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月猫庵の花嫁様 〜俺様社長に嫁入り!?〜  作者: 愛龍


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浴室の扉が静かに開いた。

湯気を背に、濡れた髪をタオルで押さえながら出てきた花楓。

視線の先には、ソファに座る煌牙の姿。


一瞬で空気が張りつめた。

目が合う。


「…………………」

「……………………」


互いに言葉を失い、数秒が永遠のように長く感じられる。

さっきの告白が頭を離れない。

何を言えばいいのかもわからない。


先に視線を外したのは、煌牙だった。

咳払いをして立ち上がると、低く呟いた。


「……俺もシャワー浴びてくる」


花楓は驚いたように瞬きをした。

けれど、声をかけることはできない。


すれ違いざま、肩が触れそうな距離で。

互いの体温を感じながらも、一歩も踏み込めない。


煌牙はそのまま浴室に入っていき、扉を閉めた。

残された花楓はリビングに立ち尽くし、胸に手を当てて震える鼓動を必死に抑え込んでいた。


シャワーの水音が静かに浴室を満たす。

煌牙は両手で顔を覆い、深く息を吐いた。


「…………はぁ。……何してんだろ、俺」


さっきの自分の行動が脳裏に蘇る。

壁に追い詰め、何度も口づけを重ね、想いをぶつけた。

後悔ではない。

けれど、このまま中途半端なままではいけない。


鏡に映る自分を見据え、低く呟いた。

「……ともかく……きちんと話そう」


契約も、しがらみも、全部を越えて。

自分がどれほど彼女を想っているのか。

彼女の答えを、正面から聞かなくてはならない。


煌牙は水滴を拭い、深呼吸をひとつ。

胸の奥で燃える熱を押し込めながら、覚悟を固めて浴室を後にした。


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