序章 桜舞う白附坂に於いて
-最高に馬鹿な先輩たち、最高に面白い友人たち、そして最高に楽しませてくれた後輩たち、最高な私の周りの人々、皆に捧ぐ。-
※此の作品はフィクションです。実在する地名、人名、団体名とは全く関係御座いません。例えば作中に登場する清峰大学は、長崎県に存在する清峰高校とは全く関係が御座いません。どうぞこの点についてご承知下さい。
中学校の3年間、通い続けた学び舎のそのすぐ向かいに、僕の新たな学び舎はあった。というのも、同じ大学に付属している高校へ連絡進学した、それだけのことだったのだ。
入学式当日。歩き慣れた通学路を進み、校門へたどり着いたその時気がついたのだが、僕は入学式に胸を踊らせるあまり、どうやら随分と早く来てしまったらしい。どうりで周りに人影のないわけだ。僕は少々困りかけた、のだが。
「よう」
…しかし、馬鹿は僕以外にもいたようだ。彼は伊集院大雅。中学時代はいつも成績一番、本当の秀才だが、とてつもない特撮オタであり、筋肉バカという噂だ。紹介を忘れていたが、僕は山田紀也。まあ、至って普通の高校生…、では、ないんだろうなぁ…。
閑話休題、僕は伊集院と共に校門をくぐった。まだ入校証は発行されておらず、代わりに合格証明書なるものを警備員に見せて校門を通る。校門を通ったはいいのだが、我らの学び舎はここからが遠いのだ。徒歩にして約2、3分ほど、坂を登らねばならない。我が学び舎は、清峰大学附属白川キャンパスに位置しており、この坂はそれを由来として白附坂と名付けられている。桜並木になっているので、この時期は眺めも随分良いのだが、もう散り始めてしまっている。年々春がなんとなく短く感じるようになったのは、気のせいだろうか。
なんてとりとめないことを話しながら、僕は伊集院とこの坂を登っていった。新たな高校生活に胸を高鳴らせつつである。
青空広がる、うららかなそんな春の日、僕らは入学式を迎えた。待ち受ける、奇想天外かもしれない、僕の「高校生活」なるものを、全く知らずに、である。