クビになった男
松中電気グループを退職することになった二人の男がいた。
元課長の下川、そして係長の羽田。
下川は、自分が勤めていた会社に背を向けながら項垂れた。
自分の熱意を訴えて念願の就職を果たし、それから何年も忠誠を尽くしてきた
部下の羽田はそれに比べればまだ入社歴は浅いほうだが、決して不出来な人間ではなかった。
何故自分達は、会社を追い出されてしまったのか。
「課長」
「言うな。もう私は課長じゃない」
「下川さん……」
「ふう」
長年務めてきた会社をクビになったことは、想像以上に堪えているようだ。
羽田は、下川がクビになったことが解せなかった。今まであれほど会社に尽くしたのに……。
失礼と解りながらも、彼は聞いてみた。
「どうして、下川さんはクビに?」
「……そうだな。何が原因かと考えれば、商品説明会だろう」
「ああ、僕はいけませんでしたが。なにか失敗でも?」
フッと下川は笑った。
「私は完璧だった。全てにおいて抜かりがなかったはずだった。だが上層部はお気に召さなかったようだ」
「下川さんが言うからには間違いないはずです。話してください、どんな商品だったんですか?」
羽田がそう聞くと、下川は一呼吸おいてから、話し始めた。
「それは私の長年の夢だったのだ……」
◆
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◆
「ゴッツンコくんの何が悪かったというんだ! チクショー!」
「……会社は英断を下されたのかもしれない」
久しぶりにシンプル千文字以内。
その2とその3も考えたのですが、肝心の商品が思いつかずボツ。




