5回目
「おぉ」
無意識に二人が漏らす。
見渡す限りを緑の芝が埋め尽くし、そこを一本の道が真っ直ぐに伸びていく。
道は太く、ここまで歩いてきたものの優に倍はある。
「すごい」
予想していた光景とは全く違うので、二人は面食らってしまった。
「てっきり、もっと機械的な建物が並んでいると思ったけど」
「うん」
「何もないね」
「うん。何もない」
一本道の先に、恐らく目的地であろう建物が見えた。それ以外に特に何かありそうな物は何も無い。
「時間大丈夫?」
シズクが左の手首を見つめる。セイジは腕時計を二人とも確認できる位置にしてやる。
「あぁ、かなり余裕見てきたから。時間は大丈夫そうだけど」
「……そう」
一息つくと、二人が歩き出す。
「じゃあ、さっさと行きましょうか」
セイジは首の動きだけでそれに答えた。
「全く、何でいちいち目的地まで長い事歩かせるのかしら」
二人とも慣れない靴のせいで足がだんだんと痛んできていた。
「さぁ。どうしてだろうね」
シズクは不機嫌そうにヒールを気にする仕草をしている。
十分弱歩いたところで、目的の建物に辿り着く。
高さは三階建て位、全体が白で統一されている。前面には窓がたくさんあり、日差しを良く取り込みそうだった。
「管理カードをかざして下さい」
入り口の前に立つと、門と同じアナウンスが流れる。
「はいはい」
シズクが慣れた手つきでカードを取り出す。門の時とは違い、軽い音を上げてドアが横に開く。セイジもすぐに続いた。
「疲れた……」
シズクがその場にしゃがみ込む。
「やぁ、いらっしゃい。慣れない格好じゃあ、ここまで歩いてくるのはきつかったかな」
横から現れたのは、二人より一回りは小さい男だった。




