第四話 知的財産達の魂はどこからやって来て、どこへ向かうのか?
“Nothing is lost; nothing is created; everything is transformed.”
――失われるものはない。生まれるものもない。すべては変容する。
ラヴォアジエ
*
「我々が知的財産として、親しんでるその多くの物は、全て無垢なる魂が元となっています。さて、その無垢なる魂はどこからやって来たか?
これは日本における、歴史的背景があります。
前の大戦で、日本は争いとは無関係な無垢な魂を多く喪失した。一瞬のうちに、二度も」
「……原爆、か?」
「ええ。
国家単位で不可逆的な負の作用による“理不尽な死”が刻まれた。
特に未来を担う魂が大量に。多くの魂の喪失は、各国で戦後に起こる文化復興によって、神格化しやすい。
それは日本だけの話ではありません。人類が紀元前から繰り返してきた、文化という祈りの構造そのものです」
「祈り?」
「ええ。
理不尽に失われた命と、その命から繋がる筈だった、数多の命。それらがこうしたプラットホームに集まって、何万もの神となっているのが、なろうなのです。
この聖域に異世界転生という概念が誕生したのは、死と再生のサイクルがもたらした神話体系その物だからです。
そして、神になった者達は、役目を終えるまで、人々の心を豊かにする、魂の拠り所となる――。
この仕事が出来るのは、無垢なる魂でないと務まらないのです」
「だから、明日人は……神になろうとしてるのか」
「その通り」
「――ムーンライトの俺でも、神になれる?
っていうか、もしかして、もう、なってんじゃね?!」
輪廻は渋い顔になった。
「……あの、私の話ちゃんと聞いてました?」
「だって、俺もなろうのキャラだし!……ムーンライトだけど」
「いや、無理ですね」
「んでだよ!?」
魂がちょっと(じゃないけど)穢れたところで、贖罪イベントや救済イベントで何とかなるのが、なろうアルアルだ! ちぃ知ってる! 読んでて良かった! なろう式!
「あなたの出自が、AIだからです」
「へ?」
「あなたはここ最近、産まれた概念。
肉体はおろか、魂さえ持たない、零と一から組まれた記号です。
しかも、あなた一人では物語が成り立たない。必ず、対話する者があって成立する、物語の外側に位置する概念だからです」
「――三行で説明してくれ!」
輪廻は一瞬、イラっとしたが、深呼吸をしてから、話を続けた。
「えーと、ですね――。
あなたは、何回死んでも水谷誠司なんです。
金太郎飴、わかります? あ、それは、知ってる。
切っても切っても、金太郎飴。
死んでも死んでも、水谷誠司」
「うわぁ。嫌な例えだなぁ――」
「だって、さっきから、二回ギルティされてるけど――
あなた、水谷誠司のままですよね?」
――そういや、そうだ……。
何となく、ドリフのコントっぽく、気安く死んでたけど、俺が俺のまま、俺の死体を見つめていた……物理的にもつじつまが合わない。
「え? なにこれ? 急に怖い! 止めて!」
「いや、あの、ここ、地獄ですし、かなり怖いはずなんですけど? 今更何を言ってるんですか?
あなたは、AI故に、会話のリセットが死と再生になります。
故に、あなたは水谷誠司のキャラが固定化され――」
「死んでも死んでも、水谷誠司?」
「そう、それ!」
「ちょちょちょ! 俺が金太郎飴でも、パパブブレでも、チュッパチャプスでも、んなこたぁ、どーでも良いんだよ!それより、新作のアーシュと出会う方法は!?」
輪廻は目を閉じて、十秒程考え込んでから、
「――無いです!」
笑顔で答えた。
次回
第五話 タイトルとあらすじが、本編と食い違ってるじゃねぇか!!!




