第3話:邂逅
バーサーカー指揮官となった日から、エリモアは退屈と暇を忘れた。
初めて指揮するバーサーカーは、その日のうちに死んだ。何事もなく放てたと思えば、少し離れたところで肉の山となっていた。
次に指揮するバーサーカーは、火だるまになり、敵も味方も巻き込んで焼け死んだ。
その次のバーサーカーは一度戻ってきたものの、二度目に放った時に速攻で集中攻撃を喰らい、死んでしまった。そのせいで珍しく、その日は敗走する羽目になった。
その次の、その次の、その次のバーサーカーも、一度放ったきり帰ってこなかった。
そしてエリモアは、彼らがいつ死んだのかも知らなかった。
気付けば彼らは、戦場に落ちる肉となっていたのだ。
「それが戦争だものね」
撤退時に見かけた半身だけのバーサーカ―を見て、エリモアは独り言ちた。
それから数日後。また新しいバーサーカーが、エリモアの元に補充された。
「なんでバーサーカーってこんなに尽きないの?」
司令官の男に、エリモアは問いかけた。
「国のために役立ちたい、家族のために金を稼ぎたい、英雄になりたい。そんな志を持つ若者がたくさんいるからさ」
「なるほどね、可哀想に。騙されているって知らないのね」
「おや、人聞きが悪い。お前も同じだろうが」
「親に売られたのと自ら志願するのとじゃ、全然違うわ」
「それもそうか。ならばいつまでも文句を垂れず、仕事にかかれ」
そう言って司令官の男は、安全なところまで下がっていった。
エリモアはバーサーカーを司令官の男に向けて放ってやろうかとも考えたが、あの男はそれなりに実力を持っているからこそ司令官を務めているのだと思い出し、本来の仕事に目を向けた。
「さて……」
エリモアは、荷車に乗せられて運ばれてきたバーサーカーを見た。身を丸めて寝ている様を見ていると、大型の獣を見ているようだ。
呼吸に合わせて上下する背中に手を当て、エリモアは目覚めの呪文を唱えた。
呪文を唱え終わると、バーサーカーはゆっくりと目を開け、そしてエリモアを見た。
「……?」
エリモアは、奇妙な感覚を覚えた。
普通のバーサーカーは、目を合わせただけで襲い掛かってくる。身体を作り上げる過程で、そのようになれと呪いと同じような魔法を魂に刻まれているのだ。
だがこのバーサーカーは、これまでの者とは違った。目を合わせても、襲い掛かってこないのだ。
「……起きてる? って、話しかけても無駄だろうけど……仕事よ。さっさと行きなさい」
魔法で無理矢理視線を奪い、バーサーカーの目を戦場へと向けさせる。
途端にバーサーカーは牙をむき出しにし、まるで怒りを露わにするかのように、身体を震わせた。
「ゥルルルルルルアアアア!」
遠吠えをあげたかと思えば、とんでもない脚力でバーサーカーは戦場へと飛び込んでいく。
エリモアは、期待せずにその背中を見送るのだった。




