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第15話 僕の戦い 後半

 僕は、杖をその中間を開けて両手で横に持ち、半身で構えてリザードマンを待ち受けた。

 奴が間合いに入ったところに合わせて、連続で杖の両端を交互に打ちこむ。

 奴が対応しきれずに、無理な姿勢で剣で斬りこんでくる。

 それに対して、僕は杖の先端で奴の剣を受け、そのままねじり返して剣を弾き飛ばした。

 そのまま、一気に間合いを詰め、杖の先端でリザードマンの喉を突き、勢いをつけて前蹴りを、奴のみぞおちに打ち込んだ。

 奴は周りの魔物を巻き込むように首と腹を押さえてのたうちまわり、僕に向かってくる他の魔物の勢いが緩む。

 次だ!


 僕は、そんなふうに体感時間ではとても長い間、戦闘を続けつつ、最後のカードを切るチャンスを待ち続けた。

 僕にはいくつもの打ち身やすり傷ができたが、致命的な傷はなく、動くのに支障はない。

 まだ、いける!


「ふぅ、運動性能の確認は十分だわ。

 狙い通りの性能で満足よぉ。

 次は魔法に対する耐久力を見させてぇ。

 どのぐらいの強度があるのかしら。

 ライトニング!」


 バシーーン


 魔族の指先からオレンジ色の雷光が僕の右脚に向かって伸びてきたかと思うと、僕の体に強い衝撃が走る。一瞬、目の前が真っ白になったかと思うと、次に真っ暗になり始める。

 雷光に射貫かれた右脚が僕のいうことを聞かなくなり、走っていた僕は横滑りに倒れこんでしまった。


「うわぁ、ううう……」


 痛みをこらえつつ脚を見ると、ズボンの布がはじけ飛んで右脚のふくらはぎの辺りがむき出しになり、右脚が僕の意志とは関係なくピクピクと動いている。

 

(もう、走れない……、だが、まだいける!)


「あらぁ、魔法には弱いのね。

 そうねぇ、そこは強化していないもの。

 じゃあ、何発ぐらいまでなら生きているのかしら?」


 魔族がうっとりとした、恍惚の表情で僕をみてきた。

 その顔には、獲物をなぶる表情が浮かんでいる。


(その油断が命取りになることを思い知らせてやる!最後のカードだ!)


 すでに僕は、魔族の動きを誘導し理想の位置取りにいるのだ。

 僕は、倒れてもがく演技をしつつ、自分の体で隠しながらマジックバッグから束になった爆弾を取り出し、導火線に魔法で火をつけた。


 シュシュシュシュシュシュ……


 導火線は煙と火花をあげながら燃え始め、みるみるうちに短くなっていく。


(このタイミングだ!)


 僕は、倒れたまま体を丸めて片脚を振り上げ、体幹を使って一気に立ちあがった。

 そのまま、導火線が短くなった爆弾を魔族の頭上めがけて放り投げた。


「ウィンド!」


 僕の風の魔法で、さらに加速された爆弾が奴の頭上の天井めがけて勢いよく飛んでいく。


「いけー!」


 奴の頭上の天井は広間を支える柱が倒れてなくなり、強度が弱っている場所だ!


 バァーン、バーン!

 パラ、パラ、ゴゴゴゴゴゴゴ


 爆弾が爆発し、激しい爆発音と爆風の衝撃が迷宮を揺らす。

 僕が手をかざして天井の方を見上げていると、爆発の粉塵に覆われているあたりから、細かな砂利が魔族のバリアに降り注ぎ始めた。狙い通りだ。


「!!」


 奴は驚いて頭上を見上げた。


 ズーン!


 次の瞬間に天井の底が抜け、馬一頭ほどの大きさもある、巨大な質量をもつ石材が魔族の張るバリアの上に落下した。


「クッ!実験動物の癖になんてことを」


 魔族の錬金術師と取り巻きのホムンクルスたちが、両手を掲げてバリアの強度を高める呪文を唱えている。石材の質量を支えるつもりのようだ。


 ズーン!

 ズーン!

 ズーン!


 しかし、バリアの上に、次々と大きな石材が落下してゆき、莫大な落下衝撃と質量が加わる。

 バリアは明滅を繰り返しながら、風船が潰されるようにたわんでいった。

 バリアの強度を高めようとして、魔力を使い過ぎたホムンクルスたちが、次々と目や口から血を噴いて倒れ伏してゆく。

 魔族の錬金術師は充血した目を見開いて上を見上げながら、必死の形相で魔法を唱えていた。


 バーーン!

 ガラガラガラガラ…………


 とうとう、バリアが内側から破裂するように破れて、光の粒子が舞う。

 石材の山を支えていたバリアがなくなり、山のような石材が魔族の上に降り注いだ。


「ギャアアアア」


 がれきが落下する粉塵の中から、魔族の絶叫が聞こえた。


「やったか……?」


 僕は力が抜けて、へたりこみ、右脚のふくらはぎを撫でながらその様子を眺めた。

 ライトニングにやられた右脚は、赤くなり熱を持っているが、なんとか動かせそうだ。


(お願い……、あと、もう少しで終わりだから動いて)


 天井の崩落が続き、僕のいるほうまで広がってきている。


(思ったよりも天井の崩れる範囲が広い、早く少尉を安全なところへ移さないと……)


 僕が、魔族のいた方向から視線を外し、片脚を引きずりながら歩き始めたその時、魔族がいたほうから、地の底から湧きたつ呪詛のように響く声で、呪文を唱える声がした。


「よくも、よくもやってくれたな。死ねぇぇ!

 ファイアーボール!」


 次第に薄らいでいく土煙の中、そこには片腕をだらりと垂れ下がらせて、頭から流れる血で顔を覆った悪鬼のごとき表情の魔族が絶叫していた。

 そして、そいつが僕にむけて人一人を覆うほどの巨大な魔法の火の玉を放つところだった。

 火の玉は放物線を描きながら僕に向かってくる。


 僕は、膝をついてその飛んでくる火の玉をみつめた。

 火の玉がまるでスローモーションで動いているように見える。

 でも、僕の体が動かない。


(だめだ、避けれない……、少尉を家族の元に戻してあげられない……、ごめんなさい、少尉……)


 そのとき、横合いから丸い盾が、風を切る音を立てながら飛んできて火の玉とぶつかり、火の玉は大きな音をたてて空中で爆発した。あれは、少尉が使っていた盾だ。


「手を出すなー!」


 彼の大きな声が聞こえたかと思うと、光が走り、次の瞬間にさっき落とした僕のダガーが、魔族の右胸から背中の左側へと貫くように深々と突き刺さる。

 魔族の背中から鮮血が噴きあがる。

 奴は、自分の胸に突き立ったダガーの柄を信じられないものを見るような表情で見た後に、両手でダガーの柄を掴んだままの姿勢で仰向けに倒れた。

この小説を読んでいただき、ありがとうございます。

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