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第8話『本と情報』

 必要そうな本を集め、受け付けへ向かう。貸出中と書かれた紙をいくつか見かけたので借りることはできるはずだ。

 受け付けのお姉さんに本を渡す。



「三冊ですね。期間はどうしますか?」

「一週間だ」

「一週間でしたら、三冊で30レアになります」


 金取るのか。まあ、本が返ってくる保証なんてないわけだしな。

 フラジールさんのお金を使うのは気が引けるな。だけど、受け取ったお金は給料日まで余裕で暮らせる程の金額だ。どうせ同額返すのだから、どう使おうと関係ない。

 皮袋から銅貨を三枚取り出し、受け付けに渡す。これで一週間自由に読むことが出来る。


「この瓶をお持ちください」


 受け付けがカウンターの下から水の入った瓶を取り出し、オレに差し出す。


「これは?」

「一週間用の魔法水です。瓶のフタを取ると中の水が貴方を襲います」


 照明に照らされる透明な液体を見る。この水が襲ってくる……?


「一週間の期限を過ぎると自動で栓が取れ、水が外に出ます。本の返却の際にはこの瓶を一緒に持ってきてください」


 なるほど、延滞料金なんて無くて、期限を過ぎても返さなかったら殺されるってことか。要はルールを守ればいいんだろう。


「わかった。ちなみに瓶を捨てたらどうなる」

「その本と瓶には魔法がかかっていますから、捨てたところで一週間後中の水が本を追ってきます。本まで捨てたとしたら、うちのオーナーが何をするかわかりません。少なくとも逃げ切ることはできませんから」

「肝に銘じておく」


 奴隷街でもそうだったが、建物の主のことをオーナーと呼ぶのか。必要な知識のひとつかもしれない。


* * *


 瓶を落とさないように慎重に奴隷街に戻り、再び読書に耽る。

 ケルニスに教えてもらったことを思い出しながら、読んだ内容をまとめることにした。


 魔力は、使いこなすことによって魔法に変換したり、筋力に変換したりできる優れものだ。魔力を足に集中させることによってジャンプ力が上がる、といったように身体能力を上げることができる。魔力を上手く扱えるようになれば、それだけ強くなれるということだ。


 魔法はイメージする力が重要。ゲームのように名前を言えば発動するわけではなく、自分で魔法をどのように動かすかをイメージして扱うらしい。だからといって、名前が存在しないわけではない。名前を付けることによってイメージがしやすくなる、区別しやすくなる、といった理由から名前がつけられていることがある。

 もちろん呪文のある魔法も存在する。


 ……ふむ。調べただけじゃ、魔力の使い方なんて全然わからないな。魔力の流れってなんだろう。血液のように身体中をめぐらせるのだろうか。

 魔法もよくわからない。一度使ってみようと力んでみたが、何も起こらなかった。いや室内で発動しても困るんだけど。


 続いて魔眼についてだ。

 発動型、常時型の二種類に分けられる。発動型は自分の意思で能力を発動させる魔眼で、常時型はその名の通り、常に能力が発動している魔眼だ。

 オレの魔眼である時間制御は発動型に分類されるらしい。将来的には時間を操れるようになるとか。

 そして最も大事なことがある。それは魔眼の『価値』だ。魔眼を使える人間は本当に少ないらしく、見つかり次第国の戦力として協力させられるはめになるらしいのだ。常時型の魔眼持ちは簡単に見つかってしまうらしい。


 その理由は『目の色』だ。


 魔眼を使うと右眼に魔力が集まり、目の色が赤く変わる。発動型の魔眼は使った時に右眼が赤くなる。常時型は常に右眼が赤い。そのため、元の目の色と赤い目によってオッドアイになるという。

 だから、見つかってしまう。片目を隠せば見つからないのかもしれないが、怪しまれることは間違いない。


 そしてオレが魔眼の話を聞いていて最も不快に感じたことが一つある。

 奴隷の魔眼持ちについてだ。

 奴隷の魔眼持ちは能力が使いこなせるようになったら国に戦力として扱われる。ここまでは普通の魔眼持ちと同じだ。

 オレが不快に感じたのはその扱いについてだ。奴隷の魔眼持ちは奴隷の肩書きがあるので死ぬまで働かされる。使い捨て電池のように、戦場に駆り出され、命を落とすのだ。


 なぜ、同じ扱いをしないのだろうか。国としても貴重な存在のはずなのに。入手がしやすいから……? それとも、魔眼の実験のため?

 同じ能力の魔眼を持つ人間が多数存在することもあるらしい。多い魔眼だと、千里眼だろうか。千里眼の能力を使える人間が複数人いると考えると、少し怖いな。


 魔眼の知識はここまでとして、次はこの世界について。

 この世界には名前はない。地球だってこれと言った名前で呼ばれていないのだから、それと同じだろう。地域によっては、名前があるらしい。


 とにかく、今度はしっかりとした地図を手に入れた。借り物だが。

 まず、ケルニスに説明された左下にあるドーナツ型の大陸が『アインスフォイア』。亜人も人間も獣人も住んでいるが、人口が少ない。他の大陸から遠いため、異なる文化を持っている。

 次に右下にあるオカリナのような形をした大陸が『ツヴァイクライン』。亜人と獣人の住む大陸だ。この大陸だと亜人の方が数が多い。

 次に一番大きな大陸で、スレイヴィアのある大陸『東ドライグロース』。ララバイ、スレイヴィア、多数の村の三地域に分かれている。スレイヴィアのような街はいくつかあるが、スレイヴィアだけは特例で代表になっているらしい。

 最後に東ドライグロースと繋がっている『西ドライグロース』。東ドライグロースとは大きな山脈で分けられている。こちらの大陸は年中雪が積もっており、獣人と亜人が住んでいる。西ドライグロースは亜人よりも獣人が多い。


 これが全ての大陸の説明だ。

 幸い人間の住む大陸は東ドライグロースとアインスフォイアだけなので、冬花がいる可能性が高いのは東ドライグロースとなる。東ドライグロースを中心に探そうか。


 もう夜遅い。明日の朝も早いのでもうそろそろ寝よう。冬の肌寒さを感じながら、薄い布団を被った。

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