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That day


 雨音の確率は実にランダムで

 僕の心を掻き乱す理由になるんだ


「痛くない? 」

 病弱なぼくに背中をさすってくれる君の手こそが僕の万病の薬だよ

 

 君は滲んだ眼をして僕に笑いかけてくれるんだ


 幼君と僕は病室から雨を眺めては

 時の流れの違和感を感じていた


 そしてそれは決して抗うことの出来ないことなのだと、

 幼くとも、きっとそうなのだと…


 君の手の中にはいつもアガサの本があったね


「アガサの本のイメージはイエローなの」


 君が言った

 雨をバックに笑顔で握りしめる本


 自らを律することを求められ

 自らと対峙する僕らに


 それぞれの迷いが生まれ

 理想が僕らを阻んでいった


 そして、理想だけでは君を守れないことも、思い知らされた




「万病は僕の足を引っ張るだけの道具でしかない」

 病室で僕が呟いた一言を覚えていた君


 君はむかしから本が好きで常々言っていた


「書物を読みふけっては何も語らない人間は恐ろしいね。

 きっとその人は私たちの範疇を越える思考を持っているわ」



 薬学部に進路の希望を出した君

 医学部に進路の希望を出した僕


 君と肩を並べて話し合ったあの日


 君は僕に訊いた


 「生きていて良かったって思った瞬間ってある? 」


 僕は幼い君の滲んだ眼を思い出しながら言った


 「痛みが美学に変わったときだよ」



 また君が笑った

 君の滲む眼


 いまでは涙を伝わせて

 僕は拭う


 けれどストーリーは、まだまだこれからで

 雨は降り続く


 音のランダムさえ味方につけたら


 扉がひとつ開きそうな気がしてならない


 いや、それに気付いた僕はきっともう

 扉の前に立っているんだ


 僕のくだらない予感を訊いてくれるかい?


 扉を開けた時、そこにはきっと雨が降っている

 雨のリズムは相変わらず不規則なんだ


 辺りには水たまりが絶え間なく在って


 けれど その先に虹がかかっている


 虹は筋の通った芯ある一色


 君が笑った時の色・君が儚い時の色


 そう 


 カラーはきっとイエローかな




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