4回目
電車に乗った駅と同じつくりのホームから出る。眩しさに目が慣れると、大きな門が視界に飛び込んできた。
歩いて二分か三分、既視感を覚える道を進んで行くと門はどんどん姿を大きくしていく。
「本当に、何も無いね」
シズクが左右を見る。
辺りには道路と歩道を分ける大きな木しか無かった。
道路の灰色と、レンガ調の歩道の赤に木の葉の緑。歩くほどに大きくなる黒い門が協調性の無い色合いの中でさらに異質さを放つ。
「私……、緊張してきたかも」
門まであと一分も掛からない距離に着て、シズクが頭を掻きながら言った。
「皆そうだよ。きっと」
「セイジも?」
同じ様に緊張している事を隠そうとしたが、シズクはすぐに聞き返す。セイジは小さく声を漏らして苦笑いをしていた。
「うん。俺もね」
「なら少し安心した。私が歳の割りに小心者なのかもって思ったわ」
足を止めて大げさに頷く。
セイジも急かす事はせずにじっと待つ。その間、誰か別の人がここへ向かうのではないかと駅の方を見たが、誰も出ては来ない。
「本当に、何もないね」
セイジが小さく呟くと、シズクが振り返る。
「あら、今頃気がついたの?」
笑うと歳よりも少しだけ幼く見えた。
「さぁ、行きましょうか」
「そうだね、早く着いたって悪い事は無いし」
門は太い鉄の棒を編み込んだ様なつくりで、左右が合わさると中央に記号が現れる。
「これ、どっかで見た様な」
シズクは鼻が付く位の距離で記号を睨む。
「管理カードをかざして下さい」
「え?」
振り返り、セイジに「何か言った」と不思議そうな顔をしている。
「改札と同じだよ。そこにカードをかざすみたい」
納得するように頷くとシズクは鞄に腕を突っ込む。
「管理カードをかざして下さい」
ホームよりはいくらか自然だが、人とは全く違う機械の音声が流れた。




