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誰がバーサーカーの死を見届けるのか  作者: 海道ほこ


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2/9

第1話:戦場

「ゥルルルアアアアアアア!」


 大きな咆哮が、戦場で響き渡った。大地が割れて、土煙が舞う。巨体を持つ男が片足を大きく掲げ、そしてその場にいた人間を踏み潰した産物だ。


「おのれ、化け物が!」


 湖の国の人間が、仲間を殺された悲しみを押し殺しながら、炎の魔法を放つ。それはバーサーカーの背中に当たったが、ただ振り向かせるだけの役目しか持たなかった。

 獰猛な野獣の瞳が、次の獲物を見つけた。その熊のような巨体からは想像もつかない速さで、炎の魔法を放った人間へと向かっていく。


「やめろ、来るな……来るなああああ!」


 バーサーカーは右手を大きく振りかぶり、その拳で人間を殴り飛ばした。宙へ浮いた人間は殴られた衝撃で骨が砕け、内臓は潰れ、そのまま意識もなく地面へと戻ってきた。


「はははは! さすがは山の国の獣よ! その調子でどんどんなぎ倒していけえ!」


 その様子を見ていた山の国の人間が、バーサーカーの活躍に歓声を上げた。だがそれは、バーサーカーに次の獲物だと教えている他ならない。


「……私は、仲間だ! 私に拳を振りかざしてみろ。最高教育機関である、まほ」


 仲間であるはずの人間は、簡単に首をもぎ取られ、喋ることができなくなった。

 それからもバーサーカーは、自らが持つ圧倒的な暴力を持って戦場を駆けまわった。敵も味方も関係なく、目の前にいるうるさい生き物から命を奪っていく。

 それがバーサーカーに与えられた、使命だったからだ。


「……まー、今日も派手に殺してるわね」


 バーサーカーから離れた位置で見ている女が呟いた。女は戦場より高い丘の上におり、眼下に広がる血の海に顔をしかめる。


「眺めているだけがお前の役目ではないぞ、エリモア。お得意の魔法で、さっさと奴らを始末するんだ」


 エリモアと呼ばれた女は、隣に立つ司令官を務める男へ顔を向けた。


「このまま撃てば、私たちの仲間も墨になるけど?」

「かまわん。連中があの野獣に群がっている今が絶好の機会だ。やれ」


 エリモアは、一つだけため息をつくと、魔法の詠唱を始めた。

 魔女であるエリモアは、相手の命を奪う魔法を扱うのが上手であった。炎で焼き払い、水で溺れさせ、風で敵の身を切り裂き、土で覆い尽くす。

 そうしてあらゆる魔法を駆使して、眼下の血の海を全て土に還した。


「見事な手際だった。報酬は弾むぞ。さあ、引き上げだ」


 満足げに頷いた司令官の男の頭には、もう今夜の酒のことでいっぱいだった。

 エリモアは、改めて眼下を見る。動く者は何もいない。人間の身体が焼けた匂いが充満し、死の香りだけが場を支配している。

 その中で、土から筋骨隆々とした腕が飛び出しているのが見えた。先ほど戦っていたバーサーカーだろう。だがその手首は、もはや力無く垂れさがっているだけだった。


「……所詮、人間よね」


 そしてそれ以上その場に留まることなく、エリモアも帰路へと着く。

 後ろには、誰も続かなかった。

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