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落第錬金術師の工房経営~とりあえず、邪魔するものは爆破します~  作者: みなかみしょう
第六章『魔法使いの杖と爆破の女帝』

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58.平和的な姿

「というわけで、平和的な錬金具とはなにかを探求しているんです」


「…………」


『…………』


 リベッタさんの家で、私はそんな相談をしていた。

 テーブル上には良い香りのハーブティー、カップの向こうには穏やかなリベッタさん。

 その前には鏡状の錬金具に自分を映したハンナ先生が見える。

 特級錬金術師の中でも特殊な能力を持つ私は、定期的に二人の師匠に相談する時間を設けて貰っている。


『平和的とは、またイルマさんには難しいものを選びましたね』


 ハンナ先生のあんまりな発言に言い返したくなったが、そうもいかない。実際考えてみると難しいのだ。


「そうなんですよね……。平和とはなにかとか考えすぎちゃって、いっそ爆破の錬金具でも役に立つなら平和的なんじゃないかと思えて来てしまって……」


『…………』


「それは考え過ぎよ。イルマさんは平和的な錬金具じゃなくて、今の自分の扱いをどうにかしたいんでしょう」


『ルトゥール最強の錬金術師ですか。師としても納得の呼び名ですが』


「う……。でも、それで冒険者組合から魔獣退治や魔境調査の依頼が大量に入って来るんですよ」


 ちなみにそれらの依頼は極力断ることにしている。私でなくても対処できそうだし、実際トラヤがセラさん達と対応してどうにかできている。


「私としては、せっかく特級錬金術師になったんだからもうちょっと集中して修行したいんですよ」


『それで平和的な錬金具を作って周囲からの印象を変えたいというのはわかりますが……』


「こういうものはね、日頃の行動がものをいうのよ。落ちついて仕事をしていれば、そのうち評価が変わってくるわ」


 リベッタさんの言葉に錬金具の中のハンナ先生も頷いた。つまり、今は武闘派錬金術師という扱いを受け入れて、地道に行けということだ。正論なので納得するしか無い。


「そうですね。幸い、フロート商会との繋がりができましたから、しばらくそちらからの依頼に対応して地道にやります」


『それが良いでしょう。課題というわけではありませんが、塔の方に良いレシピがないか探してみます。焦らず落ちついてやっていくように』


「フロート商会の支店長さんは同級生なのよね、良い関係が続いているようで何よりだわ」


『ところでトラヤさんはいつ連れて来てくれるんですか。全然会えてないんですが』


「トラヤは今日冒険者組合です」


 短く答えると、ハンナ先生はあからさまに落ち込んだ。相変わらず、タイミングが悪くてトラヤと話せていない人である。



 その後、リベッタさん達と軽く雑談をしてから、私は帰宅した。

 石畳をゆっくりと歩きながら、慣れた道筋を辿っていく。


「ただいまー。トラヤ、どうしたの?」


 工房に着くと、入ってすぐの部屋でトラヤが神妙な顔をしていた。


「お師匠様からの手紙が郵便受けに入ってた」


 言いながら、トラヤは大きめの封筒を私に見せた。既に封は開けられており、一読した後のようだ。


「お師匠様って……トラヤの? 魔法使いも郵便使うんだ」


「多分魔法で送ったんだと思う。中身を見てもらっていい?」


 封筒を受け取って中身を取り出す。上質な紙が四枚ほど入っていて、広げた瞬間に私にはそれがなにかわかった。


「これ……錬金術のレシピ? トラヤの杖って書いてあるけど」


 トラヤの師匠からの手紙は杖のレシピだった。以前、トラヤの杖の宝玉を作ったことがあるけれど、今回は全然違う。杖全部、完全に新調するためのレシピがそこに綴られている。


「端っこの方に『なるべく急ぎで』って書いてあったんだけど。……できそう?」


「ちょっと待ってね。一度見てみるから」


 魔法使いからもたらされたレシピ。興奮しそうなくらい興味深いものではあるが、自分が手出しするとなると話は別だ。

 レシピの内容を見ながら、今の自分に可能かどうか検討する。


「……素材があれば、できるかも。後でもっと読み込んでみる」


「良かった。お師匠様はいつもギリギリのところを攻めてくるから……」


 トラヤのお師匠様がどうやって私達のことを知ったのかはわからない。でも、私の腕前を把握した上で、これを送ってきたということだろう。


「なるべく急ぎっていうのが気になるんだけど、どのくらいかな?」


「わからない。でも、お師匠様のいうことって大体当たるから、急いだ方がいいと思う」


 私の問いかけに、魔法使いの弟子は珍しく深刻な顔で答えた。

 これは、本気で頑張らないとまずい気がする。

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