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レオンを思ってほわほわしているうちに、会議は終わった。

イベント企画者たちはいっせいに席を立ち、会議室を出ていく。

教室に残ったのは、わたくしたち生徒会役員と、わたくしたちに指示された一組のイベント立案者だけだった。


「わたくしたちに残るようおっしゃったのはなぜなのですの?」


イベント立案者であるローズマリー・スペンドは、あわいオレンジの瞳を苛立ちで染め上げて、アランを睨んだ。

ローズマリーはわたくしより1学年上の4年生で、今年度卒業する学生をのぞけば最高学年となる。

つまり卒業生を送り出す側として企画をたてたれる最高学年というわけだ。


ローズマリーが今期の生徒会に提出した企画は12、ひと月にひとつの立案だった。

これはかなり多いけれど、そのわりにローズマリーの企画は練られたものが多かった。

今までひとつもイベントが通らなかったのは、その企画に似た、より優れた企画がすでに提出されていることが多かったからだ。

これはローズマリーが他の人の企画をまねたというわけではなく、しょせん学校で学生が開催するイベントなんて、どことなく似通ったものであることが多いという証左にすぎない。


今回の企画も、ローズマリーの提出した企画書には「却下」の印が押されて返却された。

そのくせ居残りを命じたわたくしたちに、ローズマリーは苛立っているのだ。


来年度も生徒会のメンバーは大きく変わらないことを思えば、わたくしたちに敵意を示すのは愚かなことだ。

けれどわたくし以外の男子学生がみんな人気の高い生徒であるのに、ローズマリーがそんなことは意に介さずに、企画の却下だけを悔しがっているのは、好印象だった。

他の女学生たちは企画を提出してきても、生徒会メンバーと言葉を交わしたいだけなのかと邪推したくなるほど、却下されてもにこにこして引き下がるだけの子がほとんどなのだ。


その心意気は、いいと思う。

わたくしはシューに目配せをし、用意しておいた書類を彼女に手渡させた。


「これは……?」


渡された書類を確認しながら、ローズマリーは不審げな声をあげる。


「あなたが提出した企画の修正案よ」


わたくしが言うと、ローズマリーははっと顔をあげた。

わたくしはシューとヒューを促す。

シューとヒューは同時に力強くうなずき、ローズマリーへと向き合った。


「ローズマリー・スペンド。あなたの企画はそのまま実行するには問題点が多く、けれど捨て置くにはもったいないレベルのものでした」


「まず最初に。卒業式と学校主催の懇親会の後、学生たちだけで尊敬する先輩にお祝いをさせていただくという企画はこれまでにない発想で、たいへん面白かったです」


「その場で、敬愛する上級生の制服の一部をいただくという企画も面白いです。異世界の風習を真似たものだそうですが、男子学生の胸ボタンを手渡すというのはとてもロマンティックだと思います」


シューとヒューが交互にローズマリーに語り掛ける。




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