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いごぶっ!  作者: フミ-毛交
初年度 四月
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第4章 四月第二週に於いて

入学して早くも一週間が経過した。僕はと云えば、あの後早々に囲碁部に入部届を出してしまっていた。一応兼部も考えてみようと云うことで、今年付で同好会から部に格上げされた科実研や、北棟でひっそりと活動しているらしい文芸部等も見学してみたのだが、あまりピンとこなかったり、何時まで経っても活動場所が特定できなかったりしたため、結局兼部は辞めた。

それからというものの、取り敢えず学級写真を撮影したり、誰かもよく分からない先輩が勝手に立候補して勝手に進んでいく生徒会役員選挙を眺めたりといかにも年度初めの事務をしていたのだが、そうしているうちにいつの間にか時は経ち、遂に仮入部期間が終了した。そこで、内田先輩は部員と顧問全員が集まって挨拶などをする顔合わせを企画した。結局囲碁部には、中学校時代に僕と同じ三年ろ組で仲の良かった友達などを呼んだり、先輩達が懸命な勧誘をしたり、部活の連絡黒板に綺麗な絵を描いてみたりした結果、なんと十二人もの一年生が所属することになった。此れには先輩達も驚いている様だったが、正直なところ廃部の危機をうまく免れることの出来たという安堵の気持ちもあったであろう。因みに附高白川では教員数が多くない為、一人の先生が幾つかの部の顧問を掛け持つ代わりに複数人の顧問を各部につけることが出来るらしく、今年の囲碁部の顧問は三人居た。

さて、或る日のことである。授業が終わり、さて部活の時間だというところで、この日は先述した顔合わせを行った。とはいえ大層なものでは無く、結局自己紹介等をしてつつがなく顔合わせは終わった。その後、僕は同じ学級の安西という部員と一局打った。此の安西という奴は、体育のオリエンテーションだかなんだかで、「好きな異性の名前のあいうえお順で並べ」という謎の課題が出たとき、まさかの自分の名前を以て並んだなかなかの強者である。いや、面白い発想だと思うが。なんていう事を考えているうちに時刻も遅くなり、一人帰り、二人帰りと人が減り、最終的に僕と安西、そして内田と稲田の両先輩だけになったのであるが、この時なんと稲田先輩は唐突に押し入れから或るものを取り出した。


雀牌である。


稲田先輩はいきなり此の雀牌を広げだして、内田先輩と麻雀を打とうとしたのだが、この時更に安西は自分も麻雀を打てると言い、唐突に参加し始めた。そういうわけで内田先輩、稲田先輩、そして安西の三人で遂に麻雀を始めてしまったのである。一方の僕はと云うと麻雀の打ち方など全く知らないどころか牌もよく知らなかったので、取り敢えずスマホで麻雀の打ち方を調べながら観戦していた。途中チーだのポンだのドラだの天○衣だのよく分からない言葉が聞こえてきて何だろうかと一所懸命に調べていたのであるが、然しよく考えてみると抑も此処は囲碁部の部室であって、非常に疑問な状況であったと言えよう。

僕はまあ暇して居ただけなのだが、取り敢えず少々して麻雀が終わったと見え、稲田先輩は牌をならべると此れを丁寧に拭き始めた。そうして部活終了時刻までもう囲碁を一局打つほどの時間は無いであろうと駄弁っていたところ、其処に顧問の荻山先生が鍵を閉めに戻ってきたのである。即ち見事に広げていた雀牌を見られて仕舞ったと云う訳だ。荻山先生は笑いながらも、次に雀牌を部活動で広げたら没収すると宣告した。


この頃の僕は、端から見ながら学校で麻雀を打つなど阿呆でしかないと心の底から思っていた。然し、此れは麻雀と云うものをよく知らなかったからかもしれない。

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