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プロローグ
京都、竹林のざわめきが風に揺れる。
古民家を改装した小さなカフェ「月猫庵」。
祖父母の想いが染み込んだ木の柱と畳の香りに包まれ、月代花楓はオーナーとして毎日コーヒーを淹れていた。
そんな静かな日常を、ある日突然打ち破った男がいる。
鋭い視線、仕立ての良いスーツ。
大手ホテルグループの御曹司にして、関西…特に京都のホテルを任され誰もが恐れる“冷酷の覇王”。
――鷹峰煌牙。
冷たい眼差しで店内を一瞥し、彼は低く告げた。
「ここは俺が守ってやる。その代わり一年だけ俺の花嫁になれ」
理解が追いつかない。
けれど、その声は有無を言わせない力を持っていて、心臓を鷲掴みにする。
「わ、私……好きな人としか……!」
必死に抗う花楓。
しかし彼は愉快そうに、けれど瞳の奥は熱を帯びて囁いた。
「なら言わせてやるさ。“愛してる”と」
その日から、
古民家カフェの娘と、俺様社長の熱烈な契約花嫁生活が始まった。




