第七話 俺の神絵師が死んじゃった!!!
“Gott ist tot.”
――神は死んだ。
ニーチェ『悦ばしき知識』第125節
*
金ダライが落ちてきて、銀髪はうつ伏せに倒れてそのまま動かなくなった。
「え……」
突然の出来事に俺は、茫然と銀髪を見つめた。俺と違って、復活しない。
「え? ちょっと待てよ……コイツ……ひょっとして、死んでる――?」
「死んでます。即死の金ダライの威力には何人たりとも逆らうことは出来ません」
「えっ……ええっ!? 待って待って待って!! 俺がニケルに転生するのに、二次創作描いてもらう予定どうなるんだよ!?」
「無理です。そもそも、二次創作は祈りの一つです。
ですが、祈りは神にはなれない――。
公式を越えた瞬間、それはもう信仰ではなく、暴挙、暴走です。
二次創作こそ正義。
推し以外は敵。
単一作家をすぐ神扱い。
それ、滑稽ですよ。外から見れば、痛い話です。
これだからオタクは――って、笑われちゃいます」
輪廻は鼻白んで、俺を見つめた。
「だって、俺好みの、きゃわわなアーシュだったんだから、仕方ないだろ――!!」
「あー。その、愛情や熱量。あなたの愛情は本物です。
ですが、強すぎる愛は、簡単に毒に変わる。
ヒロインが気に入らない。
別カプが許せない。
逆カプが地雷。
同担が敵。
気持ちは分かります。
ですが、それを世界に投げた瞬間、
それは“感想”ではなく“攻撃”になる。
あなたの萎えは、誰かの萌え。
寛容さを喪失した瞬間、二次創作は息が詰まる敵だらけの地獄に変容します。
自分で自分の殻に閉じ籠もっているだけなのに、それを、他者から苦しめられているかのように嘆くのは、被害者意識が強すぎます」
――え? コイツ、俺のお気持ちポスト全部見てたのか!? 確かに嫌いな展開あると、いちいちポストしてたけど……仕方ないじゃん! 俺は、俺の心を守りたかっただけなんだっ!!!
「うっ……リョナやモブレは――生理的に無理――」
「落ち着いてください。
二次創作は、全部、偽物です。
美しい偽物。
愛に満ちた偽物。
ですが――偽物です。
公式という幹があってこそ咲く花。
根を名乗った瞬間、腐って枯れます。
脳を一旦休ませれば、それに気がつきます」
「なんか、お前――オタクをぶっ叩く気なのか!?」
「そんなことはありません。
そもそも――ニケルとアーシュが、くっつくわけないじゃないですか?」
「テメーは、俺の神や心を殺して、楽しいのかよおおおっ!?」
俺は涙ぐみながら叫んだ。
俺、輪廻嫌いだわ!
「はぁ、厄介オタクだなぁ。地獄のコンプライアンスに抵触したら、ギルティするのは私の役目です。
大体、一次創作の世界で、別作品のキャラをヘイトする事ってありますか? ないでしょ?
二次創作も、作家が違えば、それはもう別作品なんですよ? 互いにリスペクトし合うのが、礼儀作法なんです。
人の庭を荒らす暇があるなら、自分の庭を耕しなさい。
他人の創作を殴る時間があるなら、自分の創作を書きなさい。
それが出来ないから、神を作り、神を殺し、また神を作る。
――忙しいですね、あなた」
「うわ。ムカつくー! 5ちゃんに書き込んでやりたい!!!」
水谷は、暗くせせこましい発言をした――。
おいいいっ!!! 勝手に三人称混ぜンなよ!!!
「第三者から、自分を冷静に言語化されて腹が立つのは仕方がないです。
でも、私は間違ったことは言ってませんよ? 私の意見が嫌いなのも、結構です。あなたの心は自由ですから。
でも、憎しみや呪いに時間を費やすのって、エネルギーの無駄ですよ? ネットから離れ、散歩でもして、気分転換したらどうです?
大体、頭とタイパの悪いオタクが、他者の創作妨害してくるから、作家は掲示板見ないのが一番です」
「言い方ァ!!! いちいち正論を刃物みたいに振り回すなァ!!!
ああああぁっ!!!
こんなことなら、銀髪と、萌えバナしてないで、一行でも良いから、小説書かせて、二次創作転生ルートを確定させれば良かった――!!!」
「無駄話ばかりの作家は二流――いや、五流ですから、仕方ないです。
創作を主軸にしない作家を崇拝したのが間違いでしたね。
ダラダラ萌え語り始めるのって、読者に『書いて書いてー♪』って、言われたいだけで、本当に萌えを量産する作家は、無言でずっと創作しますから。
銀髪なんか、対した活動してないの、Xのフォロワー数見れば一目瞭然でしょ?」
「ぐぬぬっ!!!」
俺は泣きながら、神の遺した画像データをそっとスマホに移し、待ち受け画面に設定し、キスした。
――うう……。尊ぇ……。
このアーシュと出会いたかったよー!
うわ~ん!
かわいいよー!
後、地獄だけど、Wi-Fiあってホント良かった――!
次回
第八話 これから、どうなるの!?




