6回目
「えぇ。普段は使わない筋肉でも使ったんですかね」
セイジは「あなたは誰ですか」と言い出せなかった。
ただ、なんとなく自分達とは違う。別の星の人なのだろうとは感じていた。
肌や瞳の色はほぼ同じ。目立って二人と違うのは、大人びた雰囲気と見合わない体の小ささに、不自然さを感じさせない紫がかった髪だった。
「私も始めて正装をさせられた時はそうだったな。私の故郷の正装はとにかく重くってね。何のためにあるのか分からない飾りばっかりつけてさ」
男が服の裾を掴んで、飾りがどこについていたのかを説明する。
「あの」
男とセイジがシズクを見る。
「あなたはどなたですか」
シズクの口調には訊きづらい事を訊いている様子はなかった。
「 あぁ、ごめんごめん」
男が笑いながら頭を掻く。
「初めてこの星の人と会ったから少し興奮していたよ。私はノウ・ラン。ここで働いているんだ」
「あぁ、そうだったんですか。私はシズクといいます。よろしくお願いします」
「セイジです」
ノウが頷きながら手を差し出す。それに二人が答えると、嬉しそうにまた笑う。
「私も色々、君達と話したい事もあるんだけど今日位は我慢しよう。ここで暮らしていればきっと嫌でも顔を合わせるだろうしね」
二人の間を通り抜けてノウが階段の方へ歩いていく。
「さぁ、この階段を上がったらそこが君達の教室だよ」
振り返って手すりをポンと叩いてみせる。
「慣れるまで色々大変だろうけど頑張るんだよ」
「ありがとうございます」
「あ、その前に。ちょっとカード見せてもらっていいかな」
軽く頭を下げてから、階段に足をかけた二人へ向けてノウが言う。
「……はい、これです」
「私も」
ノウが「ありがとう」といって二枚のカード表や裏を引っ繰り返して見つめている。
「あぁ、ここだ」
カードの表、その右下を指し示す。
「うん。二人とも02クラスだね」




