1 穴に落ちました
「お、重いっ」
両手に持ったビニール袋が手に食い込む。こんなに買わなきゃよかったかも……
でもあと5分も歩けば幼稚園に着くんだし、重いって言っても3歳児より重いわけじゃないからね。これくらいの重さどうってことないはずよ。大丈夫、頑張れ私!そう自分に言い聞かせていたら、ちゃんと前を見ていなくて、いきなり穴に落ちた。
落ちながら、案外冷静にこの後骨折?打ち所悪かったら死んじゃうぅって心配してたら急に周りが明るくなって、どこも痛くもないまま見たことない庭に立ってました。どうなったの?
えーと、ここはどこ?
周りにあったはずの桜並木がなく、目の前に花壇があるんですけど!なんで公園?
落ちた後だから、ウサギが走ってきたらどうしよう!とあたりを見回すと、すぐ近くにオペラ歌手よろしく、ヨーロッパ風の服を着た男性が3人いました。
驚愕の表情を浮かべていますが、いやいや、こっちだってそうだからっ!
「あの、ここどこですか?」
って日本語じゃ通じないか、えーとえーと
「ここはフィルディ王国 エディハム家ですが、あなたはどこから来られたのでしょうか。急に現れたように見えましたが?」
紫色の服着たイケメンにいきなり剣を突き付けられながら質問されました。
4月から国立大学附属幼稚園年長にじ組担任 伊勢 真梨 29歳は、どうやら異世界に来ちゃったようです。