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第2話の最終話です。
「……わり、今日はもう帰れ」
顔が見れない。
めちゃくちゃだ、俺。
「夏目先輩、俺何かしたなら謝ります」
「お前は悪くないんだ」
だからそんなこというな。
そんな声出すな。
何で樹がそんな必死になってんだ。
「でもっ、じゃあなんで」
俺が悪いんだよ。
でもそんなこと言えない。
「何で先輩は泣いてるんですか」
お前だって泣きそうじゃないか。
俺ばっか泣き虫みたいにいうな。
「これは…汗だ」
苦しい。
それは苦しいだろう俺。
「夏目先輩っ」
こいつはいつも一生懸命だな。
まっすぐっていうか。
俺はそんな樹を好きになったんだ。
その真っ直ぐな目。
真っ直ぐな意志。
それを俺が歪めてもいいのか?
「まあなんだ、やきもちだ。わるい」
嘘は、つきたくない。
お前の真っ直ぐに、真っ直ぐで答えたいから。
屁理屈だけど。
「ほんとに?」
まだ訝しげな樹の額をはじく。
「何度もいわせんな。恥ずかしい」
そう、これは盛大なやきもちだ。
どうやっても手に入らない、世の中の女性へのやきもちだ。
俺は女になりたいわけじゃない。
けど樹の側にいるために必要なら、俺は決して手には入らないそれが憎らしい。
女になるために体をいじってもいいかもしれないと思うくらいに。
それに俺に好きだというだけで軽蔑されないかびびってたこいつに、俺は男にしか興奮しないなんていえるわけない。
「さっきまで泣きそうだったのにへらへらしやがって」
「だってやきもちとかうれしすぎます! 俺感激ですっ」
樹にはこんな風にずっとわらっていてほしい。
めんどくさいゴタゴタは、考えさせたくない。
お前の綺麗な目には、綺麗なものを。
真っ直ぐなものを。
「心配しなくても、俺は先輩のものですよ」
そのためには抱きしめるこの腕も言葉も俺のためにあっちゃいけない。
だけど。
「そう、か」
額を擦り付ける肩口も。
ただ今は。
今は俺にも少しだけ…。
第2話更新終了です
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