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百死夜行

からん、ころん。

下駄の音と、淡い暖色。

それに誘われて、彼は外に出る。


誘われるように、鬼娘(それ)についていく。


そして、提灯に手を伸ばした。


「死ぬ気かえ?」

のんびりと娘が言った。


「そうです」

彼は答えた。


娘は、しばし伏し目がちになり、それから豪快に笑う。


「あっははは。まだ決めるのは早い。

提灯は持たず、今おまんが持ってる懐中電灯でついてきなはれ」


鬼娘の隣には、死体、死体、死体。

自殺したもの、路上で死んだ者。

それらがふらふら、意思も持たず、提灯は持って娘についていく。


鬼娘がいるから、町は異様に綺麗だ。

市区町村に雇われた掃除業者と同じ、死体を綺麗にするのが、彼女の役目。


ただ違うのは……。


下駄の音に導かれ、向かうのは道路の向こうの樹海。

普段そこに樹海なんてないはずなのに、開かれた異空の帳。


「ここ、入るかえ?」

娘は聞く。


彼は答える。

「はい、死ぬ気なので」


樹海には木、木、木。

死体は導かれるように木を掻き分け、

提灯の先で穴を掘る。


意思もなく、墓を作るのだ。


「おまんも穴を掘るかい?」


鬼娘はにたり、笑い、彼に提灯を差し出す。


「決めるのは今。

これを持てばおまんは死ぬ。

今ならまだ、引き返せるんよ」


不気味なほど穏やかに、鬼娘は笑う。

暖色に照らされて、彼女の瞳が夕日色に染まった。


提灯と交わる、懐中電灯の光。

白、と橙。

それは本来、交わるものではない。


「はい」


彼は言う。言ってしまった。


そして提灯を手に取ると、彼ももう、死体。

虚ろな目で穴を掘り、潜り込むだけの、死体。



其れがとある町の百死夜行。

死にたい人は、娘を探してごらんなさい。



お久しぶりです。

活動場所も大分増えたので、長らく放置状態でした。

ふと思いついた掌編で、ちゃんと閉幕させようと思います。


もしも更新を待っていた方がいらっしゃれば……

ありがとうございました、そしてお疲れさまでした。


水鳴の活動場所一覧は以下です。

https://dic.nicovideo.jp/u/25536580


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