17
広々としたダイニングには、銀のカトラリーと温かな香りが満ちていた。
家族が揃って囲む朝食会。今朝の話題は当然――煌牙と花楓の結婚だった。
「結婚式と披露宴はどうするの?」
長兄・夕樹が、コーヒーを口にしながら穏やかに問いかける。
煌牙は短く息を整え、落ち着いた声で答えた。
「……みんな忙しくて予定が合いません。だから、一年後。二人だけで海外で挙式します」
「へぇ……」
姉の彩織が小さく眉を上げ、すぐに笑みを浮かべた。
「でもお披露目はどうするの?流石に役員たちが煩いわよ」
煌牙は一瞬だけ視線を落とし、やがて真っ直ぐに顔を上げる。
「わかってる。だから――再来月の創立記念パーティーで、正式に結婚したことを報告したい。……いいですか、父さん」
一同の視線が、テーブルの端に座る朝紀へと集まった。
朝紀はナイフとフォークを静かに置き、ゆるやかに微笑んだ。
「もちろんいいよ」
そしてわずかに口元を引き締める。
「邪魔されないように気をつけて」
その声に、花楓の胸はきゅっと締め付けられた。
しかし同時に、煌牙の横顔に揺るぎない決意を見て―心の奥が、そっと温かく灯るのを感じた。
母・綾子が手を叩いた。
「じゃあ、ドレスを選ばなきゃね」
その一言に、花楓は思わずスプーンを止め、顔を赤らめる。
「お母様、私も一緒に選びたいわ」
彩織がすぐに身を乗り出す。
「でも私の海外出張のときは止めてね? 花楓ちゃんのドレス姿、絶対に見逃したくないから」
「私はいつでも構いませんわ」
麗香は穏やかに微笑みながら紅茶を口にする。
「花楓さんに似合うドレスを一緒に見つけられるなんて、楽しみです」
花楓は両手を膝に置き、うつむきながら小さく「ありがとうございます」と声を絞った。
その頬はますます赤く染まっている。
そんな空気の中、夕樹が苦笑混じりに口を開いた。
「じゃあ、僕が京都に来てるときにしてくれるかな? 麗香と一緒に見たいしね」
「……夕樹兄さんまで」
昴流が呆れ気味に漏らす。
だが、花楓の胸の奥には、不思議な温かさが広がっていた。
―優しく家族として迎え入れられているようで。




