9回目
「まずは、星船とは何か、から始めるか」
皆がザンの顔を見る。
「星船は、名前の通り船だ。もちろん水の上でなくて空や宇宙で使う方のな。用途は戦闘。相手の船、それも大型のものを潰すために使われる」
「……嘘」
セイジとあまり変わらない肌の色の女が目を見開き、顎を震わせている。
「だが戦闘艇ではない」
皆の驚きや不安の声には耳を貸さずに続ける。
「いや、そもそも戦闘での使用を考えて作られたものですらない」
これまでより大きい咳払いをすると、静かに話し出す。
「ただの高速艇だ。武装は一つも無い、ただ速いだけだ」
不思議そうな顔を向けられたザンは
「だが、人を殺せる。現代の宇宙戦で最も重要なのが星船と言う位だ。他のどんな戦闘艇よりも、兵器よりずっと多くの人の命を奪う」
「どうやって……、どうやって高速艇で大勢殺すっていうんだ」
部屋の一番後ろ、セイジ達よりも先に来ていた褐色の男だった。
これまで話していて初めて、ザンが誰かの言葉に反応した素振りを見せる。
「詳しい事は教えられない……、分からないと言った方が正しいな。理由は後々話すが、星船には分かっていない事が多い」
残念そうにため息を一つする。
「星船の大きな特徴は速さと硬さ、それがただの高速艇を恐ろしい脅威にする」
ザンが左手の人差し指を立て、右手で握り拳を作る。
「なによりも硬い船体がなによりも速い速度で突っ込む。まさに弾丸だ。どんなものでも貫通するな」
右手の拳の中に人差し指を通す。
「人が大勢乗った船でも関係無しに貫く。普通の攻撃じゃとてもじゃないが当たらない。当たっても傷が付くのかは別の問題だな。要は、星船には星船で対抗するしかないって事だ」
シズクが手を上げ、ザンが視線を向けてから話し出す。
「いつか戦争になったら私達が……、操縦士になった人が大勢の人を殺すって言う事ですか?」
「そうなるな」
部屋の温度が急に下がるような感覚が十人を襲った。
「あぁ、それから。いつかでなく、今まさに戦時中だ」




