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月猫庵の花嫁様 〜俺様社長に嫁入り!?〜  作者: 愛龍


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重なった唇が離れ、沈黙が落ちる。


互いに視線を外せず、でも言葉も見つからない。

頬は熱く、胸は張り裂けそうに苦しい。


その空気に耐えきれなくなったのは、花楓の方だった。


「……あ、あの……」

小さく息を呑み、潤んだ瞳を逸らす。

「わ、私……シャワー……浴びてきます……っ」


言い終えるが早いか、逃げるように……浴室の扉を閉める音が、静かに響いた。


煌牙はその背中を追わず玄関に…


握りしめた拳にまだ彼女の温もりが残っている。


(……逃げたな)


苦笑が漏れる。

だが同時に、胸の奥に熱が広がる。


浴室から微かに水音が聞こえる。

煌牙は額を押さえ、深い溜息をついた。


(……俺も、落ち着けるわけがないだろう)



ーーーシャワーの音が細く響く浴室。

花楓は湯気に包まれながら、壁に背を預けてしゃがみ込んでいた。


「……ど、どうしよう……」


熱いお湯を浴びても、頬の赤みはまったく引かない。

むしろさっきの言葉が何度も何度も蘇ってくる。


――俺は、最初から君が好きだった。

――私も……好きになっちゃった。


「ひゃぁ……っ」

耳まで真っ赤になり、タオルで顔を覆う。


(ど、どうしよう……!どうしよう、どうしよう……っ)


鏡に映る自分をちらりと見ては、両手で顔を押さえ、ぶんぶん首を振る。


にやけそうになって慌てて口を引き結び、でも次の瞬間また頬が緩む。


「はぁぁぁ……やだもう、どうしよう……」


心臓は速く、全身がくすぐったいように熱い。


まるで初恋をした少女のように、浴室の中で花楓は百面相を繰り返し続けた。


一方リビングに移動した煌牙は、ソファに深く腰を下ろしたまま天井を仰いでいた。

先ほどの光景が、鮮明すぎるほど頭から離れない。


「……………………やばい」


低く唸るように呟く。

心臓はまだ激しく脈打ち、握りしめた拳に汗が滲む。


(……俺、あんな顔して告白して……抱きしめて……)


思い出しただけで喉が渇く。

花楓の赤く染まった頬、潤んだ瞳、震えながら絞り出した「好きになっちゃった」という声。

全部が焼き付いて、消えてくれない。


「……くそっ」

後頭部に手を当て、髪を乱す。


(冷静になれ……今すぐ抱きしめに行きたいなんて……いや、駄目だ。あいつは今頃浴室で――)


想像した瞬間、理性が軋む。

煌牙は頭を抱え、ソファに突っ伏した。


「………………やばい。本当にやばい」


浴室から響く微かな水音さえ、彼の心をかき乱していた。


リビングのソファに沈み込み、髪をかき乱す。

理性を保とうとしても、花楓の顔が頭から離れない。


「……っ、駄目だ」

思わずスマホを取り出し、通話履歴を開く。


タップした先は――弟、昴流。


数回の呼び出し音の後、気怠そうな声が響いた。

『……兄さん? 何?』


煌牙は一瞬ためらったが、結局ぼそりと吐き出した。

「……俺……どうすればいいんだ」


自分が花楓に気持ちを伝えた事を白状する。



沈黙。


数秒の後、昴流の声が低く落ちる。


『……………………………滅びろ、リア充』


「は?」


『餓鬼かよ。勝手に悩んでろ』


そのまま、プツンと通話が切れた。


煌牙はしばし呆然とスマホを見つめ、次いで額を押さえた。

「……っ、マジかよ……」


部屋の静寂に、自分の荒い息と心臓の鼓動だけが響いていた。




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