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落第錬金術師の工房経営~とりあえず、邪魔するものは爆破します~  作者: みなかみしょう
第六章『魔法使いの杖と爆破の女帝』

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65.トラヤの杖

 三日後、私とトラヤは錬金室にいた。

 私の工房の錬金室には修行中の弟子が見学するスペースが設けられている。

 最初の頃、トラヤがよくそこにいたんだけれど、最近は見かけなくなっていた。


 今日は久しぶりにトラヤがその場所にいた。


「イルマ。頑張って」


「うん。頑張る」


 振り返ると、そんな風に応援してくれる。これで今日五回目の頑張れだ。


 錬金室の各所に置かれたのは、大量の素材。

 それは、ルトゥールの人達があらゆる手段を用いて集めてくれたものだ。フロート商会の輸送便は工房に直接来て、積みおろしまでしてくれた。

 素材の中にはルニさん達が見つけてくれた、とこしえの古木もある。集まった木材で、これが一番良いものだった。


「よし、やりますか……」


 中央にレシピを置く。トラヤの師匠が書いたものを、私なりに書き直したものだ。基本は変わらないけど、内容が少し古かったのでいくつか修正を加えた。


 この錬金術は私にしかできない。地水火風、四つの属性を同時に使うからだ。

 本来なら四人の錬金術師が協力し、微細な調整をしながら行う錬金術。そんな経験と連携がある錬金術師なんて、塔にでもいかなきゃ見つからない。


 でも、私ならできる。複数属性を扱える私なら、一人でこのレシピを完遂できる。

 必要なのは体力と集中力。ゆっくり休ませて貰ったし、日々鍛えている。

 トラヤから貰った魔法使いのお守りに軽く触れて、後ろを振り返る。

 真剣な顔で見守る友人がそこにいた。

 

 大丈夫。やれる。始めてしまえば、すぐだ。


 覚悟が決まった。錬金杖を掲げ、宣言する。


「錬金、開始……」


 杖から発された輝きが、錬金室全体に散る。光が雪のように舞う室内で、私はゆっくりと杖を振るう。記述したレシピ通りに素材が組み合わされるように。


 ゆっくりと、慎重に。舞い散る光を操る。杖の動きに合わせて、素材達も光へと変化して、室内の輝きは増していく。


 トラヤはよくこの光景を綺麗だと言っていた。私もそう思うけど、じっくり見る余裕は無い。

 今回は素材が多い上に上質だからか、杖が重い。

 緊張しているのもあるかもしれない、少し疲れる。いつもはまるで感じないのに。


 それでも、杖を振るのをやめない。

 後ろにトラヤがいるし。カザリンに良い報告をしたい。ハンナ先生にお礼をしなきゃいけない。


 大きく息を吸い込み、気合いを入れ直して杖を振るう。大丈夫、このレシピは面倒だけど、時間のかかるものじゃない。


「あ、なんか凄い良い感じになった」

 

 トラヤのそんな呟きが聞こえた。

 どうやら、私は良い感じにやれているらしい。


 それが嬉しくて、杖を大きく振り回す。室内の光はそれに応え、流れる川のように自在に動く。


 時間にして十分少々。いつもより少し長い錬金を続けた後。


「これで……終わりっ」


 声と共に、光が部屋の中央に集まって、一つの形になった。


「できた……はず」


 手応えはあったけど、自信はない。なので、すぐに確認した。


 錬金室の中央には、一本の杖が支えも無しに立っていた。


 基本的な素材は木だ。錬金術で真っ直ぐかつ頑丈に作りなおされた、とこしえの古木。

 それは先端に向かうにつれて広がっていく。杖の先端部には巨大な無色の宝玉、四方に赤青黄緑色に輝く小さな宝玉がついた金属製の部品がついている。

 錬金術の力で実質一つになったこの部分こそ、この杖の要。多分、魔法の各属性の力を引き出す部品だと思う。魔法はわからないから推測だけど。


 杖は自身の魔力で支えもなく直立している。これは驚きだ。魔法使いの杖は規格外ね。

 

 上から下までじっくりみて、予定通りの仕上がりであることを確認。

 それから、振り返って待機室にいる友人に声をかける。


「トラヤ、できたよ。貴方の杖が」


 声をかけられた友人は、待機所から飛び出して抱きついてきた。

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