを守る義務があります。

 わたくしはこの村であなたが住むと言ったら、みんな、あなたのこと、投票しませんよ。


 どうしますか?。

 食べられに外の世界に行くか。

 それとも、わたくしと一緒に住み、食べられないで生きるか。

 まだ部屋もありますし。


 さぁ、どうしますか?。

 わたくしには曖昧な答えは嫌いなのです。

 はやく、答えてください。


 食べられたいんですか?。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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