1発目 桜舞い散る入学式
暖かな日差しと桜の舞い散る4月。
今日入学式を迎える高校、明津高校の門の前に立つのは乙女ゲームのヒロインの様に可愛らしい女の子……ではなく男子の制服に身を包んだヤンキー女子聖十字 陽風、要するに俺だった。
まぁ何故ヤンキーという如何にも入学式をサボりそうな奴がこんな所にいるかというと、理由は単純明快で日々の刺激が足りなくなった、つまり特に面白い事がなくなったからだ。なので俺は普通の高校に男として入学し、暇つぶしついでに高校生活を楽しもうと思った訳だ。
そんな訳で俺を知ってる奴がいない場所で色々楽しもうと思ったんだが…………。
何故か俺の傍には俺の右腕と左腕、詳しくいえば俺がリーダーのグループ[聖夜狼]の副リーダーたる双璧の二人がいた。
「………どうして二人共、此処にいるんだ?」
「そんなの君が魂で結ばれた盟友だからに決まってるだろ…?」
「いや、只単に陽風がいなくなると僕達が寂しなるから一緒に来ただけやで?」
「…………そうか。まぁ俺としても一人より三人で楽しんだ方が面白そうだから良いんだけどな」
最初に魂がどうとか厨二病的発言をしたのが湖紋夜斗。
こんなのでも俺の幼馴染だ。夜斗は小道具を使って戦ったりするのが得意で良く、小道具の魔術師と呼ばれている。それは兎も角、夜斗の容姿だな。顔はまぁまぁ美形の部類に入ると思う。髪は青色。右瞼に傷があり眼帯をしている。一応言っておくが、全然大した傷じゃない。
そして次に似非関西弁を喋っていた狼坂 月見。
月見も幼馴染だ。こいつは正確な情報を何処からか仕入れて来るから月の情報屋と呼ばれている。本人もノリノリだった。そして月見の容姿。顔は美形。髪は黒色で普段着は着物を良く着ていた気がする。要約すると二人共イケメンって事だ。
俺も女なのに何故かイケメンと言われる事が多い。しかも男に。訳がわかんねぇよ。
下らない事を考えながら入学式が始まるのを待つ。
例え始まったとしてもほぼ聞き流すつもりだが。
「なぁ、ハルちゃん」
「んだよ、月見」
「いくらなんでも始まるの遅すぎひん?」
「ん、言われてみればそんな気も?」
「フ、これは箱庭の主の仕業に違いない」
「箱庭の主……あ、もしかして校長か?」
「校長の用事があって遅れてる…………あるかもしれんな」
「お、やっと始まるみたいだぞ」