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夜――マンションの窓の外に広がる京都の夜景を背に、煌牙はソファに腰を下ろしていた。
手にしていたスマホを置き、花楓の方へと視線を向ける。
「……会長―父さんからも正式に承認が降りた」
低く落ち着いた声が部屋に響く。
「これで、あの場所は守れる」
花楓は一瞬言葉を失い、次の瞬間には勢いよく煌牙に抱きついた。
「……ありがとう……!」
その小さな身体が震えているのを感じながら、煌牙は静かに背を撫でる。
「ただし、条件がある」
「……何?」
花楓は不安げに顔を上げる。
煌牙は真剣な眼差しを逸らさずに告げた。
「18時には帰ること。夕飯を一緒に食べること。週に二日は必ず休むこと」
花楓は瞬きを繰り返し、少し拍子抜けしたように息を漏らす。
「それなら……できるけど……」
煌牙は彼女の頬に触れ、口元をわずかに緩めた。
「あと……君を抱く時間が欲しい」
花楓の頬が一気に紅潮する。
「なっ……!」
言葉にならない声を漏らし、視線を逸らす。
その反応さえ愛おしくて、煌牙は彼女を強く抱き寄せた。
(もう二度と、離さない)
夜の静けさの中、二人の温もりだけが重なっていった煌牙は花楓を抱き寄せたまま、彼女の耳元で低く囁いた。
「……明日は俺も休みだ」
その声音に込められた意味を、花楓はすぐに悟った。
胸が高鳴り、頬が熱を帯びる。
「……………」
言葉は出なかった。ただ、腕を伸ばして彼の首に回す。
その小さな仕草に、煌牙の瞳が一層深く燃えた。
「……花楓」
花楓の身体を抱き上げ、煌牙はゆっくりと寝室へと歩を進める。
扉が静かに閉じられ、外の世界と二人を隔てた。
夜の静寂の中、残されたのは互いの鼓動と、触れ合う温もりだけだった。




