Affirmative sale reason
そこには
座面があった
ソファでもいい
座布団でもいい
たまには
洋風の洒落た椅子でもいい
なんでもいいんだ
ソファに座る男
行き交わない人と人との関係
顔を手で覆い……
絶望
ソファに座る妊婦
お腹を愛おしく撫で
胎児にクラシックの音色を
プレゼント
包み込み
秒針は歩を進める
進むことしか、知らないから
いいえ
進むべきことを、知っているから
和室に座る老翁
頑なに自身が正しいと
他者の云う事など
なんの価値もないと
老媼の淹れた茶を
音をたて、すする
老媼はなにも言わずに
只、間をとって
只、横にすわって
只、微笑んで
音をたてずに
すする
軒先に二羽の赤蜻蛉が
羽根を休めに訪れた
「お爺さん、蜻蛉のつがいですよ。
なにかの遣いで此処にきてくれたのかしら来てくれたのかしら。
それとも……
私たちへのなにかのメッセージかしらね」
老翁はなにも言わない
新聞を広げ、
そして
新聞の影から
赤蜻蛉のつがいの様子を覗く
「婆さん、なにが可笑しいんだ」
「いいえ、なんでもありませんよ」
つがいは高い空へと
迷いなく、飛び立って行った
共に歩んだ
世紀の退廃的 爛熟を
忘れはしない
あの頃
枠の中でノイズと
共に 揺れる
私に
私の試験、を
肯定の安売りのその理由を
あなたは私に問うことは無かった
それがどんなに
私にとって尊いこととして映ったか
貴方は知る由もないでしょう
白と灰色のコントラストで
迷う私
きっとそれは永遠なのでしょう
それでも
つがいが迷いなく空へと飛び立つ
その姿
共に過ごした時が
お爺さん
貴方と見守る事ができて
私は幸せですよ
くすくす
「婆さん、なにをさっきから笑っとるんだ。
婆さんのそういうところ、
若い頃から変わっとらんな」