3/6
3話
結局その後は少し映画の話をしてお開きになった。
家に着く頃にはだいぶ心が落ち着いていた。
冷蔵庫からコーラを取り出し、自前の盤の前に座る。
今日麻倉くんと指した将棋を並べ直す気になった。
毎日棋譜を並べていれば強くなるのだろうけど、気が向いた時にしか僕はやらない。
「酷いな・・・」
思わず声が出た。たしかに麻倉くんは囲いを薄くして、早く仕掛けて来ていた。しかし、僕の方もその仕掛けに合う駒組みはできていた。じゃあ、どうして悪くなったのか。
答えは簡単だ。
対応が正しくなかったのだ。
歩を打って抑えるところで打たずに返し技を急いでいた。
定跡書を読んで覚えたつもりになっていた変化を忘れていた。
忘れることは仕方がないと言われるけれど、僕はどうしても苛立ってしまう。定跡を忘れて勝てる程、将棋は甘くないはずだと思っているからだ。
もちろん、定跡を覚えた程度で勝てる程、甘くもないないのだろうけれど。
また、石田流対策の勉強をしなおさなくてはならない。
今日はもう遅いから明日からにしよう。
それにもう今日は将棋について考えられない。
落ち着いたはずの心がまた乱れだすのを感じた。
その乱れと一日の疲れを少し熱めのシャワーで流して、眠りに就いた。
近づいて、離れる。
自分でも何をしているのか、何がしたいのか分からなかった。




