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脇役王女の王国奇譚〜乙女ゲーム? いいえ、現実(リアル)ですわ~  作者: ぶるどっく
*脇役王女覚醒編

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第八話


「それで、ミオン?

 お父様、いえ、陛下から何か連絡はありましたか?

 いつもならばすでに控えているはずのランスロットの姿もありませんし……」


 朝食を無事に終えて、食後の紅茶を楽しんでいるセレスティナは普段であれば、すでに姿を見せているはずの護衛騎士(ランスロット)の姿がないことに首をかしげる。


「セレスティナ様が朝から固形物を召し上がってる……!

 ……はにゃっ?!

 も、申し訳ありません!

 え〜っと、陛下からの連絡は今の所ございません!

 ランちゃんの方は、セレスティナ様の提出されました昨夜の一件の報告書について、陛下達より聞き取りがあるとのことです!」


 ミオンは主であるセレスティナが他の王族が食べる物とは違っても、朝から固形物であるパンやスープを食べたことに驚き、感動していた。

 そのために、セレスティナからの問いかけに一拍遅れて慌てて返答する。


「そうですか……。

 昨夜の一件は今後の王国を左右しかねない重要な案件。

 慎重になるのも分かりますわ。」


 セレスティナは今までの己が朝食がわりにしていたドロドロの薬湯とは違い、普通の朝食を食べている姿にミオンが驚いていることに苦笑してしまう。

 そんな気持ちを誤魔化すようにセレスティナは湯気とともに香る好みの紅茶の香りを楽しみながら、ゆっくりと唇をつけた。


 その食後の一時を楽しんでいるセレスティナへ気分を害するような報告をしなければならないことにミオンは渋い顔をしてしまう。


「セレスティナ様〜。

 ちょこっとだけ、学院に潜んでた同僚(かげ)に確認したんですけど〜、セレスティナ様の悪い予感的中です〜。

 アホ王子と、そのお友達連中それぞれが婚約者のいる身でありながら、こそこそ男爵令嬢と愛を育んでたみたいですよ〜。

 それに〜、朝一番にシェパール公爵令嬢からアホ王子の不貞の数々の証拠の品が届けられてますぅ〜。」


 セレスティナに指示されていた内容の一部を報告しながら、ミオンは男爵令嬢に対して“どんだけ恥知らずな男好きの阿婆擦れなわけ”と胸中で本音を漏らす。


「あにゃん!

 シェパール公爵令嬢ったら、やりますねー!

 多分、公爵家子飼いの影のお仕事かな〜?

 バッチリ最新の魔導写真機で現場を押さえちゃってますぅ〜!」


 ついでに、他のお友達達の分もありますよ〜、と言う明るいミオンの言葉にセレスティナは愚弟(ライナス)達に対して呆れてしまう。


「ルクレツィアはその気になれば十分に反撃できるものを手元に置いていたのね。

 ミオン、その証拠の品々については私が目を通した上で、私の名の下に厳重に封をして、陛下に提出するから準備をよろしくね。」


「は〜い、セレスティナ様!

 このミオンにど〜んとお任せください!」


 キャピッとした普段通りのミオンの態度にセレスティナの頬も緩む。

 そして、気合いを入れて証拠の品々に目を通すと同時に、朝一番に計画していたセレスティナ自身のための“準備”について行動を開始する。

 その“準備”の一環である己の机の上に置いた六枚の“手紙”がいずれたどり着く人物達を脳裏に思い浮かべ、セレスティナは悪戯を仕掛ける子供のように微笑むのだった。




※※※※※※※※※※





「やはり……セレスティナから届いたこの報告書の中身はすべて真実か……。」


「はい。

 お疑いならば我が主人とは無縁の者達に確認して頂きたく存じます。」


 その部屋にはベルフォード王国の王都にある白亜の王城内、王に仕える者達の中でも特に王に信頼される者達がいた。


 付け加えるならば、そこは魔法によって完全に盗聴などの危険性は排除され、漏れてはいけない重要な案件を話すときに使用される部屋だった。


 その部屋の中にある重厚な作りの机に両手をついて項垂れるのはベルフォード王国の国王、レオナルド。

 力なく項垂れるレオナルドの机を挟んで目の前には、真面目な表情を作った第一王女の護衛騎士、ランスロットがいた。


「陛下、王族の一員として毒を賜る、などでは生温いと思いませんか?

 いっそのこと、奴等は処刑台に登らせてやるのが慈悲かと。」


 生まれつき鋭い目付きに、さらに凶悪な感情を加えた極寒の大地も生温く感じるであろう冷え切った両眼から、今すぐに何かを発射しそうなグウェンダルが地獄の底から響くような低い声でレオナルドへと話しかける。


 そんなグウェンダルの両手は白を通り越し、皮膚に爪が食い込み血が滴りそうな程に力一杯握り締められている。

 全力で握りしめ、力が入りすぎている所為か細かに震えてさえいた。


「グウェンダル、そんなことを言ってはいけませんよ。」


 そんな愛娘への仕打ちに対する怒りで震えるグウェンダルへ、アスランが困ったように嗜めるような雰囲気の言葉をかける。


「うむ、確かにアスランの言う通りだと思いますぞ。

 奴等の所業に某も(はらわた)煮えかえる思いですが……。

 しっかりと罪を詮議した上で、陛下のご決断を待つ必要が……」


 同じ第一騎士団の同僚であり、頼りになる部下であるアスランの言葉に同意の意思を示すランドルフだったが…………


「ふふ、処刑台を準備する時間や経費が勿体無いから、討伐予定の魔物を誘き出すための餌でも良いんじゃないかな?」


「あすらんぅぅぅぅっっっ?!」


 死なせない最低限の扱いをすればいいバカ王子達に餌をあげる必要もないですよね、と天使の如き無害な笑顔で続けられたアスランの予想外の言葉に、ランドルフは思わず叫び声を上げてしまう。


「静かにしてください、バッファム騎士団長。

 ここは室内なんですから、貴方のバカみたいな大ごえ……失礼、通常時でも十分に大き過ぎる声でさらに叫んだら繊細な私たちの耳が壊れてしまいます。」


 ランドルフが発した唾が飛びそうな勢いの叫び声を耳を塞ぐことで受け流したアスランは、まるで“メッ”と犬を躾けるように注意した。


「む……すまん。

 しかし、某は一応なりともそなたの上司……」


 部下であるアスランに犬を躾けるように叱られたランドルフは、微妙に納得できない様子で反論しようとする。


「騎士団長、上司だからと諫言出来ぬ部下を貴方は求めているのですか?

 私は上司の間違いを指摘することもまた部下の勤めと心得ております。」


 違いますか?、と笑顔を消して真面目な表情を浮かべて微妙な雰囲気を纏うランドルフへとアスランは問いかける。


「むう……確かに上司の間違いを正すは部下の務め!

 すまぬ、アスラン!

 某が間違っておった!」


「分かってくだされば良いのです、騎士団長。」


 強く拳を握って、某はまだまだ修行が足りぬっ!!、と嘆くランドルフへ、アスランはにっこりと微笑む。


「相変わらず、そなたの直属の上司はランドルフの扱いが上手いな……」


「……フォード副騎士団長ですから……」


「アスランの意見にも一理あるな。

 確かに魔物を誘き寄せる餌に調度良さそうだ。

 ……その過程も色々と考慮すればさらに…………」


 ランドルフとアスランという二人の上司と部下による寸劇のような会話に、項垂れていたレオナルドは頬を引きつらせ、同じ騎士団に所属するランスロットにとっては見慣れた光景であるため受け流す。

 そして、怒りに震えていたグウェンダルだけはアスランの言葉を間に受けて、真面目に考えを巡らせていた。


「……それよりも、本題の方はよろしいのですか?」


 王や王の側近達の脱線しまくる会話に内心呆れながらも、そんな感情をおくびにも出さないランスロットの一言に、彼らの動きが一瞬止まる。


「……何故か脱線してしまいましたが、此度の一件の詳細は明らかとなりました。」


 なぜ脱線したのでしょうね?、と咳払いをしてから首をかしげるアスランへとそなたの所為だろう!、とレオナルドは心の中だけで突っ込む。


「陛下、私の所為とはどう言う意味でしょうか?」


「ひっ?!

 そ、そそそそ、そのようなこと口にしておらぬし、そなたの聞き間違えだと思う!」


 優しげな笑顔を浮かべるアスランの背後に黒い何かの気配を感じ取り、背筋に寒気が走ったレオナルドは冷や汗を流しながら慌てて何も言ってないと否定した。


「そ、それよりも今は、ライナス達について話合わねばならぬ!

 此度の一件に対する対処を早急に考えねばいかん……。」


 背中から黒い靄を発するアスランの意識を逸らすように、レオナルドは本題を口にする。


「宰相、案を。」


「王子の王位継承権の剥奪を匂わせ、保守派の弱体化と並行して、この国に溜まった膿を一掃する餌としては如何かと。

 特に、あの第一側室と侯爵を動かす良い餌となるでしょう。」


 今まで纏っていた怒りの感情を封じ込め、真面目な表情を浮かべたグウェンダルはレオナルドへと間を開けることなくて答える。


「もしくは、第一王子は王位継承権の剥奪、王席からの除外。

 その取り巻きの直接娘に手を出した者や関わった者達、例の男爵令嬢へも厳重なる処罰を再発を予防する意味でも下しては如何でしょう?」


 感情を消し去り淡々と提案するグウェンダルへと、レオナルドは大きく頷き苦笑を浮かべた。


「……宰相よ、余への気遣いは無用。

 あやつは余の息子である前にこの国の王子。

 この国のために最大限に役立つならば本望と、笑って死ぬだろう。

 ……少なくとも、王族に生まれた者達にはそういう教育をしておる。

 そして、それは貴族に属する者達も変わりないだろう。」


 愚かな真似をしたとはいえ、息子の一人であることには変わりないライナスへの想いを、レオナルドは王という責任の元に心の奥に押し込める。


「陛下、某達は陛下のご決断に従います。」


 一国の王であるレオナルドの心中を思い、ランドルフは唇を引き結び、アスランとランスロットは真剣な表情を浮かべ、騎士としての礼をとる。


「陛下。」


 そして、宰相であるグウェンダルも王であるレオナルドへと(こうべ)を下げ、命令が下されるのを待つ。


「……王として余が命ずる……」


「「「「御意!」」」」


 一切の感情を消した王の命令に対して臣下達は一斉に(こうべ)を下げるのだった。





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