第十八羽
疲れて一歩ふみ出すのもつらくなった実希は、場所もかまわず座り込んだ。
(いま、ど、こ、歩いて…… た、んだっけ……?)
どこからか、くしゃくしゃになった地図があったので、広げて見ようとしたが、疲労で目もくらんでいたため見えない。
(うまく、見え、ない……。 もう、いいや。)
バタンと道路のど真ん中で寝転んだ実希はそのまま深い眠りについた。
キィィィ―――
どこか遠くから、ドアの音が聞こえてくる。
「はっ!? ……??」
実希は広い部屋の大きなベッドにねかされている。
「あら、おきたのね……? 大丈夫なの?」
女性らしい人がすぐ脇に立っている。
(めがねなくしちゃった。 このひと、誰だろ?)
超近眼の実希はほとんど周りが見えない。
「お水、置いておくわね……。 ゆっくり休んでいいわよ。」
キィィィ―――
---バタンッ
(……どこだ? ここ…。)
体調はよくなったので、ドアを開けてきょろきょろしてみた。
「ん?」
正面のドアを見ると、見覚えのある感じがした。
【ボイラー室】との文字。
標識の下には立ち入り禁止の張り紙。
(うーん。 みたことあるよーな……。)
「あっ!!?」
(ヤバイ!! ここって……、ココって……!!)
カツカツカツ………。
(だ、だれか来た! とりあえず布団に……)
がばっと布団をかぶって顔を隠すと同時に部屋に人が入ってきた。
「あの、調子はどうかな?」
男性の声がした。
(こ、この人、うちのホルマリン漬けを買った人だぁ~~~!!!)
幸いにも、実希はホルマリン漬けになったときより髪を短くしたし、チャームポイントである眼鏡がないので、違う人に見えた。
作 M・N