第6章 初めての休日活動に於いて
附高白川では、届け出を出した上で顧問が出勤する場合に限り部活の休日活動が認められる。囲碁部も人数が増えたので、今日は許可が下りて休日活動を行うことになった。
さて、活動は午前中のみとしたのだが、それでも朝早くから六人ほどが登校し、無事部活は終了した。然しその後、内田先輩から「一寸手伝って欲しいことがあるんやけど」と声を掛けられ、僕は北棟二階の科実研の部室に呼ばれた。北棟には主に生徒会室と文化部の部室が在るのだが、此処は旧校舎の改装が行われた今となっては最も古い建物である。其の二階に活動拠点を置く科実研は、遂に今年度から同好会から昇格し念願の部になることが出来るらしい。然し部室自体は結構ごちゃごちゃとしており、内田先輩の私物も多いらしい。
「それで、何を手伝うんですか?」
「実はね、此のスマホのケースを黒く塗りたいんよ。」
内田先輩は、ポケットから白いスマートフォンを取り出した。
「え、どうしてですか?」
「実はな、俺スマホ三台あるんやけど、親がいくら何でもスマホ持ちすぎやから一つ預けろって言うんやんか。せやけど俺は全部もっときたいと云うか無いと困るし、渡したくなかったから、壊れてるスマホをメ○カリで安く買って渡そうと思ったんやけど、白しか売って無かってな、ほんで親は俺のスマホ全部黒いってしっとるからもうこれ塗るしかないねん。」
正直阿呆かこの人と思ったが、然しこの日は暇で家に帰っても特にすることがなかったので手伝うことにした。
と云うことで早速作業に入ろうとしたのであるが、黒スプレーは部室にあったものの、此れを其の儘使うと部室が汚れて仕舞うので、もう使わない空気砲の底を切り取って下に段ボールを敷き、其処にスマホケースをスマホ本体から外して置いて、空気砲をその上から被せることにした。即ち、空気砲の穴の部分から黒スプレーを吹き付けようと云う算段である。然し此の作戦には問題が在った。如何しても空気砲の中が暗くなり、狙いが定まらぬのだ。光が足りないのだと上からスマホで光をあててもみたが、腕で其の光が遮られて仕舞い光が十分に当たらない。そこで、空気砲の横に小さな穴をあけ、其処から光を当ててみたのであるが、此れまた少しはマシになったとは云え矢っ張り狙いが定まるほど光が十分に当たる訳ではなかった。四十分ほど格闘したが、結局外でやった方が良いのではと云うことに気がつき、段ボール等を裏山に運ぶことにした。