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1話
ああ、負ける。
直感で分かった。
局面はまだ中盤だ。投げるにはまだ早すぎる。ここで投げたら観戦している先輩に怒られてしまうかもしれない。
だけど、もう遅かった。
頭が働かない。手が動かない。
勝機が見えない将棋を続けることが僕はできない。
持ち時間が切れて、チェスクロックが喧しく電子音を鳴らし始めた。
結局秒読みに終われて適当な手を指した。直前の手に対してなんの意味もなさない酷い手だ。当然その対局は負けた。
途中で諦めておきながら、怒られたくないからという理由で長引かせた酷い一局だった。




