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パーティーは滞りなく終わった―少なくとも、表面上は。
笑顔と拍手、華やかな音楽。だが胸の奥に沈むものは、決して軽くはなかった。
煌牙は後部座席に身を預け、窓の外を流れる夜景を眺める。
街灯が途切れ、闇が濃くなるたび、考えは重たさを増していく。
(……あいつ。何を仕掛けてくる? 眞人の顔、あの笑み。放っておくはずがない……)
眉間に皺が寄る。握りしめた拳に力がこもった。
その時だった。
すっと肩に重みがかかる。
驚いて横を見ると、花楓が寄りかかり、静かな寝息を立てていた。
無防備に俺を信じて眠る姿。
パーティーの間ずっと気丈に振る舞っていた彼女の、ふとした隙間からこぼれた幼さのような安らぎ。
胸の奥で何かが解けた。
「……」
ふっと笑みが漏れる。怒りと警戒心で張り詰めていた心が、ひととき柔らかくなる。
(守るから……すべて)
煌牙はそっと花楓の髪を撫で、肩にかかる重みを支え直した。窓の外を過ぎる街の明かりが、二人をやさしく照らしていた。
―――タクシーがマンション前に停まる。
「ありがとうございました」とドライバーに告げて降りると、隣の花楓はまだ瞼を重たそうにしていた。
足元がおぼつかない。
「……ほら」
ため息をつくように小さく笑い、俺は迷わずその身体を抱き上げた。
花楓は驚く気配すら見せず、胸元に顔を埋めて眠気に揺れている。
エントランスを抜け、エレベーターに乗り込み、静まり返った部屋へ。
ベッドにそっと寝かせると、柔らかな吐息がシーツに溶けた。
「……これ、起こした方がいいよな」
小声で呟きながら、布団をかけ直す。
だが、伸ばしかけた手は途中で止まった。
――もう少しだけ、この寝顔を見ていたい。
無防備で穏やかな寝顔。
自分だけが知る姿だと思うと、胸が甘く締め付けられる。
そっと身を屈め、頬に唇を落とした。
わずかにくすぐったそうに眉を動かした花楓は、また安心したように息を整える。
煌牙は先にシャワーを浴びるために静かに部屋を出た。




